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【自称アンタレス星人】 今日は波動高めで

【自称アンタレス星人】 今日は波動高めで 5

作者: さるた


母艦で職務をしているネルから連絡が入った。

「予定にないことなんだけど。。。来週、公式来艦があるから正装で式典に参列が入ったよ」

デスクネットの画面に金髪をまとめて上げている女性の姿が映る。服装は茶色い詰め襟軍服だ。耳には大きめのピアス。相変わらず、ギリシア風の白い服を着た中性的な姿のミルに、はぁ。。。、とため息を付く。

「なんで。。。こう、力がある人ばかり、威厳に無縁な格好してるんだろう」

と、両手を広げた。ミルは口元を緩めながら

「それが特権だからかな。。。」

と返す。アンタレス星人は、力が強いものほど着飾らない。服装も軽やかなことが多い。けれども、正式な式典のときの正装は帯刀で装飾具をつける。それはとても美しい姿だ。

「で、誰が来るの?」

ミルは念のためという感じで聞いてみる。

「オリオン族の姫君とその年頃の御一行様が交流に来るらしいよ」

ネルはわかりやすいように文書を開きながら説明をする。ニヤニヤして

「で、ミルは名指し指名で、オリオン族なんたら優秀者?のおつきの命を受けてる」

口元を隠しもせずに吹き出して笑い出したネルは

「。。。一体!何したのよ〜!」

と大笑いしている。ミルももう笑うしかないというように一緒に、はっはっは!と笑う。

「いや〜!あの美くしい子ども、優勝したんだね。ということは、私は景品かな〜」

と、笑ってみる。その途端、

「。。。はぁっ?」

と、顔色を変えたネルが映る。

「我がアンタレス星船団防衛軍、御大将の一人である、ミルミルワが景品!?」

と、憤る。

「。。。すごい肩書だね」

知らない間に、御大将と呼ばれるまでになっていたことにミルは驚く。単に長く生きて、かつ、繭での休眠も少ないだけである。アンタレス星人は個別で活動することが多い。部下を持たないため、情報の統合や分析は母船任せである。知らないうちに昇任していることはよくあることだ。


。。。それにしても


と、ミルは考える。あの子は、ミルの名前だけでここまでたどり着いたのだ。交流でもなければ、出会うこともできないことも理解して。お互いの一族を巻き込んで会いに来る。ミルは、若い鮮やかな勢いに感動を覚えた。


。。。一日くらい巻き込まれてあげよう


ネルの憤りを横目に、顎に指を当てると少し笑いがこぼれた。




リュカムイは宇宙船の自分の部屋でデスクネットでアンタレス星人についての文献を読んでいた。


3週間。。。


自分としてはまずまずの手応えだった。まず、アンタレス星人をとことん調べた。オリオン族との違い、特徴、性格、法律、経済、交流など。個人として残っている記録。寝る間も惜しんで、銀河船団図書館にアクセスして調べ尽くした。アンタレス星人が長寿であることは知っている。今の自分では、何の相手にもされないことがよくわかった。そこで、前回の優勝で保留にしていた褒賞を問い合わせ、その力で「トキオカシ」に会うことを望んでみた。運営側はどのようなことも前向きに検討するのを信条としているため、トキオカシのことを調べ上げ会わせることを約束してくれた。先日の優勝の褒賞分でアンタレス星団との交流を依頼。この分についても快諾してくれた。自分の年齢が、姫と同じということで姫を交えて種族交流というかたちで実現がしやすくなったようだった。

一方、希望したトキオカシとの面会。

普段、トキオカシは人とは会わないようだ。しかし、今回は簡単に会わせてもらうことが出来た。場所を示されたところは、人里離れた場所で普通の人が簡単に入ることができないようになっていた。森が深く草木も生い茂っており、草木の呪文無しで入るのは困難だっただろう。草木の呪文は精霊たちが協力をしてくれる呪文で、これはリュカムイが小さな頃から得意な呪文だった。行き止まりかと思われるような場所に、ひっそりと小さな白い四角い箱のような建物が1つあった。場所を知らなければ決して着くことは出来なかっただろう。自分の大きさと同じくらいのドアがあり、建物の大きさも生活最低限な感じだ。

「ごめんください」

ノックをすると、ひとりでに扉が開いた。勢い余って転がり込むが、受け身の姿勢で即座に中腰で立ち上がる。

白い服を着た人物がミルの姿と重なって心臓が大きく弾む。けれども、次の瞬間、白い服を着た小さな老人がニコニコとして立っていた。

杖をコツコツと付きながら近づいてくる。


。。。一人で来たのかい


脳内で響く声がリュカムイに届く。

「はい!私の名はリュ」

老人が手をきゅっと握ると、リュカムイは名乗ることができなくなった。


。。。私の


思念でも送ろうとしたが、


。。。さぁ、静かにするのだよ。名乗るものではない。お主が会いたがっている人物も望まないだろう


と、止められてしまった。


。。。あまり時間がないようだ。会うべくして会った二人。あぁ、わしは何という幸運。幸いにもわしはあやつを知っておる。そして、お主とも出会えた。さあ、顔をよく見せておくれ。


何も話していないのに、何もかもお見通しのように老人は一人でつぶやく。そして、リュカムイの目を覗き込んだ。


。。。ああ、そうだろう。お主には酷だったろう。あの星にいることは。。。お主の本当の体の色は、まるであやつの魂の色と同じじゃ。求めるのも仕方のないこと


少し何を言っているのかわからないこともあるが、気にせずに

「では、願いを叶えてくれますか」

リュカムイが尋ねた。老人は目を細め、待ってましたとばかりに手を広げた。

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