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絶対に正体がバレてはいけない魔法学園生活  作者: かわいさん


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第15話 中間試験 前編

 中間試験初日、魔法学の試験が行われた。


 これは簡単だった。出題範囲は狭く、授業を受けていれば問題なく高得点を獲得できる。手こずりそうなのは魔法用語くらいだろうか。

 

 授業をまじめに受けていたので楽勝だった。クラスメイトの反応からして多くの者が高得点を獲得するだろう。


「ぐっ、全然わからなかったぜ!」

「……あたしも全然わからなかった!」

 

 苦労していたのは冬樹と夏美を含め数人だけ。赤点を取ると放課後に補習させられるらしい。ご愁傷様だな。


 そして、問題の二日目。


 いよいよ実技試験が始まる。


「おはよう、中館君」

「……」

「今日は頑張ろうね」

「フン、足を引っ張るなよ」


 近づいてくる秋人にいつも通りの対応をする。


 実技試験は体育館で行われる。


 姫華学園の体育館はいくつかの防御系魔法が施してあり、魔法をぶつけてもビクともしない。広さは普通の学校の数倍あり、魔法使い同士が派手に戦っても問題ない特別な構造になっている。


 体育館に到着すると、他のクラスの試験が行われていた。


 広いといっても全クラスの生徒が魔法で戦うには限界があり、時間は少しズラしているらしい。


「おいっ、あいつが例の首席だろ」

「みたいだな。お手並み拝見だ」

「てか、可愛い子多くね?」

「イケメンも多いよ」


 ひそひそ声が聞こえる。


 いくつもの視線が俺に向けられる。生徒だけでなく、教師の視線も感じた。


 注目されているのは俺だけじゃない。我がクラスには美男美女の幼馴染が存在することは知られているので、そちらにも多くの視線が向けられていた。


 居心地の悪さを感じながら歩き、俺達のクラスのスペースに移動する。


 実技試験は二対二で行われる魔法勝負だ。


 ルールは単純。

 

 魔法を使用しての対戦だ。


 両方が戦闘不能になるか、敗北を認めるか、あるいは担任教師が試合を止めるまで続けられる。戦う場所は結界によって遮られており、場外負けは存在しない。


 それ以外のルールはない。


 多少のケガくらいならば魔法で治療が可能なので思い切り戦うことを推奨されている。勝ち負けではなく、使用した魔法やら戦いぶりが採点対象となる。

 

「対戦の順番は先日発表した通りだ。では、これより試験を開始する」

 

 試験が始まった。


 戦っている生徒以外は結界の外での観戦となる。

 

 俺達の戦いは最後に組まれた。


 これは学年首席である俺の戦いぶりを多くの者に見せるためだ。まったくもって余計な措置ではあるが、注目を浴びる立場にあるので仕方ない。


「……こうして間近で見ると、凄い迫力だね」

 

 隣にいる秋人がつぶやく。


 クラスメイト達の戦いぶりは激しかった。


 どいつもこいつも真剣な顔で戦っていた。ここに来るまでケンカすらしたことなさそうな女子ですら鬼気迫る表情で魔法を放っている。


「あっ、春香の番だよ」

「……」

 

 声に反応して視線を向けると、結界の中に入った春香と目が合った。


 最近、春香とよく目が合う。


 俺のほうは死亡説だとかそういったことが気になって視線を送っていたのだが、どうやら春香は俺に対して敵意があるらしい。


 そう、何故かいつも睨まれている。


 明らかに敵視している。本人は隠しているつもりだろうが、あいつは子供の頃から嫌いな相手を睨みつける癖があるのをよく知っている。


 入学して間もない頃に塩対応したのを根に持ってるのか?


 とはいえ別に何か言ってくるわけではないし、攻撃してくるわけでもないので無視しているのだが。


 ……そういや、春香は俺をどう思ってるんだろうな。


 蘇生魔法に関しての質問は俺に関係しているのだろうが、イマイチその辺りがわからない。夏美と衝突してからの春香はどこか不安定に映った。


「春香の相方は遠距離タイプだね」

「……みたいだな」


 先ほどから戦いぶりを見ていると、いくつかのタイプに分かれているのがわかった。


 魔法使いといえば遠距離から魔法攻撃が定番だ。実際、その戦い方をする奴が一番多かった。


 しかし、たまに近接戦を仕掛ける奴がいた。


 魔法で炎の剣だったり、雷の斧だったりを作成し、相手に殴りかかるのだ。試験では魔法を使えば近接戦をしても問題はない。まあ、特攻からの返り討ちが目立っていたけど。


 春香は氷の鞭を手にしていた。


「……近接か」

「僕も初めて見た。隠してたみたいだね」


 一方的な戦いだった。


 春香の相方は遠距離から魔法を連発した。


 使っているのは威力の低いボール系の基本魔法だが、コントールは抜群だ。的確に相手チームの生徒に向かって飛来する。


 その攻撃に連動するように、前衛の春香が詰める。


 いいコンビネーションだった。相手チームは防御と回避に専念するしかなかった。


 しかし、耐えにも限界が訪れる。

 

 崩れたところに春香が詰め、氷の鞭で相手チームを縛り上げる。


「――そこまで。勝負あり!」


 強い。


「さすがだね、春香は」

「……そうだな」

「特待生で魔力は多いし、授業でもいつも本気だしね。中館君は知らないと思うけど、寮に戻ってからもずっと魔法の練習してるんだよ」


 授業での春香は鬼気迫るものがある。


 魔法を覚えるのに貪欲で、授業でもいつもまじめだった。


「っ」


 戦い終えた春香が敵意のある視線を向けてきた。


「どうしたの?」

「最近、東山によく睨まれる」

「はははっ、それは仕方ないよ。春香は学年トップを狙ってるからね。首席入学の中館君を意識してるんだよ」


 そういう理由だったのか。


「……校長からの指導が目的か?」

「絶対に死者蘇生の魔法を覚えるって張り切ってたよ」


 秋人は苦笑いを浮かべる。


 睨まれる理由はわかった。勝手にライバル扱いされてたわけだ。害はなさそうだから放っておいていいだろう。


 その後、試験は順調に消化していき――


「では、最後の対戦だ」


 俺達の順番となった。


 他のクラスの試験も終了し、体育館にいる全員の視線が向けられているのがわかった。


 集中しろ。一つの失敗が退学に繋がる。


「よっしゃあ、正々堂々勝負だ!」

「まあ、お手柔らかに頼むわね」


 実技試験が開始された。

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