妹がお味噌汁にお菓子を入れるのをやめさせたい
妹が作る味噌汁の中には必ずお菓子が入っている。
最初はうまい棒だった。
おふが浮いてるのかなと思ったらうまい棒だった。
文句を言いながらも俺はその味噌汁を完食したのだが、妹は次々に色んなお菓子の入った味噌汁を作るようになった。
よっちゃん。
キャベツ太郎。
ポッキー。
茎わかめ。
歌舞伎あげ。
さすがにペロペロキャンディーが味噌汁に突っ込まれていたのを見た時はキレた。
ふざけるなと怒ったら、じゃぁお兄ちゃんが作ってよと。
俺に料理をした経験はない。
だから味噌汁を作れるとは思えなかった。
だが……。
「へぇ、今日はお兄ちゃんが作るんだ」
妹はつまらなそうに両手で頬杖をついて言う。
煮干し、豆腐、わかめ、ネギ、そして味噌。
水を張った鍋に頭とハラワタを取った煮干しを入れ強火で沸かす。
湯気が立ったら弱火にして灰汁を少しずつ取り除き、数分したら煮干しを取り除く。
俺は豆腐を賽の目に切り、別に沸かしたお湯でわかめを茹でる。
ねぎは斜に切ってボールの中へ。
豆腐と茹でたわかめを入れて、火を止めてネギを入れる。
最後に味噌を溶かして……。
「よしっ! できた!」
味見をしたらしっかりと味噌の味がした。
煮干しの出汁もきいていておいしい。
これなら妹も……。
「一味足りないからポテチいれよ!」
「やめろボケええええええええええええええ!」
油断の隙もあったもんじゃない。
妹はポテチを袋ごと入れようとしたのだ。
「いや、おかしいだろ」
「おかしくないよ!」
「まずくなるに決まってる」
「そんなことない!」
なぜか妹はお菓子を入れることにこだわる。
勘弁してほしいのだが……何か理由でも?
「なんでお菓子を入れようとするんだ?
ちゃんとした理由でもあるのか?」
「別に理由なんてないもん!
あっ、お味噌汁がダメならご飯に入れてもいいよね?」
「ダメだ! 他のものも全てだめ!」
「ふぅん……じゃぁ、ご飯は毎回お兄ちゃんが作ってくれるの?」
「……え?」
妹の言葉に言い返せない。
毎回作るつもりはなかったけど……。
「分かった、俺が全部やるからお前は手を出すな!」
「ふぅん……分かった」
彼女はそう言ってにやりと笑う。
妹は俺の作った料理を文句言わずに食べる。
自分で買ったお菓子を味噌汁に入れたりはしない。
けれども……。
「うふふ……」
俺が食事を作る姿を見つめながら、頬杖をついてほほ笑む妹。
食卓にはいつもお菓子が置いてある。