アイスランド貝
ああ、極寒の、
細胞に死を与える海域のプラクトン達が、
光の届かない仄暗い海底に住む
アイスランド貝を育てる。
ああ、アイスランド貝は、
堆積物の・・
暗黒の盲の世界の泥中のキリストだ!!
ひたすら耐え忍び、
存在する事でしか主張できない
有機の苦しみを体現して何百年も生きる。
その頑なな貝は、
悠久の嵐や石によって削られていき、
無に焦れる。
無機になれば楽だ!!
存在する事は苦痛だ!!
有る事は死に擦られる摩擦なのだ!!
それでも極寒の二枚貝達は、
ひたすら泥中で存在し続ける。
誰かが「石の苦悩」と言ったか?
ああ、だが、石は苦悩しない。
それは、肉として、冷たい凍土の上に
存在しつづける我々の苦痛であり、
十字架は木の肉で作られ、
磔にされたキリストもまた
消費する肉だったのだから。