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「ヴァイオレッタ……!」

 ひゅっと息を飲み込むような声をアーサー様が出した。

「あら、アーサー様。ヴァイオレッタが着るようなドレスを着ていますけど、アイリーンですわよ?」

 そうか。アイリーンは淡い色のドレスばかりを身に着ける。ヴァイオレッタのフリをするときは今来ているような濃い色のドレスを着ていたっけ。

 木陰になっていて、金髪も茶色に近く見えたのかな?それにしてもなぜそこまで驚くのだろう。

「私を探していたのはどうして?アーサー様」

「ん、ああ。新しいケーキが並べられたよ。チーズケーキ、ミューナは好きだったろう?」

「まぁ、覚えていてくださったの!嬉しい!」

 二人は仲睦まじくお茶会の会場へと向かって歩き出すと、他の2人の令嬢も3歩下がって二人の後をついていった。

 色々なことがありすぎて、頭が動かない。

 なんとか馬車に乗り込むと、まずは気になっていたことを確認しようと父親候補リストを取り出す。

「金髪の、アーサー……婚約者なし。伯爵家次男……」

 アイリーンの文字に、お父様が書き加えた文字。

「さっきの人?……でも、ミューナ様を愛しているならヴァイオレッタと関係を持つわけはない……わよね?ミューナ様はアイリーンのことを愛人の子だとひどく馬鹿にしていた。愛人を作るような男性を選ぶわけない……はずだし……」

 ということば、別の金髪のアーサー?

 アーサーという名も、金髪も、特別珍しいわけではない。

 ……もしかしたらお父様の情報も間違って別の人のことを書いている可能性もある。確認した方がよさそうだと、お父様に伝えよう。

 それにしても……。

 いくら、場違いなお茶会に顔を出したからと言って、ひどい言われようだった。

 生まれてくるべきじゃなかったとか……。

 誰にも愛されてないだとか……。

 親もアイリーンのことを利用しているだけだとか……。

「ゴミ……か」

 アイリーンが、私のことをよくそう言って馬鹿にしていたけれど……。

 まさかアイリーンも、言われていたなんて……。

「知らなかった……」


「お父様、ただいま戻りました」

「ん?お前、まさかヴァイオレッタ用のドレスで侯爵家のお茶会に行ったわけじゃないだろうな!」

 お父様が、少し紫がかった紺色のドレスを見て目を吊り上げた。

「いえ……ドレスを汚して……しまい、侯爵夫人のジョアンナ様が見かねてプレゼントしてくださったもので……」

 お父様の目の色が変わった。

「ほう!それはでかした。侯爵夫人に気に入られたということだな?」

「いえ……。顔も合わせておりませんので……侍女が間に入って対応してくださっただけで」

 ルード様がいたから……侯爵夫人もよくしてくれただけかもしれない。

「なんだ。そういうことか。ったく、お前は役に立たないな。で、何の用だ?」

 お父様の顔がすぐにいらついたものに変わる。

「その、お礼の手紙を書いて出したいと思うのですが、何かお礼の品もお贈りした方がよいのかと……お父様にご相談を」

 お父様がふむと頷いた。

「これを機に関係を深めるチャンスか……早速宝石商を呼ぶか」

 お父様が考え出した。

「いや、待てよ。侯爵家といえば、うちなんかよりもずっと立派な宝石を買うことができるな。だとすれば何を贈ればいいんだ。王都で流行のお菓子か?いやいや、口に入れるものだ。何かあれば大問題になるな。うーん……」

 お父様がお礼の品を考えている間に、私はドレスを見下ろした。

 ……お父様は、ヴァイオレッタのドレスだと勘違いしたようだけれど、色味は確かにヴァイオレッタが身につけそうなものだ。だけれど、フリルがついていたり、大きなパフスリーブだったりと、デザインはとてもアイリーンが扮するヴァイオレッタが着るようなものではない。見ても分からないのだろうか。


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