第六話
軽く褐色の肌をした、豊かな身体に、パープル色のロング部屋に似合った顔立ちに、そして、身にまとうは白衣。
その姿に保健室の女医をイメージしてしまうが、
「誰?」
ミラ達が思うように、この学校の女医では無いのは、ハヤタの方が知っていた。
「あ、ヒルデ先生」
そう呼ばれた彼女が、ミラに軽く答えた。
「悪いわね。
この子、何かした?」
「あら、貴女は?」
「私、劣等種保護医療部門のドクターの、
ヒルデ・ストライカよ。
このハヤタ君の入院中、担当させてもらったモノよ。
この子が、失礼な事をしたようね?」
「そ、そうよ、私の親友を利用して、格上げしようと企んでいるのよ?
だから、私は注意しようとして…」
「親友?
もしかして、ナタルちゃんの事?」
ミラが頷くので、ヒルデは頷いた。
「あのね、ナタルちゃんとハヤタ君は入院中、同室だったのよ。
知り合いになるのも無理も無いでしょう?」
『でも』とさらに言葉を発しようとするが、ヒルデは先手とばかりに言った。
「この子は格上げなんて企むほど、狡猾じゃないって、担当してる私が断言してあげるわよ?」
その『睨み』に近い見つめ方は、
「……」
ミラや取り巻き達を、退散させるしかなかった。
そして、ヒルデはハヤタに向き直って、肩を崩した。
「ハヤタ君、どうもキミは、トラブルに巻き込まれる節があるみたいね?」
「返す言葉もない…」
「別に構わないわよ。
キミの性格は、入院中、よく知ってるつもりだし、乗って?」
そう言って、促されるまま彼女の自家用車に乗り込んだ。
「しかし、驚いたわね~。
まさか、ナタルちゃんと、同じ学校に転校するなんて…」
地球にはないエンジン音を聞いていると、ヒルデは機嫌良く話しかけて来た。
「知らなかったのか?」
「知るわけもないでしょ?
さっきのミラって娘がいたでしょ?
その家に引き取られて、そこでステータス取得のために、学校に行くことになって、私が手配したけど、私はそこまでしかしなかったわよ。
キミだって、どうして学校に転校できたのよ?」
「そのステータス取得ってのかな。
『学校くらい卒業しておけ』って言ってくれる人がいてさ。
オレのアパートに住んでる隣りの人が、学費を出してくれる事になったんだよ」
「ふうん、随分と気前の良い人ね?」
そういう会話をしていると、ハヤタの住むアパートが見えた。
「ここがキミの住むアパートね。
うん、まともじゃない?」
一見、地球でも見られるようなアパートがハヤタの住処である。
どうして見慣れたアパートがここにあるのか、説明は難しいが何処に住むのかを決めるのは、その惑星の文化レベルを吟味した上で、住む場所を当てられるらしい。
「住むには十分な広さだし、問題ないけどな?」
「それで私を呼びつけたのは、どういう事なの?」
「色々と、前後してるのもあるんだけどな。
実はナノマシンに関してなんだ…」
すると、ハヤタに声を掛ける姿があった。
「おう、ハヤタ、帰って来たのか?」
本日、よく話に上がった、隣人のクオウだった。
文字通りのオオカミ男に、驚くのはヒルデだった。
「クオウ!!」
彼女が完全に身構えるので、ハヤタも驚いてしまう。