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第3話

 【――。来週の土曜日に北の王子さんにお目にかかりたいと存じておりまして―】


 「・・・」


 私は黙って、メールの文を消した。

 いつものメールのやり取りからどうして、こんなにも堅苦しくなるのはおかしい。

 

 「・・・はぁ」


 大きなため息が出てしまう。


 やっぱり、やめとこうかな。

 いや、ここで連絡しないと。もう、後がない。

 

 私は焦っていた。

 夕食後。窺知がお見合いの写真を出してきたのだ。

 

 「お姉ちゃん。僕、気づいたんだ。そんなに仕事が大事なら同じ職種ヒーローの人とお付き合いしてみればいいじゃない」


 「・・・どこから、こんな写真集めたの?」


 「おじいちゃんに頼んだら、すぐに用意してくれたよ」

 

 あのクソジジィ!

 また、余計な事。

 

 「それで、この人とかどう?来週に会う事が・・・」

 

 「絶対に嫌。特にあの人から紹介されるなんて。それなら、《《一生独身でもいい》》!」

 

 「お姉ちゃん」

 

 あっ。と思った時には遅かった。


 「それは、言っちゃいけに事だよ」


 「ごめん。気を付ける」


 窺知は私を諭した後、また、お見合いの話を再開し始めた。

 

 「ほら、この人イケメンでテレビにもよく出てる人だよ」

 

 「窺知。私、来週は・・・人に会いに行くの」

 

 「・・・どうせ、また、フラれて帰って来るでしょ。もう、お見合いで結婚前提に付き合った方が良いじゃない」


 「そ、その人にフラれた時はそうする」


 「ふーん。分かった。じゃあ、その時はこっちで結婚相手を探すからね」


 こうして、私は、まだ会う約束すらしていないのに。彼に会いに行くと言う予定を作ってしまったのだ。

 

 【私たちがメールのやり取りをして、一年が経ちました】

 

 違う。こんな文を送りたいのではない。

 

 必死に考えて、何度も文を書いた。

 考えて考えた末に、出来がった分は。


 【あなたに会いたい】

 

 まるで、胸が締め付けられているくらいに痛い。例えるなら、この前戦ったヘビの怪人に巻き付けられているかと思えるほどに痛い。

 

 「・・・ゴクリ」

 

 送信ボタンに指を向ける。すると、自分の心音が頭に響く様に聞こえてくる。

 

 この文。短すぎない?

 でも、あれこれ考えてごちゃごちゃになるよりも、シンプルに。


 「お姉ちゃん!お風呂ー!早く入ってー!」

 

 「分かったー・・・あ」

 

 窺知に返事して、ついでの様にメッセージを送ってしまった。

 数分後、布団に包って後悔している私に、北の王子さんから返事が返ってきた。

 

 【僕も、会いたいと思ってました】

 

 

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