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絶対に正体がバレてはいけない魔法学園生活  作者: かわいさん


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第14話 残る謎と作戦会議

 頭が真っ白になった。


 俺が亡くなった?


 意味不明すぎるだろ。俺はこの通りピンピンしている。実は幽霊でした、というオチはない。事故にも遭っていないし、病気だって患っていない。体の頑丈さは昔からの自慢だ。


 腑に落ちないのはそれだけじゃない。あいつ等は死亡説を信じている様子だ。


 何故だ?


 葬儀など行われているはずがないのに誰も疑っていなかった。


 死亡説にも驚いたが、それ以上に頭を悩ませたのは別のところにある。連中は俺を「友達」と言った。


 こっちは訳もなく絶縁された身だ。友達ならあれはないだろ。一方的に告げておいて今さら何だよ。


 まさか俺の正体に気付いて慌ててフォローしてきたとか?


 それはありえないだろうな。今の俺は勝ち組になったわけでもないし、社会的地位が向上したわけでもない。わざわざ好意的に接する必要はない。首席入学という肩書きはあるが、さほど重要ではないだろう。


「――ねえ、聞いてる?」


 秋人の声で我に返った。


「え、ああ、聞いてるよ」

「いよいよ明日から中間試験だね」


 そう、明日から中間試験が始まる。


 あの会話の後はどうしたのかよく覚えていない。気付いたら家に戻っていた。その後、あれこれ考えていたら数日が経過していた。授業の内容とかも覚えちゃいない。


 イカンイカン、集中しろ。


 切り替えないとな。流れている死亡説とか、友達発言には思うところがある。どうしてその説を信じているのか、情報の出所も気になるところだ。 


 しかし、残った謎よりも今は中間試験のほうが優先だ。


 これをミスしたらすべてが終わる。退学になったら事情も理由もわからないままだ。ひとまずこっちに集中するとしよう。


「魔法学は楽勝だけど、問題は実技だよね」

「……俺はどっちも楽勝だ」

「あはは、中館君ならそうだよね」


 秋人は楽しそうに笑う。


 そういえば、秋人は俺の死亡説をどう捉えているのだろう。あの時の口ぶりからして事情は知っているようだが。


 って、考えるのは後だろ。


「実技試験の相手が発表されたけど、作戦はどうしようか」

「相手は誰なんだ」

「えっ、さっきの授業で先生が発表してたけど聞いてなかったの?」


 あれこれ考えていたから聞いてなかった。


「きょ、興味がないからな。誰が相手でも同じだし」

「さすがの余裕だね」

「当然だ。で、相手は?」

「あの二人だよ」


 秋人が視線を向けた先にいたのは冬樹と夏美だった。


 普段はうるさい二人は真剣な顔で話し合っていた。どうやら作戦会議をしているようだ。


 マジかよ。よりにもよって最悪の相手じゃねえか。


「先生が言うには強さを合わせたみたい。中館君の相手になりそうなのは同じ特待生の春香か、その次に成績優秀な二人しかいないからって」


 我が幼なじみ達は魔法のほうでも高い才能を所持していたらしく、全員が成績優秀者だ。


 特待生として入学した春香はとても優秀で、それに続くのが冬樹と夏美だ。


 今回、春香はあまり強くはない女子生徒と二人組を結成している。運動も苦手で、魔法の腕もそれほどではない生徒なので俺達との戦いを見送ったのだろう。


 その次の実力者ということであの二人が選ばれたらしい。


「……おまえの幼馴染は仲が悪いんだろ?」

「良い成績を残したいから今回は妥協したんだって」

「そんなに成績が大事かよ」

「中館君は興味ないかもしれないけど、成績優秀者になると特典があるんだ。それが目当てみたいだね」


 初耳だった。


「二学期になると選択授業になるでしょ。成績優秀者は校長先生から直々に稽古をつけてもらえるんだってさ。校長先生は伝説の魔法使いって呼ばれてる歴代最強の魔法使いでしょ。あの人に魔法を教わると一気に強くなれるみたい」


 校長の力量は授業でも習った。


 歴代最強と呼ばれている魔法使いであり、学生時代から圧倒的な力を所持していたらしい。様々な魔法を生み出し、最強の座を現在まで欲しいままにしている。まるで異世界転生ラノベの主人公だ。


 力量だけでなく、魔導具の製作者としても有名だったりする。


 魔導具は作成者が魔法を込めて作成されるので、校長作の魔導具はどれもこれも恐ろしいほどに強力だ。あのアホみたいな身体強化は校長の魔法だ。

 

 待てよ、成績優秀者になると特典?


 その話を聞いてある可能性が浮かび上がる。


「もしかして、おまえが俺と組もうとした理由はそれか?」


 いくら何でも幼馴染の話をしないだけで構ってくるのは不思議だ。その理由が成績優秀者になりたかったから、というのなら辻褄が合う。


 実際には魔法など使えない俺だが、学年首席だと知れ渡っている。組めば成績が向上すると考えるのは自然だろう。


 指摘に秋人はバツが悪そうな顔をした。


「確かに、最初はそうだったかも」

「……」

「気を悪くしたよね。ゴメン」

「気にするな」


 むしろ謎が解けて安堵したくらいだ。


 俺の正体に気付いていたわけではなかった。学年首席の肩書きに寄ってきたとわかれば納得もできる。


「確かに最初はそうだったんだ。僕も色々な魔法を覚えたかったし、成績優秀者になりたかったからさ。でもね、今は一緒にいて楽しいよ。何というか、中館君って雰囲気が似てるんだよね」

「似てる?」

「僕の親友に」

「……」

「いきなりこんな話されても反応に困るよね。偶然だけど、名前も一緒なんだよ」


 間違いなく俺だよな。


 そりゃ似てるだろうよ。なにせ同一人物だからな。


 様々な情報が出そろい、頭の中で矛盾が解けていく。


 最大の疑問だったのが、いくら容姿が変化したからといえ同じクラスなのに連中が俺の正体に気付かなかった理由。


 それは俺がすでにこの世にいないと思っていたから。


 逆の立場で考えてみればわかる。


 亡くなったと思っている相手と同じ名前の奴が目の前にいたとして、そいつが自分の友人だと気付くだろうか?


 ありえないよな。


 世の中には似ている奴がいる、くらいの感覚だろう。おまけに見た目は過去とは比べ物にならないほど乖離しているわけだしな。結びつくほうがどうかしている。


「中館君?」

「何でもない。それより、俺達も作戦会議をするぞ」

「了解。試験、頑張ろうね」

「当然だ。必ず勝つぞ」


 状況がわからない以上は迂闊に動くべきではないな。ここは今まで通りバレないよう細心の注意を払いながら、ひとまず試験で好成績を狙うほうがいいだろう。


 そして、中間試験が始まった。

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