第八十八話
ハヤタは目の前に広がる光景に身体が強張っていた。
「そ、そうか、電気がないから…」
夜道に気をつけろ。
なんてのは、どこでも聞いた事のある話で、初めての習い事で夜遅くなり、地元の帰り道を歩いた時、見慣れた道なのに、街灯がついてないだけで怖い思いをしたことはないだろうか?
『ひゃあああ‼』と作者の叫び声が聞こえてきそうなくらい、一つも街灯がついてない、そこは真っ暗闇。
ハヤタはひとり言を言わないと落ち着かないでいる。
「うわ、怖…」
暗いだけじゃない、さっきからハヤタしか、物音を立ててないのが怖さを助長していた。
「灯りくらい、つけててくれよ…」
救いといえば、地元なだけだった。
何とか自分のアパートに向かおうとするのだが、ハヤタの足が止まったのは。
集会所だけが、電気がついていた事だ。
華やかとまではいかないが、うっすらと鈍い光が灯っているので、不気味さがあった。
その時、彼の耳が音を拾った。
「え、誰かいるのか?」
遠目だが、こっちに走ってくる音だけが、わかるが…。
この音が、実に怖い。
こうなると自分の身が怖くなり、人の敷地内だが構うことなく垣根に身を隠す。
不法侵入なんて、いってられない。
「やべえ、やべえ、やべえ…」
と、一目散に駆け抜ける、人影が叫んできたと思ったが…。
数名の巨人が、その人を追っかけて捕まえていた。
「やめろっ、やめてくれ~‼」
異星人が叫んで抵抗しているが、3メートルほどの体格の人物が、数名、追っていると考えてほしい。
捕まえた巨人は、声で女性だとわかるが、その捕まえてる様子は怖いだけだった。
「え、何、何だ…」
ハヤタは状況を知ろうと身を乗り出すが、
その姿が災いする。
「あれ、いま、そこで何か動かなかったか?」
女性の声にハヤタは、身を隠してやり過ごそうとする。
ほんの少し、別に悪いことしてないのだから、堂々としてればいいと思いもするが…。
「このまま、男どもは連れてけ…」
声でリッカだと気付いたが、身を隠したハヤタを、
「お、見つけた…」
3メートル越えの身長の、人影の探し方はハヤタが思っている以上に、探しやすいらしい。
軽々と垣根をのぞき込む様は恐怖で、ハヤタは身の危険を感じて、走り出した。
「あ、ハヤタ、逃げたぞ‼
追え、捕まえろ、逃がすな‼」
リッカの発言は、多分『捕まえる』という意味合いだけなのは理解して、ハヤタは駆けだして逃げる。
「おい、こっちだ‼」
声に招かれたまま逃げたハヤタを倒れこませ、身体を伏せさせた。
「息をするな、じっとしてろ‼」
きつい口調だが、助けようとするのがわかったので、素直に従う。
リッカの他二名の巨人が走り去るのをみて、その人物がチックだと確認できた。
「お前、ハヤタじゃないか、何やってんだよ?」
「そんなの俺のセリフだよ
これは何なんだ?」
「あん?
見てわかんねえのかよ?」
「わかんねえよ」
チックは手で制して、ハヤタを黙らせる。
「てめえら、放せっ‼
ぐおぉらぁ‼」
ブブカまで捕まっている。
「このブタが、観念するんだね‼」
さすがにブブカは巨人に怯むことなく振り払っているが、リッカの母親であるレイカは、ブブカを防犯器具を使い、取り押さえられていた。
「一体、なんなんだよ?
どうして、ブブカさんまで捕まってんだ?」
チックは声を殺しながら慎重に答えた。
「防犯のためだ。
こんなに暗いから、ヤバいヤツだって、出てくるだろ?」
チックはクオウから聞いてないのかと、聞いてきた。
「聞いてないよ。
ただ、早く帰れって…」
その一言が、暗くなるから『早く帰れ』と言ったわけじゃないのに気づき、
「あんの、オオカミっ!!」
ハヤタはさすがにクオウを恨んだ。
「なあ、別に悪いことをしてないから、事情説明したら見逃してくれるんじゃないか…?」
当然の疑問をチックに聞こうとするのだが…。
「優しく連行されるだけだぞ?」
「ああ、その一言で、無駄だとわかった。
あの集会所で、集められるのをなんとなく察したけどさ。
てか、何やらされんの?」
「そりゃ、お前、想像してみろよ?」
チックが半ばあきれ気味にいうので、ハヤタも少しは想像を働かせる。
男が女を連れ去った場合である…。
「…まあ、男だからな」
という、年相応の想像をして、女が男を連れ去る場合を想像する。
「おうっ」
「…なんでお前が、尻を抑えたの知らんが、お前がロクな事考えているのだけはわかる」
「何だよ、わかんないなら、親に聞けよ?」
「聞けるか!?」
年相応の男の会話なんて、どの惑星でも、そんなもんである。
「つまり、ロクな目に合わないのだけはわかるな?」
ハヤタは、静かに頷く。




