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「許してくれ……」

 ルード様は何に対して許しを請うというのか。

「俺には、君に何も与えることはできない……弟の愚かな罪の責任を取らなければならないのだ」

 弟の罪?

「私は……ルード様に何かをいただこうとは思っていません。宝石もドレスも……それから将来の約束も」

 ああと、ルード様が小さく頷く。

 吐息が私の指先にかかる。

 びくりとそれだけで体中が熱くなる。

 ごくりと、ルード様の喉が鳴った。

「ヴァイオレッタ……罪の色……だ。初恋のひたむきさは……時として罪」

 ルード様が私が胸に刺したヒヤシンスに視線を落とした。

 ヴァイオレッタ……。ヴァイオレッタの名前をルード様が口にしたようでぎゅっと心臓が締め付けられる。そして、そのあとに続いた言葉に、今度は心臓に針でも刺されたようだ。

 花言葉のことを言っている……それだけのことだろう。

 でも、まるでヴァイオレッタの存在が罪のように言われているようで涙がこぼれそうだ。

「もし、許してもらえるならば、一緒にお茶をしてくれないか?」

 これ以上ルード様と一緒にいれば……。アイリーンに不名誉な噂が立つかもしれない。

 お父様はルード様の弟とアイリーンの縁談を考えている。

 その妨げになってしまうかもしれない。

 お茶の誘いを受けるわけにはいかない。

 断ろう。そう思ったのに。

「アイリーンのお姉さん……ヴァイオレッタのことを教えて欲しいんだ」

「え?どうして……?」

「今は、その、詳しい話はできないんだが……弟のしでかしたことの後始末のために俺は王都に来たんだ」

 後始末?

「あの、弟さんは、一体何を?」

 ルード様が首を横に振った。

「それが私……いえ、ヴァイオレッタ義姉様となんの関係が?」

 ルードがまた首を振った。これ以上はいくら訪ねても教えてはくれなさそうだ。

「本人と話をしてからしか……どうなるか分からないんだ」

 本人なら目の前に!……ううん。きっとアイリーンが扮したヴァイオレッタのことだろう。

 一体、ルード様の弟と何があったんだろう。

「あの、私にも関係あることですか?」

 弟はアイリーンのことも知っているみたいだし……。

「そうだな。無関係ではない……。だからこそ、アイリーンにヴァイオレッタのことを聞かせてほしいと思って……」

 何を話せばいいというの?

 社交界でのヴァイオレッタがどのように噂されているかの詳しいことは私は分からない。

 アイリーンから見た私……の話じゃないよね。世間一般に言われているヴァイオレッタ……。それとも、ヴァイオレッタをしている家でのアイリーンのことを話せばいいの?

 だめだ。普段アイリーンが社交の場で「お義姉様はこういう人」だと話している内容は全く知らない。言っていることが二転三転しては不審がられる。

 一体、ルード様が言う弟の後始末がどういうことなのか気になるけれど、ヴァイオレッタのことを話さない方がよさそうだ。

 どうしたものかと考えて黙っていたら、ルード様が口を開いた。

「ごめん。そうだよな。言えないこと……いや、言いにくいこともあるよな。無理に聞き出したりしないよ」

 そういって、気持ちを切り替えるために、立ち上がって大きく伸びをした。

「さぁ、お茶を用意してもらっているんだ。行こう。そちらから見る花も綺麗だよ」

 断らないと。頭ではそう思っているのに。

 差し出された手に、思わず手を伸ばしてしまった。

「痛っ」

「どうした?すまん、何か……」


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[一言] ∑( ̄□ ̄;)アイリーンの腹の子は弟の子か
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