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13.親友に相談

覚悟を決めて都から離れたのに、もう都の事が気になって仕方がない。


(ちゃんと登校したかだけでも確認しよう)


永遠のように長く感じた一時限目が終わると、和人は真っ先に昇降口に向かった。

人気のいない昇降口だが、更に周りに用心して都のクラスの下駄箱に近寄った。

キョロキョロ周りを窺って、誰もいないことを確認すると、急いで都の下駄箱を開けた。


そこには外履きの靴が乱暴に入っていた。


「良かった・・・。ちゃんと登校してる・・・」


ホッと息を吐くと、そっと下駄箱の扉を閉めて、自分の教室に戻っていった。





昼休みの屋上で、静香は都からの報告を聞いて眉をひそめた。


「は? 何を言っているの? 寝ぼけているの? 都ったら」


「本当なの! 静香ちゃん! 都、人生最大のピンチなの!」


「・・・」


静香は眉をひそめたまま、紙パックの野菜ジュースをちゅぅ~と吸った。

反対の手にはカレーパンが握られている。


都は昼食に買ったパンを袋から出すこともせず、夢中で昨日の出来事を話した。


「昨日、屋上で・・・。そう! ここで! ここで言われたの! 許嫁辞めたいって!」


都の目がまた真っ赤になり、今にも涙が溢れそうになった。

それを見ても、静香はあまり動じない。

都が涙もろいのはよく知っている。


それ以前に、どうしても都の報告内容が信じられない。


「和人君が、都の許嫁を辞めたいなんてねぇ・・・。西から太陽が昇るほどあり得ないんだけど」


「都だって、信じられないし・・・、信じたくないけどそう言われたの。それに、今日、都のお家まで迎えに来てくれなかったの・・・」


「え? もしかして、今日ギリギリになっちゃったのってそれが理由? 和人君が迎えに来なかったから?」


「・・・和人君が来てくれるかもって、待っていたら遅くなっちゃったの」


「・・・」


静香は目を丸めた。

和人と都が一緒に登校するのは小学生から続く日常だ。

同じく幼馴染の静香はそれをいつも見ていたから知っている。

そして、それは二人の間で絶対に違えてはいけないルールのようなものだったはずだ。


よもや、それを破るとは・・・。

やはり和人は本気なのだろうか?

あれだけ都の事を盲目的に崇拝していた和人が?


「・・・でも、どうしても信じられないんだけど・・・。あの和人君が・・・」


静香は泣きそうな都を見ながら呟いた。

幼い時から二人を見ていた静香が抱いた疑問は、やはり・・・


「都、あなた、何をしでかしちゃったのよ・・・?」


都の両親と同じだった。


「・・・分かんない」


「はあ~・・・」


俯く都に、静香は大きな溜息を付いた。


「だからね、静香ちゃん。都を助けて! 和人君を取り戻したいの。都に協力して!」


都は顔を上げ、懇願するように静香にしがみ付いた。静香は呆れたように都を見ながらも、優しく頷いた。


「そりゃ、喜んで協力するわよ。正直言って、都みたいな我儘お姫様、和人君じゃなきゃ、手に負えないでしょ」


「ひど~い、そんな言い方!」


「協力するって言ってんのよ?」


「う・・・、ありがとう・・・」


都はランチの時に持ち運ぶ小さな可愛い手提げバッグからノートを取り出した。

そしてそれを静香に渡した。


「なに? これ」


静香は受け取り、表紙を見て沈黙した。


『和人君奪還計画』


はあ~と溜息を付きながら、とりあえず開いてみると最初のページに、


①和人君を怒らせてしまった場合の謝罪方法

②和人君の好みの女になるための対策方法

③和人君に好きな人ができた場合の略奪方法

④和人君が生理的に受け付けない女子だった場合の対処方法


と箇条書きで書いてある。

そしてその先のページは・・・。


「白紙だけど?」


怪訝な顔でノートペラペラめくる静香に、


「うん。静香ちゃん、一緒に考えて。都、思い浮かばないの」


都は祈るように両手を組み、縋るような目で見つめた。

静香は再びはぁ~と長い溜息を付くと、ノートを閉じて、


「私の方こそ、心底、和人君には戻ってきてもらいたいわ・・・」


そう呟いた。


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