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慌てて立ち上がると、ルード様が私のすぐ前に来て膝まづいた。
「ソフィアンナ……」
ルード様がまっすぐ私の顔を見て、手を差し出す。
「どうか、俺と結婚して欲しい」
「ルード様!何を……!」
結婚?
今、結婚って言った?
「愛してるんだ。ソフィアンナ」
愛してる……?
カーっと顔が熱くなる。
「あ、あの、私……」
何、どういうこと、頭が回らないよ。
これは夢?
ルード様が、私にプロポーズ?だって、だって……そんなことあるわけがない。
「ジョアンナ様に聞いたよ……君が、俺の幸せを願っているって……」
確かに、言った。
「俺の幸せは……君とともに生きていくことなんだ。だから……この手を取ってくれ」
ルード様が差し出した手に、吸い込まれるように手を伸ばし、触れるその手前で止める。
そして、正直な気持ちを口にした。
「無理ですぅーっ!」
両手を頬に当てて首をぶるぶると振る。
「無理です、無理です。私、伯爵令嬢といっても、養女ですし、もともと子爵令嬢だったというのも、ほぼ使用人だったわけで……。使用人から辺境伯夫人なんて、どう考えても無理ですっ!」
「いや、ソフィアンナ」
ルード様が宙に浮いたままの手の行き場がなくそのままに立ち上がった。
「何も必要がない、そのままの君が……君でありさえすれば」
「いいえ、いいえ。私なんかがルード様と結婚したらルード様に迷惑をかけてしまいます。貴族としてのマナーも常識も知らないことばかりなんです」
「知っている。花の名前も、主要貴族の顔も知らないのも……」
ルード様と出会った日のことを思い出す。
「それは俺も同じだ」
にこりとルード様が笑う。
「いいえ、それだけじゃない、私は……私は……」
「大丈夫だ、何も心配しなくていい」
ルード様はそう言っても……。
お義父様が私の横に立った。
「お前に、娘はやらんっ!」
その言葉に、ルード様が唖然とする。
「ははは、一度言って見たかったんだ。早々に夢がかなった」
お義父様が大笑いする。
「僕の義妹を幸せにできるか証明してもらわないと、認められない。いくら辺境伯とはいえ」
お義兄様がお父様の横に立つ。
「あ、いやえっと」
ルード様が戸惑っている。
「お義姉様はお前にやらないんだ!」
「お義姉様は僕とけっこんするんだ!」
「私の目の黒いうちは孫はやらんぞ」
「孫を幸せにしてくれると約束してくれなければ認められませんわ」
新しい私の家族が次々とルード様に意見する。
「いや、俺は、ソフィアンナを幸せにすると、誓う!だからソフィアンナを嫁にくださいっ」




