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1.屋上での告白
「ごめん! 都ちゃん! 僕は君の許嫁を辞めたい!」
高校の屋上で、大好きな許嫁からの告げられた言葉。
都はボーゼンと、目の前で頭を下げている許嫁を見た。
頭が真っ白で言葉が出てこない。
なぜ?なんで?WHY?
親同士が勝手に決めた許嫁。
背も低く、小太りで眼鏡で、決して見栄えが良いとは言えない許嫁。
でも、頭が良くて面倒見が良くて、そしてとても優しい許嫁。
小さいころから、そんな優しい許嫁の和人が大好きだった都は、その言葉がどうしても信じられない。
「本当にごめんね。都ちゃん・・・。僕の両親と都ちゃんのご両親にも、僕からちゃんと話すから・・・」
「・・・なの・・?」
「え?」
「都が嫌いなの・・・?」
「・・・」
「嫌いになったの・・・? それとも、嫌いだったの・・・?」
「・・・ごめん!」
和人は最後に思いきり頭を下げると、ボテボテと大きな体を緩ぶりながら、駆けて行ってしまった。
一人取り残された都は、ヘナヘナっとその場に崩れるようにへたり込んだ。
屋上の風は強い。
ビュォォーと吹きすさぶ風の中、暫く座り込んだまま、ずっと空を見ていた。