【俺は】悪役令嬢配信【壁です】Part5
ディベアは綺麗に投げ飛ばされた。皇子が転んで下に落ちていく力と回転して転ぶ力が掴んでいたディベアに加わり、綺麗なまでに投げ飛ばすことができたというわけである。
「「「「ディ、ディベア様ぁぁぁ!!!!!」」」」
黒鶏:ディベアアアアァァァァ!!!!!
俺俺:ディベアァァァ!!!
ショタコンおじさん:ロリを投げるショタの、あっ!やっちまった!って顔が最高に尊い!
レムレム:この状況でディベアの心配してないやつがいる……人でなしが
取り巻き達の絶叫とコメント欄のざわめき、それと同時に、ディベアの背中が地面に激突する。それから小さくバウンドを繰り返して、ディベアの体は教室の床を滑っていった。
「ディベア嬢!大丈夫ですか!?……『ヒール』」
教師が走って行き、魔法を唱えた。光がディベアの体を包んでいく。『ヒール』なんて言ってたし、恐らく回復魔法だろうな。
回復魔法は異世界で生きていく上で必須と言って良い魔法だし、俺も勉強したいな。俺の家で学べたのは攻撃関係の魔法ばかりだったし。教師が使えるのだから教えてもらえることを期待しようではないか。
「っ!つううううぅぅぅぅぅぅ!!!????」
ディベアはまだ痛いようで、悶絶しているな。だが、あの様子なら死んだり大怪我したりすることはないだろう。
……まあ、この世界はゲームと同じ世界なんだ。本編が始まってすらいないのに悪役令嬢であるディベアが死ぬわけがないよな。
黒鶏:ほっ
俺俺:ほっ(安堵)
レムレム:良かったな。当たり所が悪かったらあの飛び方は○んでたぞ。
こころり:よ、良かった。ロリが○なないで良かった
コメント欄でも安堵している奴が多い。
ただ、俺は安堵とは別の気持ちがわき上がってきたな。
俺が見ているこの光景。これは、恐らくゲームに関わってくる大事なイベントなのではないかと思う。
王族が、公爵家の令嬢を投げ飛ばしたのだ。問題にならないわけがないだろう。最悪、王家は公爵家を潰そうとしているなんて言う話になってしまうかもしれない。
そんな事態にならないために、王家は公爵家に対して皇子とディベアの婚約を提案したのだと思う。王家と侯爵家は友好関係にあり、味方同士であるとアピールするために。
ようこそ異世界へ:皇子とディベアが婚約するイベントの情報カモン。今回の件と照らし合わせたい!
俺は固定コメントを出して、視聴者に情報を求める。できれば、貴族の家の者として、その辺りは知っておきたい。この情報を上手く活かすことができれば、俺の家が上手く動ける可能性もあるからな。
そんな気持ちを込めた俺の呼びかけに反応するものたちは多くいて、
ガスカル:詳しい情報は得られなかったが、婚約したのは6歳くらいだそうだ。
ビビビル:このイベントが皇子とディベアの婚約のきっかけで間違いないと思う。昔作者の販売してた設定資料集に書いてあった。
あれw:マイナーなやつだけど、設定資料集に皇子がダンスの練習でディベアに怪我をさせたのが原因って書いてあったよぉ。
情報は集まった。これが婚約のきっかけで間違いないようだ。
下手に関わるとストーリーに変化が起きかねないので、俺は2人や取り巻き達の様子を黙って見ながら配信しておく。
ようこそ異世界へ:君子危うきに近寄らず、だ
ショタコンおじさん:ただの逃げる言い訳で草。と言いたいけど、イケメンショタを映してくれてるから許す。
黒鶏:自分が巻き込まれない限りはそのスタンスで良いと思う。
レムレム:関わって未来のことが分からなくなるのは大きなデメリットだからな。
コメント欄も理解は示してくれているな。今後もこちらから関わらないようにしても良いだろう。
今はひたすら、モブに徹する。
「ディベア嬢。申し訳ない。大丈夫かい?」
「だ、大丈夫ですわ。先生に回復魔法もかけて頂きましたし」
「そ、そうか」
2人は、というより、ディベアはそこまで気にしていないようだった。
しかし、
「殿下。申し訳ありませんが、近づかないで頂きたく」
「申し訳ありませんが、先程の行動からディベア様に近づかれるのは危険があると判断しました」
「あっ……」
取り巻き達は違う。
ディベアを守るように、周りに立って皇子を睨む。皇子は皇子で反論できるわけもなく、肩を落としながらも大人しくその場で立ち止まった。
ディベアは少し慌てたような表情でそれを止めようとするが、
「だ、大丈夫ですわ。殿下も故意にやったことではないでしょうし……」
「ディベ様。そうだとしても、今の状態でお二人が近づくと学園にも影響を与えるかと」
「……うぅ。分かりましたわ。殿下、申し訳ありませんが、しばらく接触を避けさせて頂きます」
「ああ。うん。……僕が悪いんだから、気にしないで」
若干気まずい雰囲気になりつつも、事態は一応これで落ち着く。
皇子もディベアもお互いに申し訳なさそうな視線を向けつつも、近づいたり言葉を交わしたりすることすらなく時間はしていった。