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25.ライバルか?

「み、都ちゃん・・・」


和人は目を丸めて都を見た。

一緒にカウンターの下に屈んでいた女子も、驚いた様子で立ち上がった。


「・・・何してたの・・・?」


都の小さいが恐ろしく低い声に、和人は言葉を詰まらせた。

隣の女子には都の声は聞こえなかったようだ。少し不思議そうに都を見た。


「あの・・・、どうしたんですか? 津田先輩・・・?」


女子はどう見ても本を借りに来たわけではなさそうな都と和人を交互に見た。

そして、和人のすぐ傍に立つと腕のシャツをチョイと引っ張った。


それが都の逆鱗に触れた。

思わずキッと女子を睨んでしまった。

だが、それは逆効果だった。

彼女はそんな都に驚き、しがみ付くように和人の後ろに隠れた。

その態度は、ますます都を怒らせた。


「ちょっと! 何して・・・、んぐっ・・・」


都は突然後ろから伸びてきた手に口を塞がれた。


「都、ここ図書室。お静かに」


「さ、佐々木さん・・・」


和人は静香の登場に驚きつつも、安堵したように呟いた。


「お久しぶり。和人君。今、何でしゃがんでたの?」


静香は後ろから都の口を塞いだまま、にっこりと笑って和人に尋ねた。


「え・・・? あ、えっと、消しゴムが落ちたから・・・」


「そうよねぇ。物くらい落とすわよねぇ、和人君だって。二人で拾おうとして何が悪いのって話よね?」


都は静香にガッチリホールドされ身動きが取れない。

塞がれた口元から手を退けようともがくものの、静香の方が力は上のようだ。


「お騒がせしてごめんね。すぐ退散するわ。またね、和人君」


静香は笑顔のまま、都を引きずるようにして図書室から抜け出した。

それと同時に、別の入り口から高田が図書室に入ってきた。

そして、いつもの定位置、都の特等席の隣に座り、勉強を始めた。





「何なの?! 何なの?! あの女!!」


帰り道、都は怒り心頭でドスドス歩きながら、静香相手に喚いた。


「何、和人君にしがみ付いてるの!? あり得ないんだけどっ!!」


「都が無駄に睨むからよ。ありゃ、怖いわ」


「だからって、馴れ馴れしいわよ!」


「うーん、確かにねぇ・・・」


静香はさっきの女子の態度を思い返した。

確かに不自然なほど和人に寄り添っていた気がする。

和人は意に介していないようだったが、異様なほど楽しそうな女子の顔も気になった。


静香は都を見た。

頬をぷくーっと膨らませながらプンプンと怒っている。


『やっぱり和人君って素敵』


静香はうっとりとした顔でそう言っていた都を思い出し、一つの仮説が浮かんだ。

だが、同時に和人の全体像も目に浮かんだ。

そして、一人眉をひそめた。


(もしかして、都と同じ目を持つ女??)


自分も和人の事は嫌いではないし、友達としては好きな方だ。しかし、どう足掻いても恋愛対象には見ることはできない。

だが、人の好みは人それぞれだ。それを否定するつもりは毛頭ない。


「うーん、考え過ぎか・・・」


「なに? 何か言った? 静香ちゃん」


「ううん、別に。とにかく、図書室は静かにするところなの。それは分かるわね?」


「う~・・・」


急に静香の説教が始まって、都は唸った。


「あんなところで騒がれちゃ大迷惑なの。特に誰が一番迷惑被ると思う?」


「・・・和人君・・・」


「そ」


静香の容赦ない説教に都は俯いた。返す言葉がない。

だが、さっきの女の和人への態度を思い起こすと、腸が煮えくり返る。


しかも、あの女は都が持っていない和人お揃いの物を持っている。

都には絶対に手に入らない和人とのお揃い。


—――特進科のネクタイ。


冷静に考えれば、特進科の全員が同じネクタイなのだから、その人たちはみんな和人とお揃いになる。なにも彼女だけではない。


だが、今の都は冷静さを欠いていた。

図書室で仲良く並んで座って、楽しそうに笑った顔。

そして、お揃いのネクタイ・・・。


都はバッと静香に振り向いた。


「都、勉強しなきゃ! 静香ちゃん! これから一緒に勉強しよう!」


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