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*すいませんお茶会から舞踏会に変更しました
大規模舞踏会の日がやってきた。
前日は緊張してあまり寝られなかった。
ついに、決行する日だ。
「お父様、先に出かけてください。……刺繍をした手袋を今日使いたいとのことで侯爵夫人様が馬車を出して迎えに来てくださるそうなので」
「そうか。じゃあ私は先に行くが、失礼がないようにしろよ!」
お父様はなんの疑問も持たずに、舞踏会へと出発した。
お父様がいなくなるのを確認して、急いで部屋へと戻る。
「ミリア、お願い支度を手伝って」
すでに先ほどすっかり着替えて化粧もしたのに、何があったんだろうという顏でミリアが部屋に来た。
「お嬢様何をお手伝いすれば」
ミリアの目の前で、カツラを取った。
「え?」
驚いた顔をしたものの、ミリアはすぐに気持ちを立て直した。
「お嬢様、あとで私にも一度カツラを使わせてください。金髪に憧れてたんです」
にこりと、それだけ言って、他は何も聞かなかった。
「ありがとう……」
「何をすればよろしいですか?」
「ヴァイオレッタの部屋から、飛び切り素敵なドレスを取ってきて。それから化粧と髪を」
ミリアは頷くと、すぐに行動に出た。
コルセットを閉めなくてもドレスはするりと入ったけれど、胸のボリューム不足だったためミリアがコルセットをつけてくれた。
コルセットにはウエストを絞る役割と、胸を大きく見せる役割もあるらしい。アイリーンの身支度の手伝いをしているときは必要なかったので知らなかったけれどミリアがうまく着せてくれた。
それから私の見様見真似の化粧よりもずっと上手で、髪もハーフアップに整えてくれた。
「素敵ねぇ」
別人……とまでは言わないけれど、ずいぶん印象が変わる。
ドレスの隠しポケットに必要な物を詰め込むと、いざ舞踏会へと出発だ。
事前にお願いしておいた馬車に乗り込む。
会場につくと、すでに始まっているようで音楽が流れ踊っている人たちもいた。
今日のような大規模な舞踏会は、昼から翌朝まで長い時間続く。そのため人の出入りに時間の制約はない。
下位貴族だからいち早く到着しなければならないと言うことはないのだ。
逆に言えば、目当ての人間が同じ時間帯にいるかどうかも分からない。
きょろきょろと人を探すと、さっそく見つけた。
あまり沢山の貴族のことを知っているわけではないが運よく見つけることができた。
つかつかと近づいていくと、私に気が付いた金髪の伯爵が逃げるように隣にいる奥様の肩をだいて回れ右をした。
それを無視して声をかける。
「ジョージ様ごきげんよう」
名前を呼ばれて声をかけられたものを無視するわけにもいかなかったのだろう。
立ち止まって、ジョージ様は振り返った。
「やぁ。君は確か、ヴァイオレッタ嬢だったかな」
白々しい。確かですか。
「うちの主人に子爵令嬢がなんの用ですの?だいたい、名前で呼ぶなんて馴れ馴れしい」
隣にいる奥様がお冠だ。
「あら?でも、あの時に名前で呼ぶ許可をいただいたと思っているのですが、勘違いだったのでしょうか?」
「な、何のことだ」
ジョージ様がぎくりと肩をこわばらせた。
「何のことって、もちろん、あの時のことですわ。夜会に出たときに、部屋に私を連れ込んだでしょう?嫌がる私に、子爵令嬢ごときが、伯爵の私に逆らえるとでも思っているのかと、無理やり……」
ジョージ様の顔が引きつった。




