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「そうよね。間違えて生まれてきたゴミなんてだぁれもいらないもの。子爵家の婿に慣れるならゴミ処理くらい誰かしてくれるわよね」
生まれてくるべきじゃなかった子供なんていないよ。
だって、私は生まれてこなければよかったなんて思ったことない。
そりゃ……悲しいことも辛いこともたくさんあるけれど。
家族にすら疎まれているけれど……。それでも。
お母様が命がけで私を産んでくれたの。
それに……命は、神様が授けてくれるんでしょう?神様が……生まれてはいけない命など授けるはずがないもの……。
「ゴミクズ!」
「いなくなれ!」
「消えろ」
「目ざわり」
「カス」
3人に取り囲まれ、口々に悪口を言われる。
「本当になんなの!あんたになんて、せいぜい男爵家か子爵家の男しか見向きもしないわよ!」
どんっと、胸を手で押された。
「そうよ。今日は伯爵家以上の集まりなのよ!何をのこのこ来てるのよ!」
よろめくと、今度は背中をどんっと押される。
「ちょっとかわいいからってね、玉の輿なんて夢見ないことね」
今度は肩を押された。
3人の令嬢に玉突きのように扱われる。
「愛人にしようと声をかけてるだけよ」
「愛されるなんて勘違いしないように」
「下位貴族の男たちだって、あんたを子爵家を手に入れるために利用しようとしてるだけなんだから」
「そうよ、利用価値があるから相手にしてるだけ」
「母親だって、子爵と結婚するために、あんたを利用しただけ」
「くすくす。どうせ父親に言われてるんでしょう?高位貴族を捕まえろとかなんとか。父親もあんたを利用してるだけ」
「だぁれも、あなたのことなんて、愛してないんだわ」
……何……?
アイリーンが誰にも愛されてない?
そんなことあるわけないわ。
家族に見放されているのは私。
アイリーンは、お父様にもお義母様にも愛されている……。
愛されて、いるわよね?
何を言われているのか理解できなくて呆然とすると、玉突きが終わった。
令嬢の一人が取り出した扇子で顎を持ち上げられる。
「か・わ・い・そ・う」
「あら、同情してあげるなんてお優しいのねミューナ様」
「ほほほ、だって、私は両親にも愛されて、そればかりか……アーサー様にも愛されているんですもの」
ミューナ様がにやりと笑った。
「まぁ、アーサー様に?ということは……」
「ええ、きっと、すぐにでも結婚の申し込みがあると思いますわ」
「おめでとうございますミューナ様」
「ふふふ、ありがとう。でもまだ早いわよ」
アーサー?
「ああ、こんなところにいたのかミューナ」
「まぁ、アーサー様。探しに来てくださったの?」
まるで今まで私をなじっていたのとは別人のように、かわいらしい声をミューナ様が出した。
「珍しいね、いつも3人でいるのに、その子は?」
ミューナの陰になっていた私の顔を確かめるように、アーサー様が顔をのぞかせる。




