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 侍女としてではなく、下働きとしてでも働かせてもらえれば……。給料をもらえれば、暮らしていけるかもしれない。

 掃除も洗濯も、下働きがすることなら一通りできると思う。

 家でしていたから。

 でも、お父様は許してくれるだろうか?

 ……さんざん自分の子じゃないと言っているし、厄介者を養ってやってるんだとも言っている。

 厄介者の私がいなくなった方がお父様にとってはありがたいのでは?

 ……ちゃんとアイリーンの子供は私が産んだということにするし。

 なんなら、どこの誰とも分からない子を産んだから勘当したとでも言えば、私が家を出ることにも不自然さはなくなるんじゃないかな?

 そうか……。

 私……。子爵家を追い出されるんじゃなくて、自分で出ていくこともできるんだ。

 そうか……。いらない人間、邪魔な人間じゃなくて……。

 どこかで誰かにとって必要な人間になれるかもしれないんだ……。本当に、なれる?

 ううん、違う。アイリーンが私を必要な人間にしてくれる。

 アイリーンの産んだ子にとって、私は……母親として必要な人間になれる。

 もし、世継ぎとして赤ちゃんは必要だけど、母親は必要ないと子供だけ取り上げられてしまったら?

 想像して体が震える。

 例えば……もし、ルード様と一夜を共にして子供ができてしまったら、きっと、そうなるんだろう。

 私は決してルード様に必要な人にはなることはできない。

 侍女がお茶を持ってきてくれた。

「食べられそうならどうぞ」

 と、何かを挟んだパンも一緒に持ってきてくれた。

「ありがとう……」

 手紙を読んだことで、力が湧いてきた。

 まだ考えは全然まとまらないけれど。

 ジョアンナナ様が……お母様の友達だったというジョアンナナ様が相談に乗ってくれる。

 誰かに相談できるんだという、それだけでとても力強い。

 ミルクをたっぷり入れたハーブティー。

 口に入れると、お腹が空腹を思い出したようだ。

 すっかりパンも食べてしまった。

 朝食をいただいて出ると伝えてもう一度ベッドに入った。


「おお、帰ったか!」

 子爵家に戻ると、お父様が珍しく私を出迎える。

「どうだったんだ?泊まらせてもらうなんて、よほど気に入られたのか?」

 興奮気味に、侯爵家で何があったのかと尋ねられた。

 まさか、徹夜で刺繍をしていたので、休ませてくれたなんて言うわけにもいかない。

 ……ジョアンナ様は、徹夜で刺繍をさせるなんてひどいと、お父様のことを悪く思っていたし……。

 お父様は「なぜそんなことをわざわざ言った」と怒るかもしれない。

 ……わざわざ言わなくても気がつかれてしまっただけなのに。

 気に入られたというよりは……。

 お母様の……友達の娘として気遣ってもらっただけだと思う。

「気に入らない人間を泊まらせらりなんてしないだろう。刺繍をよほど気に入ったんだな。役立たずのお前も少しは役に立つじゃないか」

 返事を返さないうちに、お父様が勝手に話を進めている。

 ……お父様は、ジョアンナ様が、お母様の友達だったということを知らない?

 お母様のことを知っていれば浮気したなんて思うわけないか。

 交友関係を知っていなかったから髪の色を見て疑ったんでしょうね。お母様の友達とも交流があれば、この髪色はお母様のおばあ様と同じだという話はすぐに聞けたのでしょう……。きっと。

「こうしちゃいられない、お前は部屋に戻って次の刺繍を始めろ!私は今からでも間に合うお茶会に出席の返事を出さないといけないからなっ!」

 お茶会に出席?


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