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ルード様がお義父様たちに深々と頭を下げた。
最後にお義母様が私の横に立った。
「私たちは家族になったばかりなの。家族の時間を過ごさせてちょうだい」
お義母……様……。私の肩をそっと抱き、ルード様に微笑みかけた。
「3年は家族で過ごしたいわ」
お義母様の言葉に、ルード様が指を1本立てた。
「1年」
お義母様がふふふと笑って、私の顔を見た。★★
「ソフィアンナは愛されてるわね。ふふ」
ええ、私、愛されてる?
「分かりました。1年の間に、ソフィアンナにうんと言わせてみせなさい」
お義母様の言葉に、ルード様はパッと嬉しそうな表情をした。
「絶対に、ソフィアンナにイエスと言わせえ見せます!」
「うんと言わせることができたら、婚約は認めましょう。それから、1年婚約期間を置いていただくわ。いろいろと準備がありますからね?」
お義母様の言葉に、ルード様が今度はがっかりした顔になった。
「……早くて結婚できるのは2年後?いやいや、婚約期間は半年で十分でしょう!」
お義父様がぽんっとルード様の肩を叩いた。
「あきらめろ。ドレス1枚選ぶのに、女性は半日以上かかるものだ」
お義父様の言葉に、お義兄様が続けた。
「そうそう。一生に一度の結婚式の準備を半年でできるわけないだろ?」
それから、お祖父様も加わる。
「完璧な結婚式を上げなければ、後々まで言われるぞ?あの時本当はこうしたかったとかな」
お祖父様が、ちらりとお祖母様の顔を見た。……何があったのだろう?
「……それに、辺境伯ともなれば盛大な結婚式を上げざるを得ないだろう。これから大規模な粛清も始まるだろうから、式は国内が落ち着いてからでないとな……」
え?あれ?
「ああ、それから子爵家も現当主は爵位を失い、アイリーンが婿を取って子爵家を継ぐことになるだろうから。落ち着くまではソフィアンナも心配でそれどころではあるまい」
アイリーンが子爵家を継ぐ?
いえ、もともとそういわれてはいたけれど。でも、アイリーンだって子爵家を出るつもりで……。だけど、お父様がいなくなれば出る必要もなくなるの?あれ?
ああ、それにしても、私のことだけじゃなくてお義父様たちはアイリーンのことも考えてくださるなんて……。
それに、私は結局、私がルード様と結婚することに反対されているわけではないの?
でもそれは……。そんなのおかしいよ。
私がルード様と結婚できるわけないのに……。
「ああ、それから赤ちゃんのことは話したの?」
お義母様の口から出た言葉で、ルード様が私の顔を見た。
「誰の……」
誰の子だと言おうとした言葉を途中での見込んだ。
そして、私の手をそっと取る。
「俺の子だ。ソフィアンナが産んだ子なら、俺の子だ」
その言葉に、ぽろぽろと涙が落ちる。
私のお父様は、ずっとお母様のことを疑い、私は自分子じゃないと言ったのに。
ルード様は、自分の子でないのが分かっていて、自分の子だと言ってくれるんだ。
ルード様は、こんな私を……本当に愛してくれてるんだ。
「いいえ……ルード様の子ではありません……」
本当のことを、どこまで伝えてもいいのか。
「それは、父親と結婚するということか?」
ルード様が焦った声を出す。
首を横にふると、お義母様が笑った。
「早とちりねぇ。ソフィアンナは赤ちゃんを引き取って育てたいと言っているの。だから、産むのは別の人よ」
ルード様が目を白黒させている。
「一体誰の子をソフィアンナが……あ……もしかして」
ルード様が何かに気が付いたようだ。
「ハルーシュがソフィアンナを見たときに、本物だとかなんとか言っていたが……」
まだ、真実を告げるわけにはいかない。
アイリーンの気持ちを確認しなければならないから。
もし、真実を知ったらハルーシュ様はどうするのだろう。
「そう、それでね、ジョアンナに、乳母が必要になるから準備してと言われていたから、探したのよ」
「あの、養女にしていただけるだけじゃなくて……子供を引き取ってもいいんですか?」
お祖母様が一番に声を上げた。
「ああ、楽しみね。この胸にひ孫が抱ける日がくるなんて!ワクワクが止まらないわ」
「ありがとうございます……」
もしかしたら、アイリーンは自分で育てることになるかもしれないけれど……。それでも乳母は必要になるはずだ。
探していただいたことに感謝しかない。
「紹介するわね」
お義母様の言葉に、ブレッド様が使用人が控えている続き間の扉に声をかけた。
入ってきたのは……。
「マーサ……」
駆け寄って、思わず抱き着く。
「お嬢様、大きくなりましたね」
「マーサ、マーサァ……」
まぁ、そんなことがあった半年後。
子爵家の屋敷では、アイリーンがマーサの手を借りて赤ちゃんをあやしている。
ミリアもお世話が楽しそうだ。
お父様とお義母様は宝石など金目の物を根こそぎ持ちだしどこかへ行ってしまった。同じように姿を消した貴族も多いと聞く。その後どうなったのかは分からないとも。
「世界一かわいい。いや、世界一はアイリーンだからうちの子は二番目にかわいい」
アイリーンの隣には、ハルーシュ様の姿がある。
「じゃあ、もう今日で引継ぎは終わりね」
ハルーシュはアイリーンと結婚して子爵家を継いだ。
書類仕事を手伝っていたため、子爵家のことは私がハルーシュに引継ぎをすることとなり、伯爵家と子爵家を行ったり来たりする生活が続いていた。
「お姉様……ありがとう……大好き」
「私も、アイリーンのことが大好き」
私たちは初めこそぎくしゃくしていたものの、こうして愛を口にして姉妹の仲を深めている。
それには、ハルーシュ様とルード様の力も大きい。
それからソフィアンナと名前を変えた私は、陛下の力添えもありヴァイオレッタとは別人扱いをしてもらえることになった。
お義父様の隠し子という形になってしまったことだけが申し訳ないけれど……。
ヴァイオレッタの醜聞で皆に迷惑をかけることがなくてホッとしている。
「ソフィアンナ、俺のことも好きだと言ってくれ」
そして。
私の横にはルード様がいる。
「なぁ、赤ちゃんとはかわいいものだなぁ。早く俺たちの子も作ろう」
と。
プロポーズの返事もまだしていない。
婚約もしていないと言うのに……。
「ああ、やっぱり結婚式が婚約してから1年後なんて遅いよな。今から結婚式の準備をすれば半年くらい早くに結婚できるんじゃないか?」
などと、結婚は決定事項のようなことをたびたび口にしている。
おしまい
完結です!!!
最後までお付き合いくださりありがとうございます!
感想いただけると嬉しいです。
まぁ、いろいろと、突っ込みどころがありますよね!!
ルード、お前、本当にヒーローか?!ってところを、語りたいところ!
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