第六十七話
そうして、彼女達のインターン研修が続くが、やはりナタルはハヤタが戻って来ないことが気になっていたらしい。
「ハヤタ様は、どこに行ったのでしょう?」
「アイツなら、少し特別な仕事をしてもらってる」
「特別な仕事、でございますか?」
「このコンバインの運転と、他に何の仕事をしてるのよ?」
「ああ、アイツにしか出来ない特別な仕事なんでな。
これが…。
お前らの知りたい事だろうと思うぞ?」
ミミミの問いに、クオウは頷いていたがいまいち、理解してないようだったので、
「どういう事よ?」
「アイツが社長で、どうたら、こうたらって、あったんだろ?」
「ああ、あの事…。
それは、あの人の役職が悪目立ちしたから、じゃないの?」
その時、アナウンスが流れた。
しかも、ハヤタの声で。
「え~、皆さま、ただいまより、昼休憩となりました…。
昼食の時間です」
「えっ、突然、何?」
そんなアナウンスは構わず流れるので、ミミミは余計に疑問が深まるが、アナウンスは続く。
「本日は、インターンの生徒たちもいますので、作業員の皆さま、落ち着いた行動をお願いします」
他のオオカミ男たちが笑い出して言う。
「おい、ハヤタ、俺らはいつも落ち着いてるだろ?」
そんな問いかけにアナウンスが返ってくる。
「営業部も食堂を使ってるから、苦情が来てるんだよ。
特に今日は、お客さんが来てるんだから、気をつけろって話だよ」
オオカミ男たちは『ひでえっ』とは言ってはいるが、ハヤタに対して悪意は感じる事はなく。
「それで、今日は何だよ?」
と返していた。
「今日は鳥の唐揚げだな」
「おっ、それはいかんな」
それにはクオウが反応した。
「おし、お前ら、さっさと片づけるぞ?」
「カシラは、知ってるんですかい?」
「バカ、お前ら、ハヤタが『差し入れ』を持って来た事があるだろうが?」
「あ、あれですか!?
やべえ、おし、ハヤタ。
当然、出来立てなんだろうな?」
「そのつもりだよ。
だから、どの時にやって来ても、いつぞやの時のように、詰めかけるなよ?」
「わかった、わかった」
そんな一連のやり取りを見て、ミミミはいった。
「なんでアンタ達、インカム無いのに会話成立してるのよ…。
それであの人、一体、何をしてるの?」
「ん、わからんかったか?
アイツは俺らの昼食を担当してるんだ」
「そういえば、カシラ、さっき営業部も相手してるって言ってませんでした?」
「おっ、そういえば、そうだな。
これはアイツ、会社の食事事情を牛耳るのも時間の問題だな」
仲間うちでの会話になりそうになったので、ミミミは修正するように聞いた。
「もしかして、これも前の話に関係ある事なの?」
「ああ、まあ、そういえば、そうだな?
ええと、どこまで話したか?」
「確か、コンバインの担当になって、彼の立場が確立されたけど、問題が解決したワケじゃないって…。
言ってたわね…」
クオウは『おおっ』と感心して、片付けをする傍ら話を始めた。
「正確には問題があったというのは、オレらの方でな。
年寄り、俺らの年代どもにとっては、若い連中が調子に乗ってる様にしか、見えなかったワケだな。
すると、当然…。
懲らしめてやろうって、考えを持つヤツもいたんだよ」
「気に入りませんわね…」
ミスティがポツリと言って、
「聞くところによりますと、貴方がたはスポーツをたしなむと聞いております。
そんな事で嫉妬して、恥ずかしくありませんの?」
強い口調で答えてしまったので、クオウは静かに言った。
「耳が痛いな…」
そして、周囲を見回して答えた。
「文化の違いなんだろうな…」
「文化の違い?」
「ああ、これはハヤタの言い方なんだが。
…先に何をやろうとしたのかを、言わんといかんか。
毎年、一定年齢の若い衆をスラロームに参加させて、圧倒させようとしたんだ」
「……」
明らかに女性陣が引いてきたのが、わかるのでクオウは、調子を崩すことなく言う。
「擁護するつもりはないぞ。
俺らはな、ハヤタと違って、筋肉の量が違うわけだ。
そんなヤツが、肉に油が乗ってきてみろ…」
クオウは指で自分を指すのは。
「調子に乗るヤツ、尖るヤツだって出てくる」
自身も経験したという事なのだろう。
「そして、今回の件だ…。
当時の空気としては、最悪だったのを覚えてる」
すると当然、ミミミは言ってきた。
「アンタは止めなかったの?」
するとクオウは言った。
「周りには『カシラ』なんぞ呼ばれてるからな。
対応はしようとはしたさ。
だが…。
思わぬ来訪者がやって来てな」
クオウの表情に笑みが浮かぶので、ミスティが察して目を輝かせて言った。
「もしかして、ハヤタ様が⁉」
するとクオウは、顔を曇らせて答えた。
「いや、悪い。それは違う」




