第七十五話
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その上司の様子がクオウには面白かったので、ニタニタと笑みを浮かべていると、レンは話した。
「とりあえず、今回はビジネスの話をするつもりはないんだ。
こちらとしても、ただ単純に話を伺いたかっただけで…。
だけど、ここまで騒がしくしてしまって、申し訳ない」
丁寧にレンの方から謝罪をするので、上司たちは事を見守る事しか出来なくなる。
「ま、まあ、お話があるのでしたら、ごゆっくりしていってください」
ペコペコと頭を下げながら、クオウを通り過ぎざまに、
「クオウ君、決して失礼のないようにねっ?」
釘を刺して、退室していった。
ドアが閉まり、ナタルを加えた三人が応接室に残った。
ナタルのVRは何を解析しているのだろうと、微かに音を聞こえるのを感じる中、クオウが聞いてきた。
「んで、俺に何の用だい?」
その時、ナタルは湯飲みを用意して、お茶を三人分用意してくれたので、二人は礼を言って、レンが容器を取りだし中身を見せた。
「これを見てもらいたい」
「なんだ、コレ?」
白くブヨブヨとしたゼリーのような物体に、クオウは当然の反応を見せた。
「これは、スライム…でございますか?」
「ああ、そんなんあったな…」
「クオウ様も遊んだ事がございますか?
「俺らは、毛だらけだからよ。
まとわりついて、何が楽しいのかが、わからんかったけど。
ガキの頃は楽しかったな。
やっぱ、どこでもやった事があるんだな?」
二人して会話が、盛り上がろうとするのでレンは、
「あの、話を戻して、構わないだろうか?」
容器にスイッチを入れていると、クオウは聞いてきた。
「その白スライムと、ハヤタに何の関係があるんだ?」
「そうですね、少し事の始まりを説明しましょう」
……。
ーキミ達の中には定職に付いている者もいるだろう。
ーだが、他の職業を経験するのは大事な事です。
ーキミ達は学生なのだから、その若さを生かして、様々な経験をしてほしい。
そう学校で統括を受けたハヤタに、パンチは聞いてきた。
「おい、ハヤタはどんな職業を選んだよ?」
「俺は、そうだな。
このホテルのキッチンスタッフをやってみようと思ってな」
「へえ、何で?」
「単純にナノマシンを生かした仕事っていうのを、試してみたくなったんだ」
そうして、ハヤタのインターンが始まったのだが。
「よっと…」
ハヤタはキッチンスタッフという役割は、皿洗いだった。
「おい、そこのインターン生、この食器、全部、頼むぞ!!」
一通り洗い終えたと思えば、さらに使用済みの食器のラックに運ばれてくる。
その大量の食器を、そこにいる数名の従業員と一緒に洗うという作業をしていた。
さすがに学生身分のホテルのキッチンスタッフというのは、仕事はここまでしかさせられないという事なのだろう。
「あ、そういえば、ルミナス・グループって…」
そして、かつてレンがまとめている経営グループを思い出したのも、その辺りだった…。
「ハヤタ君と言ったね。
どうかね、仕事の調子は?」
担当のシェフ、オリオが声を掛けてきた。
「ええ、まあ…どうにかやってます…」
ハヤタは、働き初日の、妥当な言い返しをしていると。
「皿洗いなんてアルバイトがするような、仕事かもしれないけど、これも立派な仕事だからね。
しっかり頼むよ?」
そう言われ、周囲を眺め終えて、オリオは思い出したように聞いてきた。
「ああ、そうそう、そろそろ昼食時間だけど、案内は…」
「されてます」
「あっ、それはよかった。
なら、周りの人と相談して、個々で行ってくれたまえ」
そう言って、担当のシェフは出て行き、ハヤタも時間なので、昼食を取ることにする。
しかし、こういう時に限って、
「あのオレオさん、インターン生どうなんですか?」
「はっきり言って、勘弁してほしいよ」
「幹部候補のオレオさんが、そんな事をいうくらい、役に立たないんですか?」
「そうじゃない、ただでさえ忙しいのに、普通科の人間をインターンで取るなって話だよ。
料理学校の専門的な知識、技術を持った生徒とは段違いなんだ。
ナノマシンで料理をエキスパしてるか知らんが、その程度で、我がルミナスグループの厨房に立てると思い込んでいるんでそうなヤツなんざ、皿洗いでもさせるしかないだろう?」
「困ったモンですね。
でも確かに、それで料理人になれるなんて、甘い考えですよ」
自分の事を言われているのがわかるような会話の内容に、ハヤタは思わず息を潜めてしまうので、オリオは気づかずに会話を続けた。
「まあ、そんなの明日になれば、思い知る事になるじゃないのか?」
「明日ですか…ああ、そういえば…」
「そこで、あのインターンに嫌味の一つも言ってやろうと思ってんだよ。
料理人、甘く見んなって感じでな」
「あっ、それ、良いですね?」
これか彼のホントの性格なのだろう。
そういうやり取りを、ハヤタは聞き終えて、気づかれてしまうのだから、
「あ…」
双方、実にバツが悪くなっていた。
「あ、ああ、ハヤタ君、調子は~どうかな~?」
対応に困っていると、担当シェフの方が先に動いた。
「ま、まあ、ここは厨房だから、ここにある材料を使って、次からは、まかないを作っても大丈夫だからね」
逃げる口実を作ったのだろう。
二人して、そそくさと出て行ってしまった。
ハヤタは思わず、ため息を付いてしまうが、別にハヤタは怒ってはいなかった。
むしろハヤタは気にしていたのは、
「明日か…」
だったので、次の日、オレオに聞いてみた。
「あの、今日、何があるんですか?」
「キミ、嫌味かね?」




