第六十九話
「ハヤタ様ー」
ミスティが自分の部活動と眺めているハヤタとナタルを見つけて、彼の様子を見てリッカは言った。
「私たちの部活風景は、どうでございましょう?」
「どうと、言われてもな…」
ハヤタは剣道と似た競技のデュエルで、他の生徒と一緒に打ち込みするベリルを見て、素直に答えた。
「俺らの学校にもあるけど、さすが全国大会出場校だけあるな。
練習の練度が違うという感じだな」
「ハヤタ様、確かに私たちの部活動にもデュエルはございますけど、練度とはどういう事でございましょう?」
「うん、そりゃあ、規模の違いから言ってるのもあるけど。
これだけの人数でこれだけの激しい練習をすれば、怪我をする事が起きるモンなんだよ。
それが起きないというのが、練度が高い証拠なんだ」
そう言われてみて、初めてわかったのか、ナタルは感心したのをみてミスティは、
「ハヤタ様も、ご一緒に練習なさいますか?」
そう誘ってきたが、ハヤタの返答はあっさりしていた。
「競技が違うんだから、参加するのは遠慮しておくよ。
まだ時間はあるんだっけ?」
「はい、本日の交流会まで、2時間あります」
そう言われて、ミスティは『でしたらっ』という雰囲気を『ぐいっ』と出してきたが、
「ま、まあ、外出するにしても、微妙だから、探索でもしとくよ」
ハヤタは逃げるような態度を見せないようにその場を去り、ミスティはため息をついて答えた。
「遠慮なさらなくてもよろしいですのに…」
「ミスティ様、ハヤタ様の言う事も一理あると思いますよ?」
「ナタル様、そうではないのでございますわ。
わが部活動の参加者は、逆に興味があるのですわ」
「逆に興味で、ございますか?」
「このデュエルという競技は、勝つ事も大事でございますわ。
ですが、礼儀作法も重要視されてるのでございますわ」
ミスティは、かつての試合を思い出しながら続けた。
「確かに、あの時の試合は、ルールの誤差もありましたわ。
ですが、その後の態度は、デュエルの礼儀作法そのもの、ですので、皆さまは評価してるのですわ」
ミスティは感心してはいたが、ナタルはハヤタの後ろ姿を見て答えた。
「ですが、ハヤタ様は…」
「そうなのでございます…」
やはり、ハヤタの態度は、ばれていたらしい。
が、
「あら…」
ナタルのVRが、ハヤタの手招きを捉えていた。
「どうしたのでございましょう?」
ミスティとナタルは顔を見合わせ、手招かれるままハヤタの元に駆け寄ると、指を指していた。
「あれ、ちょっと見てくれよ」
女生徒が、男の用務員に膝をついて頭を下げていた。
「土下座、って、あるのか…。
あれ、土下座だよな…?」
一介の女生徒が、そんな事をやってるので、ただ事じゃない事だけが分かる。
なので、ハヤタは緊張しながら近づくと、
「ちょ、ちょっと、すまない、頭を上げてくれ。
そんな事をしてもらっても、こっちが困るよ」
そして、見る限り用務員の男が困惑して、そんな事を言っているので、安心して接する。
「キミ達は…?」
「ええと、今日、こちらの学校の交流会で、招かれた。
シーマラット高等学校の生徒会です」
「ああ、キミたちが、連絡のあった生徒たちか…」
「んで、何かあったんスか…」
改めてハヤタは、このほうきを抱えた用務員の男を見た時、少し黙り込んでしまうが、その様子は女生徒の反応にかき消されてしまう。
「お願いします、私たちのコーチになってください!!」
「だから、僕にそんな技術はないよ。
それで教えるなんて、とんでもないよ」
そう丁寧に断りを入れて、遠くにあるボールを発見した他の生徒に、手を挙げて反応する。
ようするに『こっちに寄越して』というジェスチャーを入れた。
蹴られたボールは、少しズレて向かって来るのだが。
この用務員、軽いリフティングを交えて自分の足元に戻していた。
それを見た、女生徒はさらにテンションが上がって話し始めた。
「そのような、高等技術を持っていらっしゃるのに、謙遜はよしてください」
「ちょっと、ココネさん、落ち着きなさい」
さすがにミスティも、その女生徒、ココネをなだめるが。
「デイビッド・メッツァー!?」
この時、一番、テンションが上がっていたのは、ハヤタだった。
なんと地球ではサッカー、アルゼンチン代表選手が、学校の用務員をやっていたのだ。




