第七十一話
デイビッド・メッツァー。
ハヤタのいた地球にて、サッカーをしてるモノなら、知らない人はいない。
卓越したドリブル技術はさることながら、彼の代名詞といえば…。
そのフリーキックである。
敵から、
「芸術的を超えている。
あんな、キックをされたら誰も止められない。
まさに、あれは…」
『奇跡の左』と言われ、ハヤタのような『にわか』にも、認知されてるほどの選手である。
「その奇跡の左を、見せたら…。
こうなったと?」
ハヤタは昨日のフリーキック設備を思い出しながら、そんな有名選手に何とも言えないような表情をしていた。
「うん、僕の国では、祝福された左足と呼ばれていたね?」
この時、ハヤタにしても内緒話までとはではいかないが、小声で話をしていた。
しかし、二人は相手が異星人だという事は侮っていた。
「なんと、そのような異名で呼ばれている方とは‼」
男子グロスタのキャプテン、名前はドロスというらしい。
この男は、とても耳が良かった。
「お願いします。
競技が違っても、あのキックは、セットプレイの重要性を全てを表しています。
どうかご教授のほどを…」
そう言って、再度、ドロスは頭を下げるので、メッツァはハヤタを見て肩をすくめて答えた。
「なら、少し勝負してみないかい?」
「おお、それで私が勝ったら、引き受けてくれると?」
するとメッツァは、手で制して答えた。
「勝手に話を進めないでほしいね。
僕としても、考えてみたいんだ…。
キミのグロスタを通してね?」
ハヤタは昨日は断るような態度をとっていたメッツァが、昨日の今日で態度を変えたのを感じ取れたので、気にはなりもしたがメッツァは続けた。
「勝負は二対二、こっちは攻める側。
キミたちは二人とキーパーで守る」
「なるほど、では…」
ドロスは一緒に参加してくれる人を探そうとするが、メッツァーは止めた。
「キミとココネ君で、やるんだ」
「えっ、私ですか?」
それにはココネも驚いたが、
「なるほど、守り側が有利と知っているからこその、ハンデという事ですか?」
ドロスの辛らつな指摘に、ココネはうつむいてしまうが、
「どうとでも…」
メッツァーは静かに答えるだけだったので、ドロスは聞いてきた。
「では、そちらのもう一人は…?」
この時、ハヤタは『すごく』嫌な予感はしていたのは。
じっと見つめるメッツァが、原因なのが言うまでもない。
「ここにいる、彼が僕のパートナーだよ」
「やっぱ、そうなるか~」
こうして、ハヤタはメッツァとグロスタをする事になった。
そして、
「あ、オフサイドあるんだ…」
「あとフリーキックとか、この辺り、普通のサッカーと変わりないみたいだよ?」
グロスタのルールを、アップがてら閲覧しているハヤタに、ナタルは不思議そうに聞いてきた。
「あのハヤタ様、やった事があるのでございますか?
そのグロスタ、でなくて…。
ええと…」
「サッカーな。
そりゃ、やった事があるよ」
その回答に、ミスティは驚いた。
「あのハヤタ様、デュエルも嗜んでますのに、その競技もやってますの?」
「何も、おかしい事でもないと思うよ。
どうして、そんな事を聞いてくるんだい?」
そう答えたメッツァは不思議そうに二人を見るが、ハヤタが気づいた。
「あっ、体育の授業の事か。
そういえば、そこから説明しないといけないよな」
「どういう事だい?」
「この学校でも、色んな星の人が学校にいるという事は、体育の授業から違ってくるんですよ?」
ハヤタはメッツァに、ナタルとリッカを指しながらつづけた。
「例えば、同じ女子の体育の授業でも、これだけ体格差があるとどんなスポーツでも、有利、不利がが出てくるじゃないですか?」
「何だ、ハヤタ、アタシを馬鹿にしてるのか?」
だが、女子であれ、3メートルの身長のそれなりの体格をしているリッカが、ハヤタに睨みを効せてくると、見慣れたハヤタでも怯んでしまうが、これが答えでだろう。
「いちいち、突っかかって来んなよ。
でも、体格やら、腕力が違うワケなんだから。
ナタルと遠投勝負をしたら、絶対、リッカは勝てるだろ?」
「まあ、お前らには負ける気はしねえな?」
「だから、そうなってしまってるから、体育という授業にスポーツはないんですよ」
メッツァは合点がいくが、当然、こんな質問が来る。
「じゃあ、体育の時間は何をしてるんだい?」
「例えば、50M走の走り込みとか、スポーツテストに対する授業になるんですよ」
「サッカーとか、他の競技とかやらないの?」
「やらないですね。
体格別に階級分けされて、テストに向かうって感じなんですよ」
メッツァは感嘆したようすで頷くと、ナタルは聞いてきた。
「では、ハヤタ様の惑星では、どのような授業なのですか?」
「だから、サッカーやら、色んな競技をやって、良い動きをするかどうかって評価したりする。
小学校の時なんか、女子も混ざってたな」
「うん、僕の国でも、そんな感じだったね?」
この地球人、二人の同意に驚く異星人達ではあるが、ハヤタは続けた。
「当然、学年が上がってくれば、体格も違ってくるから、男女別ってなるけど…。
メッツァさん?」
「なんだい?」
「貴方は良いかもしれませんが、部活動で専門的にやってる連中の中に、俺が参加するのは間違ってると思うんですが?」
これにはメッツァと、反対側にいた耳の良いドロスも吹き出していた。
「やっぱり、そう思う?」
そして、メッツァは、その様子を見つめて言う。
「でも、考えさせてもらうには、コレが一番なんだよ…」
メッツァは視線の先には、ココネがいた。




