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新たな大地に花束を  作者: 高速左フック
第八章 ハヤタ、未熟である
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第七十七話

 そこは食洗機に入れる行程の前、軽く水洗いなどをするコーナーだった。


 洗う前の食器だから、当然、ソースなりが付いていたが、このソースを…。


 「こうやって、出されたソースの味くらい覚えるのだな」


 オージは、小指に付けて舐めた。

 

 別の皿をハヤタに差し出すので『やってみろ』というのだろう。


 「はあ、失礼します」


 ハヤタは手袋の外して、言われた通りに指ですくって舐めたのを見て、オージは聞いてきた。


 「どうかね?」


 「良いコクがあるソースで、美味いですね」


 「衛生都合上、毎回やれとは言わん。


 だが、ここに勤めに来たのだから、ソースくらい作れるように、こうやって勉強するのだな」


 「そうですか、でも、良いんですか?」


 「何がかね?」


 「こういうのを盗んじゃいけないって話、有名じゃないですか?」


 ハヤタの問いに『なんだ、そんな事か』とオージは言い返す。


 「いいか、別にそれを盗めとは言ってはおらん。


 そこに至る努力くらいしろと言ってるんだ。


 それでキミの方こそ、どうなんだ?」


 この辺りで、周囲が異変に気付きだす。


 「ナノマシンで、成分くらいわかるのだろう?」


 「ええと、魚介類、スーからとった出汁を主成分として、後は隠し味にカリ星の砂糖と、根菜の出汁もありますね?」


 「ふん、これだからナノマシン持ちは気に入らん」


 オージに厳しさがあるが、彼に別格の指導をしてる事に、これにはオリオだけでなく周囲は当然、困惑する。


 「ところでキミは、もう昼は食べたのかね?」


 「いえ、まだですが?」


 「では、今日のまかないは、ワシが作ってやる。


 ここの担当は誰だ?」


 オリオが前に出て、名乗り出る前にオージは言った。


 「この子を借りるぞ?」


 「あ、あの、人員の問題もあるので、そんな事を急に言われましても…」


 「キミの持ち場はインターン生で、補っているのか?」


 そう言われてしまうとオリオは言い返せなくなっていた。


 「では、借りるぞ?」


 と、二人して、昼食をとりに行くので、さらなる混乱を招いていた。


 「え、なに、なんなの…?」


 オリオの問いに、誰も答える事はなく。


 そして、その混乱は昼食が終わって、さらに深くなる。


 「おじい様がいらっしゃると思って来てみれば、ハヤタ君も来ているとは…」


 ルミナス・グループの総帥、レンがやって来て、さらにハヤタと知り合いと来たのだ。


 「なんじゃ、二人とも、知っておったのか?」


 「まあ、色々ありまして…」


 「ハヤタ君、ここにやって来て、スパイにでもやって来たのかな?」


 「インターンですよ」


 こんな談笑する三人を、見たのだから無理もない。


 「なんなんだ、アイツ?」


 彼の、その混乱は終業まで続いてしまい。


 オリオは改めて、ハヤタの履歴をにらみ付けていた。

 

 「コバヤシ・ハヤタ、何かの御曹司か、それとも上客か?」


 そう勘ぐりつけて、提出されたデータを眺めるが、そこに掲載された彼のデータは…。


 「…誕生日、惑星、絶滅のため抹消の二級劣等種。


 来歴、ウルフィ・オ・ファームの農作物課に在籍。


 同年、在学のために週末労働に…」


 オリオの『知りたい事は、そこじゃない』とイライラして、ハヤタの履歴の映像を見れば見るが…。


 「ナノマシン・エキスパンション、料理…」


 何の変哲もない、履歴書である。


 「何なんだ、アイツ…」


 憎しみがこもっているのも無理もない。


 彼にはルミナスグループ、料理人の幹部候補として努力と誇りがあった。


 当然、あのオージから、厳しい指導も受けた事もある。


 そんな下地から培った、今の地位だった。


 だからこそ、見下し、悪態でもあった。


 「それなのに…」


 彼には、憧れているものもある。


 「レン様…」


 美貌だけでなく厳しい姿勢、努力と才能を惜しまぬ姿を知っているからこそ。


 その憧れた女性が…。


 『ふむ、それなら私が、指導しても良いかな?』


 嬉々として、明らかに好意を寄せて、ハヤタに話し掛けていたのを思い出し。


 「アイツは、ナノマシン頼りなんだぞっ!?


 あんなヤツに~!?」


 あっという間に、追い抜かれた気分が憎しみに拍車を掛けたのか、机を叩いた。


 まあ、ようするに嫉妬である。


 数個の物が落ちたので、ようやく冷静になれたがそれを拾う際に、カレンダーが目に止まった。


 「そうか、これを利用すれば…」


 そして、さらに翌日である。


 「おはよう、ハヤタ君!!」


 明るい様子のオリオに、ハヤタは引いて見せたのは言うまでもない。


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