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絶対に正体がバレてはいけない魔法学園生活  作者: かわいさん


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第11話 もうすぐ中間試験

 姫華学園に入学して一か月が経過した。


 魔法の存在にはまだ慣れていない。突如として訪れた非日常を簡単に受け入れられるはずもなく、日々驚かされている。


 初のダンジョン探索を終えると、魔法学園らしく様々な魔法を教わった。習うのは下級魔法ばかりだが、日に日に魔法使いらしくなっていくクラスメイト達にただただ戦々恐々としていた。


 俺はといえば、相変わらず実技の授業を見学していた。


 一人だけ特別扱いにクラスメイトは不満そうだが、担任が認めている以上は仕方ないと表だって文句は言ってこない。


 ただ、ケンカは売られる。


 正確にはケンカという名の魔法対決を。


 学園内において無許可の魔法使用は禁止だ。高校生にもなればその辺りの分別はつくようで、直接的なケンカは売られていない。だから魔法対決をしようと持ち掛けてくる輩がいるのだ。俺に攻撃したいのか、あるいは首席の力を見たいのかは不明だが。


 挑戦は全部断っている。


『勝負になるわけないだろ、失せろ雑魚が』


 冷たい目で見下しながら突っぱねていた。その甲斐あってか、今のところ魔法が使えないことはバレていない。


 ここまでは順調だ。


 一学期終了まで時間は残っているが、このままなら無事にやり過ごせるだろう。そう、問題など何も――


「おはよう、中館君」


 いや、問題はあった。


 傲慢な天才魔法使いキャラを演じているため、相変わらずクラスでは浮いている。ダンジョン探索後には少しだけ話しかけられたが、塩対応したらあっという間に散っていった。


 しかし、約一名だけは違った。


「今日もいい天気だね」

「……」


 席に座ると、秋人が近づいて来る。


 秋人は迷わず俺の前の席に座った。そこは名前も知らないクラスメイトの席だが、わざわざ本人に断って席を借りている。


 あのダンジョン探索から露骨に距離を近づけてきた。


 当初は秋人の行動にクラスメイトもざわついたが、最近ではすっかり見慣れたようでこちらに視線を向ける輩はいない。すでに日常として受け入れられつつある。


 俺も最近ではこの日常を受け入れつつあった。


 断っておくが、最初は突き放した。今だって決していい対応はしていない。


 どれだけ邪険に扱っても秋人は離れなかった。ボス戦で助けたことで懐かれたらしい。


 秋人にとっても俺の近くにいるのは都合がいいという。何故なら俺と話していたらクラスメイトが近づいてこないから。幼馴染絡みの話をしなくて済む、とホッとしていた。


 そう言われたら幼馴染絡みの話をしまくって嫌われたくなるが、それはキャラが違うので軽率な発言はできない。下手な発言は控えるべきだろう。


 別に絆されたわけではない。こいつ等から受けた仕打ちは今でも忘れられない。


 怒りや恨みの感情は持っているが、それでも今の俺は傲慢な天才魔法使いだ。かつての外峯颯太ではない。ここで他のクラスメイト達と対応を変えたらバレる危険があるので迂闊なマネはできない。


 しかし、どうしても腑に落ちない点がある。


 ……親友だったよな?


 正体が一切バレる気配がないのだ。


 そりゃ確かに容姿は変貌しているが、全然気付く気配がないのは少し傷つく。こっちは顔を見たら一瞬でわかったのに。


 俺の存在など頭から抹消したとでも言うのか?


 それなら都合はいいのだが、存在を抹消されるのは気分が悪い。


「けど、魔法ってホントに怖いよね。隣のクラスでは制御を失敗して暴走させた生徒がいたみたいだよ。幸い、ケガはしなかったみたいだけどね」

「……」

「僕等も気を付けないとね。まあ、中館君には関係ないだろうけど。そういえば前に話したあの本だけど、続きが――」


 秋人は様々な話を振ってくる。


 学園の話だったり、人気ドラマだったり、本の話題だったりと様々だ。いつものように適当に相槌を打つ。


 話を適当に受け流しつつ、クラスメイトの様子を見る。この時期になると教室ではすっかりグループが形成されている。


 視線は自然と幼馴染達に向かう。


 冬樹はクラスの男子と野球について話をしている。夏美はギャル仲間達とファッションについて話している。春香は様々な人に話しかけられ笑顔で対応している。


 秋人の仲良くない発言から連中の関係を見ていたが、あれは真実だったらしい。


 どこかギクシャクしているのだ。


 クラスメイト達からすれば仲良しに映るんだろうが、本当に仲の良かった頃を知っているので違和感に気付く。


 何となくお互いを避けている。顔を合わせれば挨拶はするし、たまにお喋りもする。それでもどこか昔とは違っていた。


 入学直後に春香が魔力測定で注目されていた時、夏美は舌打ちをしていた。あの時は話を無視した俺に対してと思ったが、今にして思えば春香に対して行っていたのかもしれない。


「――そういえば、もうすぐ中間試験が始まるね」


 ふと、秋人が興味をそそる話題を振ってきた。


 魔法学園にも中間試験はある。


 試験内容は魔法学と魔法実技だ。


 魔法学は魔法の歴史だったり、魔導具の取り扱いだったり、魔法に関する単語だったり、そういったものばかりだ。入学して間もないので範囲は狭い。簡単に覚えられるので多くの生徒が高得点を取るだろう。


 実技のほうは名前の通り魔法を実際に使用する。


 形式は知らないが、どうせ審査会みたいに一人ずつ行うのだろう。こちらには魔導具があるし、担任が味方なので忖度してくれるはずだ。


「中館君は余裕?」

「当然だ」

「まあそうだよね。僕も足を引っ張らないように頑張るから、よろしくね」

「……?」


 足を引っ張らないように?


「待て、それはどういう意味だ」

「テストの形式だよ。僕も友達から聞いたんだけど、実技の中間試験は魔法対決らしいよ。生徒同士が二人組になって戦うんだ。ちなみに、その友達はお兄さんが魔法使いなんだ。この試験は伝統みたいだね」


 初耳だった。


 耳を澄ましてみればクラスメイト達がその話題をしていた。すでに知れ渡った情報らしく、早くも作戦会議をしている奴等がいた。俺は秋人以外と喋らないので情報が入ってこなかった。


「ま、待てっ。まだおまえと組むって決まってはないだろ。先生がペアを決める可能性もあるはずだっ」

「好きな生徒同士で組むらしいよ」


 マジかよ。


 他の連中とは壁がある。秋人と組む以外に選択肢はない。


 見学で済むか?


 さすがにそれは無理だろうな。とはいえ、二人組で戦うとか予想外すぎる。これは校長に相談してみるべきだろう。

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