【俺を】悪役令嬢配信【楽しませろ】Part1
突然だが、俺は転生した。
チートもなく、与えられた能力は元の世界に配信できるという能力だけ。全くメリットがないわけではないが、こんな能力では異世界を楽しむことは難しかった。
だが、そんな俺に転機が訪れる、
「跪きなさい!この侯爵家の淑女となるわたくしが通るのでしてよ!!」
傲慢な言葉。その声の主は、ロールをいくつも作った金髪を揺らし、取り巻きを引き連れながら歩いている。
多くのものが不快そうに顔をしかめる中、俺は思った。
今が、俺の能力が最高に輝くときだ、と。
【この世界】悪役令嬢配信Part1【乙女ゲームだった】
ここから俺のつまらなかった異世界生活は、大きな転機を迎えることとなった。
※※※
「……それでは、本日も異世界配信始めまぁす。ようこそ異世界へ」
俺が自分の能力を知ったのは、転生してから半月ほど経った日。
それまではチートを求めて毎晩魔力を操る練習をしていたが一向に魔力を掴むことができず、なんとなく別のことがしたくなった。ということでふざけて「ステータスオープン」なんて言ってみた(実際には赤子のため、ふぎゃぎゃぎゃぎゃああ)んだが、そこで実際にステータスウィンドウが出てきた。
そこに書かれていたのは平凡なステータスと転生者という称号。そして、『異世界配信』のスキル。
ここで初めて自分の持っているスキルを知ったわけだ。……まあ、最初にステータスを見たときには魔力関係が1つも取れていないことの方に意識が行って落ち込んでいたわけだが。
まあ、そういう風にスキルを知った俺は、能力の把握に努めた。
結局分かったことは、そのスキルを使えば俺が転生する前にいた世界に向かって配信が行えるということ。それだけだった。
赤子になって配信をしたところで楽しませられるわけがなく、というか母親の胸を見せるというラキスケ(?)配信しかできず(勿論それを求める視聴者は一定数いた&何かの特殊能力によりそのシーンにはモザイクが掛かっていたらしい)、動けるようになるまでは配信はしないでおいた。
結局本格的に配信を始めたのは3歳からで、
「よし!ジム!今日は魔力の身体操作を鍛えるぞ!」
「了解。父さん」
俺はこの世界における鍛錬の風景を流す配信を軸に活動した。
どういうわけかこの配信は元の世界の幾つかのプラットフォームで配信されるらしく、それぞれのサービスで登録者が増えたりコメントが貰えるようになっていたりした。
初期こそ偽物呼ばわりされていたが、実際に元の世界で配信の言葉を聞き魔法を使えるようになった人がいるらしく、俺は貴重な存在として扱われることとなった。今では元の世界で最大の人気を誇る配信者らしい。
……うん。そういうのは、異世界に来る前になりたかったな。
で、それは良いとして一部の政府は俺の情報を独占しようとしたらしいのだが、スキルの能力なのか何なのかは分からないが、どれだけ超大国の政府が動いても俺の配信を邪魔できなかったらしい。
スキルってスゲぇなと思った瞬間だ。
……さて。ここまでが俺の過去、と言ったところだろうか。
もう少し自己紹介するとすれば、俺の名前はジムで男爵家の三男坊。魔力の得意な属性は風とか雷で、武器は剣を主に扱う。ただし弓と槍を使うことも可能で、無手の格闘もそこそこいける。ただし、決してチートと言えるほど強くはない。
といった感じだ。
今は父親から魔力で肉体を強化する方法を教わっているところなのだが、
黒鶏:やれぇぇ!!!親父さんをぶっ倒せぇぇぇ!!!
俺俺:やれぇぇ!!!!
ショタコンおじさん:くっ!このムキムキな叔父様がショタだったら!!
レムレム:魔力にこんな使い方があったなんて……おい、そこの変態。練習台になれ
こころり:ひぃぃぃ!変態だけどゆるして下さい!お願いです何でもしますから殴らないで下さい!!
コメント欄が騒がしい。
世界一の人気を誇っているため、コメントの流れは非常に速い。でも、どうにか魔力による思考速度上昇とスキルの思考加速や並列思考なんかで普段は読めている。
だが、今日はいつもより騒がしい。俺の父親と戦いながらだと目で追えないレベルだ。
またトレンドにでも載るのかな?なんて思いながら、俺は父親と共に鍛錬を行なった。
そんな生活が何年も続いている。非常に高い人気を誇り、投げ銭だって貰える(スキルの効果により投げ銭はこちらの世界のお金に変換可能)。
でも、俺としては少し、いや、かなり燻るものがあった。
配信は続けていくつもりなのだが、楽しくないのだ。今の状況が。
投げ銭のおかげで貯金はある。下手な富豪よりも金持ちだ。
強さもそこそこある。そこそこレベルだが、盗賊に絡まれる程度なら十分対処が可能だ。
だが、だがそれでも、楽しくない。
この世界には、俺が求めたような異世界としての楽しさは、一切ない。俺の体はまだ子供だし、この世界の知らないことだった多い。
でも、それでも、好奇心が一切湧かない。何をやっても楽しくない。
そう思っていたときだった。俺は、悪役令嬢に出会った。
短めの予定ですが、人気があれば長くする予定です~。
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