第六十四話
そして、ハヤタの職場見学の日がやってきた。
「…あ~、本日は、良く来て…。
ええい、お越しくださいました…」
クオウがナタル、ミミミ、ミスティにベリルの四人に、会社見学の際の挨拶をする。
ちなみにこの女性陣に、リッカがいないのは、週末の労働に勤しんでいるからだった。
慣れてないのは、
「今まで、現場の見学は男しかやってなくてな。
作法とかは、勘弁してくれ…くだ…さい」
言葉使いを気にするあまり、自分の話し方がたどたどしくなる事にいらいらしだすクオウに、ミスティが聞いてきた
「今まで男性しか、採用する事がなかったですの?」
「いや、今までは事務関係は女は募集していたがな。
現場の作業員を雇うにはだな。
さすがに無理があってな」
クオウは見掛け通りの説明より、行動に移す。
「これ、持ってみろよ?」
畑を耕すために使われる『クワ』を、ミミミに軽くよこす。
「お、重いわね…」
そのクワは、クオウの態度以上に重かったらしく。
ミミミがぐらつき、女性陣が支えに入るのをみて、クオウは頷いた。
「オレらが普段使ってる道具だが、まあ、この通り、力仕事中心だからな。
今までは、女性は特別な理由がない限り、雇い入れる事はなかったんだ」
「特別な理由でございますか?」
「身体を鍛えたいとか、アスリート関係者だな」
「では、何故、クオウ様達は、女性の現場関係の仕事の募集は、今回から、始めたのでございますか?」
「それはだな…。
ま、登場してもらうか…」
クオウは片手を挙げて合図すると、
「な、なに…?」
けたたましい爆音と共にコンバインに乗った集団が、彼女たちに向かってきた。
本来なら、ミミミのように警戒するのが、普通の対応なのだが、
「あっ、ハヤタ様です」
先に気づいたのはナタルがVRを『ニコニコ』としていたので、そこまでの緊張はなかった。
「何やってんのよ、アンタ?」
「働いてるっていう、証拠を見せないといけないから、派手な登場くらいしろって言われてな」
ハヤタを先頭に、オオカミ男の達の駆るコンバインチームがナタル達に軽く会釈をしたのをみて、クオウは話した。
「紹介しよう。
ウルフィ・オ・ファームの誇る。
珍走族」
「珍走族いうな‼」
「これらに乗ってもらって、女性陣には作業を行ってもらおうというワケだ」
そう言って、ハヤタの乗るコンバインに女性陣、全員が乗ったのを確認して、ハヤタは現場に向かうのであった。
その際に、ミミミが通信機を手渡されていたので、ハヤタに話しかけてきた。
「ていうか、アンタ、前の職業はリッカと同じトコロなのね?」
「まあな、あそこでは実際、役に立たなかったから、良い話ではないけどな」
「でも、ここでもそうなんじゃないの?
あのクワ、アンタでも持てないでしょう?」
「だから、コレに乗ってんだろう?」
「それ、答えになってないわよ?」
「どうしてだよ?」
「だって、私でもこういう乗り物がある事くらい、知ってるわよ。
という事は、クオウでも、他の人でもコレが使えるというワケじゃないの?」
「あ、なるほど…」
ハヤタは一瞬、気を使って、少しの間を生んでしまった。
「ぷっ!! 」
しかし、それがこの吹き出しを、よく聞こえさせてしまった。
「誰だ、今、笑ったヤツは?」
だから通信機越しに、別車両にいるクオウの威圧たっぷりな声を届けてしまっていた。
「クオウさん、話して良いかな?」
「別に構わないがな…」
クオウの嫌そうなのが会話越しにもわかるが、こう話し始める。
「ついでだ、ハヤタ、お前がこの会社に来てからの事を、話した方が良いんじゃないのか?」




