第5話
金曜日。私は滅多に来ないデパートに来た。
理由は明日、北の王子さんと会うからおしゃれをしたいと思ったからである。
「・・・どの服が良いのだろう」
いつもはその辺に用意されているマネキンの服を一式購入している。が、今回は自分で選んでみたいと頭を悩ませていた。すると、「何かお探しでしょうか?」と店員が声をかけてくれた。
「その。デートで使える服装を・・・」
「なるほど。「ベースカラー」「アソートカラー」「アクセントカラー」などはお決まりでしょうか?」
「?!」
良く分からない単語が出てきた。
「ベースカラー」はまだ分かるのだが「アソートカラー」「アクセントカラー」って何?どうして、三色も色を選ばないといけないのか理解できない。
「すいません。私、服にそんなに詳しく・・・」
「ベースカラーは白で、それに合わせる感じでお願いします。後は三首を強調出来るのとアクセサーリーは流行りのやつで」
分からないと、私が言う前に窺知が割り込んできた。
・・・窺知?!
「な、なんでここにいるの。学校は?!」
窺知が居る事の驚いている私を無視して、一方的に窺知は会話をしてきた。
「いやー。どんな服でも着ることが出来たらいいって言ってたお姉ちゃんが、服を選んでるなんてねぇー。今回は本気なんだね。なら、弟の僕が精一杯、コーディネートしてあげる」
ニヤニヤと笑みをこちらに向ける窺知。
「・・・ふ、服ぐらい自分で――」
「いい?お姉ちゃん。第一印象は服装なんだよ。お姉ちゃんに少しでもセンスがあったなら良かったんだけど。ないじゃん」
「・・・」
ぐうの音も出なかった。
「そんな服装にセンスの欠片もない、お姉ちゃんを助けようって言ってるんだから、お姉ちゃんは僕に言う事ないの?」
「・・・ぉ願いします」
「よろしい。服を選んだから次は化粧品も見に行くからね」
そのまま窺知に連れまわされる形で数時間もデパートで買い物を行った。
窺知が学校をサボっていた件は、家に帰ってから叱ってやることにした。