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新たな大地に花束を  作者: 高速左フック
第二章 ハヤタ学園で何をする?
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第九話

 次の日、ハヤタはげんなりとした雰囲気で自分の机に伏しているのを、パンチが小突いていた。


 「ハヤタ、朝から、機嫌悪いな?」


 「ほっといてくれ…」


 理由は言うまでも無い、ヒルデが同棲するという事だった。


 移り住んだ惑星で、学生身分で、しかも女性と同棲。


 ハヤタには簡単にキャパをオーバーして、机に伏していた。


 「なんだ、保健室行くか?」


 「いや、そこまで気分が悪いというワケじゃないよ…」


 言えばさらに騒ぎになるのが目に見えていたので、悪循環である。


 そんな中、声を掛けられた。


 「おーい、ハヤター」


 「……」


 「あ、おい、リッカが呼んでるぞ?」


 「……」


 「おう、パンチ。


 何だ、ハヤタのヤツ、寝てるのか?」


 「うんにゃ、寝てないと思うぞ?」


 「せっかく、いい話があるのに、なあ?」


 「ハヤタ様、起きてください」


 聞き慣れた声にハヤタが身を起こすと、ナタルがVRを『ニコリ』として聞いて来た。


 「朝ごはん、食べました?」


 ハヤタは思わずキョトンとしてしまうが思い出した。


 「ああ、食べた…」


 まず、ご飯は三食、食べる事。


 「約束だからな?」


 「はい、約束です」


 そして、挨拶をする事。


 「おはようございます」


 「はい、おはようです」


 これはナタルと何個か約束していた事である。


 その仕草に周囲は華やかになる。


 これは彼女の育ちの良さから来る雰囲気が、周囲をそうさせたのだろう。


 彼女の外見は、かなり細身で、


 そして、顔は視力を補うVRで隠れているが、入院中に素顔を見たことがあるが、申し分ないほどの可愛い顔立ちをしているのを、思い出しながら少し気になった事があった。


 「そういえば、その機械で見えるとはいえ、良く俺の事がわかったな?」


 「それはハヤタ様の顔を、触らせてもらいましたから」


 当然、周囲がざわつき出したので、


 「ああ~、目が見えなかったよな~!!」


 ハヤタは説明の意味を込めて強めに言う。


 「そうやって触る事で、形やモノを性格に認識するのは、目の見えない人の特化的な情報取得能力だと、ヒルデ女医がおっしゃっていました」


 「へえ、ヒルデがね」


 視力のあるハヤタにはいまいち、理解出来なかったが、それを見てナタルは言った。


 「あ、今、ヒルデ女医を呼び捨てにしましたね?」


 ハヤタは『あ、悪い』と言おうとしたが、ナタルの言葉には続きがあった。


 「やはり、同棲をしてますと、仲良くなるというのは本当なのでございますね?」


 ハヤタだけじゃなく、周囲が凍り付いた。


 「……」


 集まる視線、実際には、氷点下くらいまで凍ったのではないのだろうか?


 「ナ、ナンデシッテイルノデスカ?」


 そんな氷河期を気にする事無く、ナタルはにこやかに答えた。


 「ヒルデ女医から聞きました」


 「ど、ど、どうやって…」


 「お電話です」


 そこでようやくハヤタは合点がいく。


 「そ、そういえば連絡を取り合ってるって、聞いてたな…」


 だが、時はもう遅く、周囲は『ひそひそ』と陰口をささやき出されている始末であった。


 そんな中をナタルは気にする様子もなくニコニコしていたので、ハヤタはふと気づいた。


 間違いなく、ナタルはかなりの『天然』だという事に。


 「いや、そんなの入院中、感じていたけどさ」


 「?」


 そう自分の中で解決させて、ハヤタは改めて聞いた。


 「それで、こんなトコまで何の用だ?」


 「ご昼食、一緒しませんか?」


 「別に良いけどよ…」


 そんな会話だけをしていると、あっという間に昼休憩になったのだが、ハヤタは自分が何を承諾したのか、今更、気がついた。


 「全く、どっちが天然だか…」


 ハヤタは二級劣等種、ナタルは一級劣等種だった。


 それは授業を受けるのも別教室で、つまり、昼食を取るのも当然、別なのだ。

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