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新たな大地に花束を  作者: 高速左フック
第七章 ハヤタ、悪気ない過ち
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第六十八話


 「頭の悪いヤツらが何かを企むってのは、どっか抜けてるんだろう。


 『スラローム対抗戦を利用して、若いモンを懲らしめようとしている』


 なんて考えなんざ。


 若い連中が、どっからか聞きつけたんだろうな…」


 「それで、アンタはどうするつもりだったのよ?」


 「どうするって。


 俺は、チームキャプテンを務めてるからな。


 若いモンの力をみるのもあったから、参加するつもりだった」


 「『つもり』と言うと、参加しなかったの?」


 「まあ、な…」


 そう言って、クオウは若い連中を見ていた。


 同じような顔のオオカミ男たちは、ミミミ達には見分けがつかない。


 だが、体格が、毛並みがクオウと比べて、一回り小さいのだから『若い』のだろう。


 「ある日、俺ん家に来てな。


 『スラロームを教えてくれ』って、やって来たんだ」


 「その若い人たち全員がですか?」


 クオウが頷くと、ナタルやミミミも、このクオウがハヤタの隣人という事は知っているという事もあり、どういう状況か想像はたやすかったが。


 「でも、スラロームを教えてって、アンタ達がいつもやっている競技なんだから『教えろ』っていうのは、どういうことなのよ?


 喧嘩の仕方でも教えろと、言ってきたの?」


 からかい半分に聞こえたが、クオウは怒る事無く、あきれ混じりに答えた。


 「あのな、俺らはの中にはな。


 体格(がたい)が良くても、殴り合うのを嫌うヤツもいるんだよ。


 こういうヤツも参加するとなってみろ。


 殴り合うのは無理なんて、想像できるだろう。


 アイツらは、どう取っ組み合ったら、上手く対処、防御出来るか教えてくれ…。


 そんな感じで若い連中が、俺に押しかけてきてな」


 「受けたの?」


 「ああ、受けた」


 ミミミは声に出さなかったが、隠しきれない態度をクオウは察して言う。


 「意外な反応だと思うか?


 あの当時、俺らのチームは、実力の限界を感じていた時期でもあったんだ」


 「実力の限界?」


 「ハヤタから、どこまで聞いてるか知らんが、まあ、野蛮なスポーツでもルールはある。


 そうなると、当然…戦術ってのか?


 あのスポーツも、長い年月をやっていると、それが出来上がって必要になってくるんだ…」


 どういう事なのかわからない女性陣に対し、説明がてら、クオウは軽くボールを持ったしぐさを見せて、ミスティの前に立って説明をする。


 「一対一なら、殴り合っても良い…。


 それが野蛮なのはわかる。


 だが、その時、ミミミが割り込んで来た場合…。


 どうなるか…?」


 二人の間に立つと、ミスティは気づいた事を聞いてきた。


 「もしかして、手が出せませんの?」


 「まあ、色々とルールはあるが、俺は避けるかパスをするかの二択を迫られる。


 じゃあ、次、お前らはどうする?」


 「ええと、パスを防ぐ?」


 「ルールで認められるのなら、私なら、避けられないようにルートを塞ぎますわ」


 二人とも意見を言った事で、クオウに静かに言った。


 「キャプテンを務めてるとな。


 こういうのが見えてくるんだ」


 さっき『野蛮』と言っていたクオウの苦悩なのだろうか、それが伝わって来たのはミスティだった。


 「でしたら、そう指導するのも、キャプテンの務めでございましょう…」


 「どう言う良いんだ?


 『一回でも、やってみろ』


 『一回やってみたけど、意味がなかった』


 『今まで、では、ダメだ』


 『だったら、筋肉で全てが解決する』


 そんな返しをする、脳みそ筋肉どもには、そんなの通用せんぞ?」

 

 まさか、先ほどの皮肉を返されるとは思いもしなかったが、これがクオウの苦悩でもあるのだろう。


 「まあ、当時の若いヤツ等に、そんなの事を知ってたのかは知らん。


 だが、オレはハヤタの事で、経験してわかった事があった。


 これはチャンスだ…とな」


 「なるほどね、それでアンタは…」


 「ああ、俺は、若い連中につく事を決めた」


 「ここまで来ると、もうネタでございますわね…。


 それで指導の方は、どうでしたの?」


 「恰好はつかなかった。


 『一対一から、二対一にさせるにはどうするか?』


 そんな課題の指導なんてした事もなかったし、厳しくもなった、ケガもさせた」


 よほど上手くいかなかったのが見て取れた言動に、クオウが答えた。


 「そこでやって来たのが、ハヤタだった。


 『唐揚げ』の差し入れを持ってきてな」


 「と言いますと、そこでの皆様はハヤタ様が、クオウ様の隣人だって知らなかったのでございますか?」


 「ナタルのいう通り、知らんかったな…。


 でも、事情を聞いたハヤタが、ばっさり言ったよ。


 今でも覚えてる。


 『こういう組織的な動きは、図解しないと伝わらない』ってな」


 「そういえば、ハヤタ様の住んでいた惑星には、そういうスポーツがたくさんあるとお聞きしました」


 「だから、手慣れてたのか…。


 まあ、ハヤタはノートを取り出して、色々と書き込んでいく内に、俺らが何をやりたいのか、わかりやすくしてくれた。


 そして、とうとう、あいつ等は、俺に張り倒す事しか許さなくなっていた」


 「け、結構、暴力的ですわね…。


 見てないから、言える事なのでございましょうけど…」


 「ああ、ポジション、パス、マーク…。


 俺らに、この言葉が生まれたのは、あの時からだ」


 クオウは視線を外して、若い連中を見ていると、話をしていた。


 「そういえば、唐揚げで思い出したけどさ。


 俺、焼き肉も好きなんだよな」


 「ああ、ハヤタが延長コードを引っ張ってきた」


 「そうそう、あれ、結構好きなんだよな」


 「マジで?」


 そんな会話を耳にしていると、クオウは手を頭に当てていた。


 「その焼肉というのは?」


 「ハヤタが振舞った料理だな。


 前日に迫った時、ハヤタは、それを振舞ったんだ。


 士気も上々、奴らはやる気、十分。


 そして、ハヤタは…」


 「はいはい、彼らのボス的、存在にでもなったの?」



 「…警察に捕まった」



 ……。 


 よく見ると、クオウは頭を抱えていた。


 「えっ、何て?」


 「いや…な…。


 だから、警察…に、捕まった」


 「なんで…?」


 「いや、一応、捕歴(ほれき)にはなってないから、捕歴にはな…」


 「だから、どうして捕まったのよ?」


 「俺らの住んでる所は、外で調理などをする時は、届け出が必要だったんだ」


 「まさか、それを知らず、ハヤタ様は…」


 「ああ、ナタルのお嬢ちゃんが思うとおりだ。


 試合当日、警察がやって来て、連行されてったよ」


 「もう、何やってるのよ…」


 ミミミも頭を抱えようとするが、クオウは言った。


 「それでみんなが気づいたんだ。


 ハヤタには、挨拶はするし、会話も出来るが、常識がなってないってな。


 そこで学校に通わせようと考えたんだ」


 「なるほどね、そこで今に至るってわけね…。


 それで、どうなのよ?」


 「何が?」


 「試合よ、アンタ達の試合」


 「ああ、そんな事か、それより昼飯にしよう。


 ハヤタの唐揚げは美味いぞ?」


 「まあ、そうですの?」


 「ね、ねえ、ちょっと待ちなさいって…」


 「ハヤタ様は皆さまの昼食の担当でもあるのですね?」


 「ああ、後々、独立するように資金集めも、この週末労働でしてるんだ」


 「それは、楽しみ…」


 そうやって、クオウはミミミから離れていった。


 「試合はどうなったのよー‼」


 

 

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