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「ルード様?」
どうしたのだろう突然。
ルード様は、顏から手を外すと、私の頬をそっと撫でた。
「いいや、なんでもない。すまない。じゃあ……」
触れられた頬が熱を帯びる。
「はい。失礼いたします」
お辞儀を返してダンスホールに一人で戻った。すぐにお父様の姿を見つけて近寄る。
「アイリーン、どこにいたのだ」
お父様が声を潜めて私に話しかけた。
「知っている人になるべく合わないように、庭園にいました」
「誰にもバレてないだろうな?」
「はい」
「じゃあ、帰るぞ」
馬車に乗り込んだとたんに、お父様はいつも屋敷で見る姿に変わった。
不機嫌な顔で視線も合わさず私にキツイ言葉を吐く。
「あの男は一体誰だったんだ?」
え?
「お父様もご存じないのですか?」
「知らん。知っていれば、皆にアイリーンお嬢様とご一緒の方は誰だと尋ねられても答えることができたんだ。まったく、答えられずに恥をかかされた。お前のせいで!」
「も、申し訳ありません」
初めて舞踏会に行ったのだ。貴族の顏等知るはずもない。まして知り合いなどいるはずもない。
「公爵様にはルードと呼ばれておりました。砕けた口調で会話をしておりましたので……公爵様のご親族かと」
「ふん、なるほど。高位貴族なら顏を知ってる者もいるはずだ。順番を飛ばして挨拶できる立場なのに知ってる者がいないと思ったら、親族か。公爵家には分家も多いし、過去に公爵家と縁づいた家もしぶとく親族を名乗るからな。大方田舎の領地持ちに何代か前に婿入りか嫁入りした家の者だろうな」
お父様がぶつぶつと独り言を言い出した。
「アイリーンの美しさがあれば、もっといい婿が取れるはずだ……。しかし、しょせんは子爵家。ルードとかいう男、いくら田舎の名前も知らないような貴族とはいえ、公爵家と縁づくことができるならそれもありなのか?遠縁とはいえ、娘婿は公爵家の血を……うん、それもいいかもしれないな」
ルード様がアイリーンと結婚するの?
「お、お父様、ルード様が嫡男だった場合は、婿入りは難しいのでは?」
お父様が、胸元のポケットから紙を取り出して広げる。
「うむ、そうなれば不本意だが、アイリーンは嫁がせ子爵家はお前に婿を取らせればよい。父親候補の中で婿入りさせられそうなのは誰がいるか……」
20名の名前が書かれた紙。
私が結婚する相手。
ずきりと胸が痛む。
「アイリーンがルードと結婚して、お前が家に残残るのか。私の血を引いた孫に子爵家は継がせられるし、悪い案じゃないのか?」
ルード様とアイリーンが結婚……。
「お、お父様、ルード様は弟の話をしていらっしゃいました。弟はアイリーンのことをルード様に話をしていたようです。ご家族に話をするくらいですから、アイリーンに好意があったのでは?」
お父様が私の顔をちらりと見た。
「ルードの弟?ふん、そうだな。お前に子爵家を継がせ無くて済むならそっちの方がいい」
なぜか、ほっとした自分がいる。
「父親が誰か分からない娘に、父親が誰か分からない孫……一緒に住むことを考えたら虫唾がはしる」
お父様が私のカツラに手をかけた。
「いつまでアイリーンのフリを続けるつもりだっ!」
裏話を一つ。
なろうに上げるにあたり、名前をちょっと変えました。
いやぁ……こんなにキャラクターの名前が安定しなかった作品は他にないよ!!!って感じで。
ルーノと名付けたヒーローは、しょっちゅうルードと書き間違える。
ジョアンはジョアンナと書き間違える
ヴァイオレッタはヴァイオレットと書き間違える……
間違いまくりました!なので、もういいや。ルーノはルードにしてあげよう。ジョアンなジョアンナにしてあげようと、名前を変えてなろうにアップしております……。
え?何回くらい間違えたかって?
それはもう、本気ですごい数……




