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「とにかくだ、家名が分かった者もいるが、まだ6人がどこの誰だか分からん。名前……愛称と髪と目の色しかわからんのだ。アイリーンは顔を見ればわかると言うが、できるだけ早くどんな奴か確かめておきたい。それらしい人を見つけたらどんな奴か教えろ」

 それだけ言うとお父様が出て行った。

 すでにどこのだれか分かった14名のうち、10名が既婚者か婚約者持ち……。

 ヴァイオレッタは体のいい遊び相手にされていたんだ。

 私じゃないけれど、私。

 男に騙されて遊ばれていた、茶色の髪のヴァイオレッタを想像して悲しくなった。

 体調を崩して領地で静養しているという話は耳に届いていないのだろうか。いまだに……誰からも心配した手紙の一つも届かない。

 誰一人として……ヴァイオレッタの身を気遣う者はいない。

 婚約者もいないのは、金髪の子爵家の嫡男と伯爵家の次男。アイリーンの血が出れば金髪になる。この二人が有力候補になるのだろうか。正体不明の6人は、黒髪が1人……。

 ルード様の顔が浮かんだ。

「彼は……そんな人じゃないわ……名前だって、ハルーシュと別だもの」

 他には濃い茶髪、薄い茶髪が2人に赤毛が一人に、アッシュグレーが一人……か。

 アッシュグレーの人は少なそうだからすぐに見つかりそう。あとはどうやって探すのか。

「茶髪で生まれたら母親に似たと言えばいいなら、誰とでも結婚できる。でも父親の色を引き継いでいれば……。見つけておかなければならないのは黒髪と赤毛とアッシュグレーの3人かな……」

 こんな、宝石やドレスを選ぶみたいに、人を選ぶなんて……。

 半年後……私には子供ができる。家族ができる。大丈夫……きっと、幸せになれる。

 机の引き出しから本を1冊取り出す。真ん中あたりの紙を挟んであるページを開くと、ピンクの花びらの押し花が姿を現す。

 20人の中に、アイリーンが本当に好きな人はいなかったんだろうか。

 20人の中に、ヴァイオレッタを本当に好きな人はいなかったんだろうか。

「もし、いたとしても……結婚するのは別の人……私……か……」

 考えても仕方がないと、頭をふり、本を閉じて書類仕事に戻る。


 次の日、お茶会に向かう馬車の中。

「背中がチクチクする……」

 何かが服の中に入っているみたい。

 ふと、準備を手伝ってくれた侍女のニヤニヤとした顔を思い出す。

 わざと、何か入れた?

 この間はお父様と一緒に出掛けると知っていたから何もしなかったけれど……今日は何かされたかもしれない。

 そりゃ、自分より下の使用人扱いを受けていた私の身支度の手伝いなんて腹が立つのは分かるけれど。

 一体何を入れられたのか。

 背中では自分で確認して取り出すことができない。

 帰るまで我慢するしかない。

 はぁーとため息をつきながら会場に到着する。

 侯爵家のお屋敷は、この間の公爵家ほどではないけれどとても立派だ。

 受付で招待状を手渡すと、少し驚いた顔をされ、お茶会の開かれる庭園まで侍女に案内される。

 庭園には、すでに30名ほどの男女がいて親し気に談笑したり、くつろいでお茶を飲んだりしていた。

 私が庭園に足を踏み入れると、談笑していた人の視線が私に向いた。

「あら?子爵令嬢がどうしてここに?」

「アイリーン嬢はいつ見てもかわいいなぁ。声をかけてみようか」

「やめとけよ。姉のヴァイオレッタと違って見持ちは硬いぞ」

「そうよ。子爵令嬢なんか、遊び相手にはなっても結婚相手には考えられないでしょう?」

「でもあそこは姉の素行が悪くて家を継ぐのはアイリーン嬢だって話だぞ?」

「子爵家に婿入り……まぁ無爵位で放り出される嫡男以外なら美味しいんじゃないか?」

 いろいろと噂される声が聞こえてくる。


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