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23.憎き準備委員

今回の準備委員の集まりは顔合わせ程度の意味合いだった。


体育祭の準備はテスト明けから始めるので、軽い説明はあったものの、重要な話は特になかった。

こんなことで集まるなよっ!と思っているのは都だけではなさそうだ。

大半は不満そうな顔をしている。

ただでさえ、雑用係などに押し付けられて不服なのに、体育祭の間近にならなければ、テンションも上がらず、やる気など起きるわけがない。


ブー垂れた面々が並ぶ中、輪をかけて酷い顔をしているのが都だ。

和人を捕まえるチャンスを奪われて、歯ぎしりしていた。


(月曜日は、和人君、塾で早く帰る日なのにぃ!)


一番後ろの席で、幽霊のように両手を前に垂らし、担当教諭を呪っていた。


しかし、相手はお手本のような体育教諭。ノリもよく、おしゃべりも上手。

都のしょぼい呪いなどまったく届かない。いつの間にか、不貞腐れていた生徒たちも笑い顔になっていく。

最後まで、不貞腐れていたのは都だけだった。


(こんなはずじゃなかったのに・・・)


本来なら、準備委員なんて誰がやりたいものか。

金曜日に和人に会いたかったから、しょうがなくなっただけなのに・・・。

それなのに、あの日、会えなかったのだ。

その上、今日も邪魔するなんて。


憎き『準備委員』!


都は自分の浅はかさを棚に上げ、このシステムを恨んだ。





やっと解放された時にはもう遅い。

とうに和人は帰っているはずだ。

都はガックリと肩を落とした。


「途中まで一緒に帰ろう!」


そう言う田中の後を、無気力に付いて行った。


ご機嫌な田中のおしゃべりに、適当に相槌を打って対応していると、調子に乗ってきた田中が、


「ねえ、そこのスタ●に寄らない? 季節限定のやつ、美味しそうだよ?」


とニコニコと笑顔でコーヒーショップを指差した。

都はぼーっとコーヒーショップの可愛らしく彩られた看板を見た。


「・・・都、それ、もう飲んだからいらない・・・」


「え・・・、あ、そうか。じゃあさ」


「ねえ、田中君って、ちゃんと勉強してる?」


都は田中の言葉を遮って尋ねた。


「え?」


「もうすぐテストでしょう?」


「あ、ああ、そうだね、テスト」


「そう、テスト・・・。テストなのよ・・・」


都は看板を見たまま呟いた。


「都、勉強しないと・・・」


「あ! じゃあさ、神津さん、俺と一緒に勉強しない?」


田中はグッドアイデアとばかりに都に提案した。

だが、都の耳にはさっぱり届いていないようだ。

相変わらず、看板を見たまま溜息を付いた。


「都、もう帰って勉強するわ・・・。何をどうすればいいか分からないけど・・・」


「え? だからさ、一緒に・・・」


「田中君も勉強頑張ってね。じゃあね、バイバイ」


都は唖然とする田中を置いて、肩を落としたまま、家に向かって歩き出した。

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