ひうたとゆうこ
街中で騒ぎが・・・
右を向いても左を向いても男女が言い争う大声で埋め尽くされている
この街にいるカップルというカップル全てがだ
「ひうたがいけないのよ!」
「ゆうこが言ったんじゃないか!!」
「あなたがそうしたからでしょ!責任なすりつけないでっ!!」
行こう!
決断員の男2人が、争うカップルの隙間をすり抜けながら急ぎ足で歩く
決断の塔の最上階にあるアレを目指すのだ
果てしなく続くのではないかと思うほどの階段
今にも崩れ落ちそうな梯子
体がギリギリ通るくらいの隙間をぬうように進む
細い鉄骨をバランスとりながら渡る
いったい何処まで登ればあるんだ?「アレ」は。。。
二人のうち一人の男は様々なうんちくを垂れながら
あーだこーだ世間のおかしなところ
自分の主張を言いながら
偉そうに説教じみた台詞を並べる
「俺がこの仕事に就いたのは15年前だ。まさか実行する日が来るとはな。
50年前に設立した会社なのに、今日が初めての仕事さ!先輩たちは仕事をすることなく
退職したんだからな。俺たちが名誉なのか。タダ、くじ運が悪いのか。。。
お前もアレだな、入社して1年で、まさか仕事することになるとはな。めでたいよな」
「ひうた先輩。あんまり喋ると体力消耗しますよ。僕はこの仕事に就いて、なかなか勉強になりましたよ。
決断力を育てる為にね。自分軸で決断する。愛も冷静さも必要ですし、人を切るクールさも。。。
まぁ、切ることが結局は愛に繋がるんっすよね。」
「おい、お前わかってきたなぁ。そうだ。今の世の中、愛が足りてねぇのは確かだな。なんで
「ヤキモチや嫉妬」が生まれるか知ってるか?」
「僕にはちょっと。。。」
「魂で約束した本物のパートナーじゃない者同士がくっついてるからだ。よーく考えてみろ。
全ての人が本物とペアになりゃ、そこには本物の絆と愛があるわけさ。どのペアも本物なら
信じ合えていたら。その人しか目に入らなかったら。嫉妬できるか?」
「目移りすることもないし、信じ合えてるんですもんね。できませんね。」
「今の世界は、そこがチグハグだから。リセットするしかねぇ。本物を見れないヤツたちを」
「ひうた先輩は、本物見えるんっすか?」
「見えているさ!でも名前はアレだけどなぁ。。。
昔はヤンチャもしたけど、今の嫁とは付き合いも長い。本物だと思うぜ。
あ。。。でも心からどうしても拭えない人はいるな。昔の話さ。まったく!なんで
言い争いばっかなんだよな。狂ってる。そして俺らの出番が来ちまった。」
新人決断員は少し矛盾を感じながらも、納得できたような気がした
そして、とうとうアレにたどり着く
「おい、あったぞ!!お前が選択しろ!俺にはできねぇ。」
新人決断員は決断する
剣の先のようなものを決断の水に浸して、決断の鞘に入れるのだ
無言で
だが、しっかり決断した表情でゆっくりと行う
鞘に入れた直後
ベテラン決断員が崩れ落ち
力をなくした体は、梯子の途中に引っ掛かった
新人決断員は
ベテラン決断員がほざいていた台詞を小声で言いながら死体を蹴り落とす
「今の嫁は本物だ。心に拭えない人がいる。か。。。本物じゃなかったようですね。」
塔から降りた街の様子は。。。
至るところで男がたおれこんでいる
女がそれを冷たい目線で眺めている
ひうたがここまで多いのがいけなかったんだ。。。
街は雑音ひとつ無く、シーンとしている。