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新たな大地に花束を  作者: 高速左フック
第八章 ハヤタ、同郷に驚く
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第七十二話

 「うん、ユニホーム、貸してくれて、ありがとう。


 動きやすいよ」


 メッツァはドロスに感謝を伝えて、ハヤタに向き直って言った。


 「いいかい、ハヤタ君。


 作戦は、簡単だ。


 僕がドリブルで切り抜けて、ハヤタ君が、パスに対応してほしい」


 シンプルな作戦だが、ハヤタは自信がないのは当然だった。


 いつのワールドカップだろうか、映像に出てた。


 あのメッツァが、同じグラウンドでサッカーをしようというのだから、この独特な空気にハヤタは緊張してしまう。


 その様子を察したのか、メッツァは軽く肩を叩いて話しかけてきた。


 「大丈夫、君のマークはココネ君が、担当する事になると思う。


 何とか切り返すなりして、振り切って、対応してほしい。


 僕もチャンスがあれば、突破して狙うから…。


 って、こんなので緊張がほぐれたら、楽な話だよね」


 『とにかく、動いて、動いて』とメッツァは明るくテンションを上げていると、試合開始となり、ホイッスルが鳴る。


 サッカーとは違う競技ではあるが、最初はメッツァのパスから始まり、それをハヤタが返す。


 先ほどの読み通り、ココネがハヤタのマークに付いて、彼のパスコースを塞ぐのをハヤタを見ていると、


 「メッツァさん?」


 メッツァは、少し空を眺めて止まっていた。


 動かないドロスが、静かに近づくのをメッツァは見て、


 「大丈夫だよ」


 彼が、呟くと。


 「あの程度なら、振り切れる」


 そこにデイビッド・メッツァはいた。


 彼の得意とするのは、フリーキックと…。



 「いきなり!?」



 その突破力。


 切り返しだけで軽々とドロスを振り切って、直接、狙ってきた。


 幸いボールはキーパーに弾かれ、ドロスの足元に転がって行く。


 その一瞬の出来事に、キーパーだけじゃなく、ココネやドロスも目を見合わせていた。


 「うん、まだまだ、身体がなまってるようだね…」


 ボールを寄越すようにと、メッツァが態度で示すのは、これが特別なルールだからだった。


 「すごい…」


 改めて元のポジションに戻る際、ハヤタのマークに付いていたココネがそう答え、見学していたメンバーもざわつき出す。


 「おい、次が来る。


 油断するな!」


 ドロスに至っては、表情から余裕が消えて、ココネに檄が飛ぶ、それだけレベルが高かった。


 ただ、余裕がある事と言えば…。


 「あ…」


 ハヤタだった。


 「うおっ」


 メッツァのパスにも、走り込んで追いつく…事が出来てないなどの、技術の無さが浮き彫りである。


 それは常にやってる人間と、授業程度にサッカーをやる人間の差だった。


 「すんません…」


 おかげでハヤタは、謝るしかない。


 だが、


 「いや、もう少しだったね。


 惜しかった」


 メッツァは笑顔で『構わないよ』という態度を見せる。


 「もう少し、後ろで出そうか?」


 彼はそんなつもりはないかもしれないが、気を使われてる感がハンパがない。


 なので、ハヤタはこう答える。


 「いや、追いつきます」


 ていうか、そう言うしかない。 


 そんな状況が、20分ほどだろうか続いていると、


 ハヤタは、


 「……」 


 バテた。


 「大丈夫かい?」


 さすがにタイムとジェスチャーをしたメッツァは、ぶっ倒れたハヤタに声を掛けた。


 「ど、どおりで…」


 ハヤタは、息を切らせながら答えた。


 「フォワード、ディフェンスとか、三つのラインに、区切られてるワケだわ。


 こんな走りっぱなし、だと、体力が持たないな」


 「別にみんな、そのポジションの役目がなかったら、休んでるワケじゃないんだけどね?」


 「そもそも、こちらはボールは友達というわけじゃないので…。


 すいません、足を引っ張って…」


 ようやく息が整ったハヤタを、引き起こすメッツァは、汗はかいているものの、体力に余裕があるのをみてとれた。


 「先に無茶を言ったのは、僕なんだ、気にはしていないよ。


 言っておくけど、僕は、どちらかといえば…。


 こっち側なんだけど?」


 メッツァは、手を合わせて『破~』と構えて見せるので。


 「破~」


 ハヤタも返して見せて、


 「…あああ~」


 お互いのせめぎ合いに。


 「4倍だ~!!」


 メッツァを吹っ飛ばして見せる。


 「あのハヤタ様、お二人とも何をやっているのでございましょうか?」


 水を持って来たナタルが、そんな質問を投げかけるが、この激闘は、二人にしかわからないだろう。


 しかし、やはり恥ずかしくなった。


 「と、ところでメッツァさん。


 なんで、こんな勝負をするなんて、言ったんですか?」


 「え、ああ、うん?」


 「いえ、昨日、あんなに断ってたのに、やっぱり、うって変わってるじゃないですか?」


 「ああ…」


 誤魔化しながら、そう聞いてくるハヤタにメッツァは答えた。


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