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新たな大地に花束を  作者: 高速左フック
第八章 ハヤタ、未熟である
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第八十二話

 「ルミナス・グループの足元には及びませんが、我が社の品質管理部門の味覚担当も連れてきましたので、どうぞお役立てください」


 レンはクオウに目を細めるが表情で『すまん』と会釈をする。


 彼も予想してなかった事だったのだろう。


 当然、この幹部は先頭を譲る気もないのも見ても分かるので、とりあえずスープを提供する。


 「うまい、さすがグループの総帥様が作るスープだ」


 そして、担当たちも舌つづみをうつ。


 「このような非の打ちどころのないスープは、はじめてです。


 いや~、


 諸君、感謝して味わいたまえ」


 おだてにおだて、偉そうに指示を出すので、クオウとレンは顔を見合わせていた。


 しかし、位置的な関係でクオウがスープをひとすくい、味わうと顔をしかめた。


 「なあ、レンよ。


 このスープ、ハヤタの作ったスープより薄くないか?」


 素直に、そう聞いてきたので、幹部のリオリは顔面蒼白になった。


 「な、何をいってるんだ。


 レン様、すみませ~ん」


 リオリは慌ててクネクネと取り繕うが、レンは静かに、頷いた。


 「ふむ、クオウさん、貴方は…」


 幹部らを粛々とさせて、クオウに言った。


 「自分の味覚に自信を持っていいですよ」


 「えっ?」


 これに驚くのはリオリだが、レンは感心する。


 「最新機材で調理を行った事が原因なんです。


 彼は、このスープを作るのに、四時間以上煮込んでました。


 私もそうするべきなのでしょうが、時間もなく短時間で用意するとなると…。


 腕によりをかけても、ここまでなのです」


 「なるほど、手作業で育てた野菜と、機械任せで作りあげた野菜の違いみたいなモンか…」


 「そう想像してもらえれば幸いです」


 「おいしいモノを提供するのが、目的じゃないからな。


 まあ、良いんじゃないのか?」


 クオウは納得する事で、リオリを黙らせ、オオカミ男、全員に聞こえるように話した。


 「これはハヤタの作った事のあるスープを真似たモンだ。


 俺はそこまで思い出せん。


 だが、多分、どこかでアイツが作ったスープなんだ。


 みんな、思い出せるヤツがいるなら、言って来い」


 そうして昼食では試飲会がはじまると、


 「多分、あのスープの事なんじゃないか?」


 と話をするのは、ハヤタと同じ年代の若い世代だった。


 「おい?」


 クオウに呼びつけられるが、その若いオオカミ男は答え難そうにしていた。


 「ちょっと、曖昧すぎて…


 自信が…」


 クオウの威圧感か、自分の弱さか解答に困るが、周囲の『話せ』という空気に結局、押されて話した。


 「誰かのために作ってみたというスープだって、言ってたような気がするんスよね…」


 「なんだと、そんなんあったか?」


 クオウは思い当たる節もないらしいが、


 「ああ、そういえば…。


 ハヤタが部屋に籠ってやってたヤツじゃね?」


 さらに思い出す人も出てくる。


 そして、とうとう…


 「なあ、確かハヤタと同じ惑星のヤツに振る舞いたいって、作ったスープだったんじゃないか?


 ええと、誰だっけな…」


 という意見にナタルが反応した。


 「メッツァさんの事でしょうか?


 確か、ハヤタ様の惑星出身の方でしたよ」


 「ああ、そんなヤツいたな?」


 「とりあえず連絡してみます?」


 そうして、


 「あのメッツァ様、少しお時間を…ええ…」


 連絡を取るナタルを見ていた、レンにも連絡が入った。


 「はい、何でしょうか、おじい様。


 ええっ⁉」


 「どうした?」


 「おじいさまが、近くに来てるようでして…」


 どうやらオージが、彼女の車の前にやって来るらしい。



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