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22.持つべきものは和人君

「静香ちゃん、都と一緒に勉強して!」


「え゛・・・」


昼休みの食堂で都に懇願され、静香はスプーンで口元まで運んだスープをダラダラとこぼした。


「ねえ、お願い! 勉強教えてとは言わないから!」


「当たり前よ!」


「ちゃんと一人で頑張るつもりなの! でも、最初から一人だと何から手を付けていいか分からなくって・・・」


「はあ~・・・」


静香はスプーンを置くと大きく溜息を付いた。

そして和人を呪った。

都が我儘お姫様というのは百も承知しているが、この我儘の面はほとんど和人に任せっきりだった。

和人の手を離れると、こうも手に余るとは・・・。


「・・・和人君。頼むから早くこのお姫様を回収に、いや、迎えに来て・・・」


静香は眉間に手を当てて、小さく呟いた。


「え? 何?」


「ううん。独り言。心の声が漏れちゃっただけ・・・」


「心の声?」


「何でもないわ。はいはい、一緒にお勉強ね、分かったわ。どうせ勉強するのは同じだし、付き合うわよ・・・」


「ありがとう! 静香ちゃん! 持つべきものは友達ね!」


「そうね、持つべきものは和人君(ともだち)ね、都だけじゃなく、私にとっても・・・」


静香はそう言うと、もう一度小さく溜息を付いた。





帰りのホームルームが終わると、都は大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせた。


「静香ちゃん! 都、昇降口で出待ちするわ! じゃあ、明日ね!」


「うん。明日ね。って、いつから一緒に勉強するの?」


「とりあえず今日は無し! 和人君と会う!」


「そ。行ってらっしゃい。ご武運を」


都は静香のエールを背に、教室を出ようとした時、


「あ、神津さん! まって!」


と、誰かから引き留められた。

振り向くと、同じ体育祭の準備委員を勝ち取った田中だった。


「今から準備委員の集まりだよね! 一緒に行こう!」


「え?」


「ああ、そうね。さっきホームルームで先生が言ってたじゃない? 準備委員は集まりがあるって。都、準備委員じゃない」


静香が手鏡を覗き、自分の前髪を直しながら言った。


「え? え? 準備委員?」


「自分で立候補しておいて何言ってんのよ」


「・・・」


目を丸めて静香を見ている都を、田中はニコニコして待っている。


「・・・そうだった・・・、そうだったわ・・・」


都はがっくり肩を落とすと、田中に向き合った。


「場所どこだっけ? 田中君・・・」


「多目的ルームだよ。一緒に行こう!」


「・・・うん」


張り切る田中の後を、都はだらしなく足を引きずりながら付いて行った。


「行ってらっしゃい、ご武運を」


その後ろ姿を静香はひらひらと手を振って見送った。


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