第1話
「ただいまー」
パン!
家に帰ってきた私に、クラッカーを放って出迎える弟。
「姉ちゃん。誕生日おめでとう!」
「ありがとう」
今日は、私は神崎 麻衣の誕生日なのである。
「お姉ちゃん。いくつになった?」
「・・・28歳」
「うん。そうだね。後二年でアラサーに突入するね。だから、今日こそは良い報告が聞きたいんだけど」
「じ、実は。カフェでお話をしてる時に、仕事の携帯が鳴って・・・」
怪人を倒し、カフェに戻ると。そこに彼の姿はなかった。
一緒に座っていた席には『君とは折り合いが付きそうにない。ごめん。今回の話はなかったことで』とメモが残されていた。
「はぁ。また?!」
弟は呆れながら言う。
「お姉ちゃん。僕、何度も言ってるよね。早く伴侶を見つけろって。偶には仕事より、恋愛を優先してよ。お姉ちゃん一生結婚できなくてもいいの?僕は、お姉ちゃんの将来が心配で仕方ないよ。このままじゃ、天国のお母さんとお父さんにどんな顔をすればいいのやら」
うぐぐ。ボロカスに言われた。
姉である私に対して、容赦ない言葉をぶつけてくる弟の名は、神崎 窺知。現在7歳。
まだ、尻も青いガキの癖に。
「し、仕方ないじゃない。そういう仕事なんだから」
「ふーん。ヒーローだからって言い訳をするんだ」
「そう。私はヒーローだから結婚で出来ないの」
「けど、お母さんはお父さんを見つけて結婚してるよね」
痛い所をつかれた。
そうなのである。お母さんはヒーローで、お父さんは一般人だった。
「窺知の意地悪!バカ、あほ。あんたより優しい人を見つけたら、すぐにこの家を出て行ってやるんだから」
捨て台詞を残して、私は自分の部屋に閉じ籠った。