第五十七話
「ミミミ様、ナタル様は、どの教科を選択なさったのでしょうか?」
「生物学よ」
「まあ、随分と難しい授業を選考してますわね?」
「私も、そう思って聞いたけど、どこぞの誰かさんの影響じゃないかしら?」
ミスティは何かを察していたので、ミミミは続ける。
「いろんな人の起源を知りたくなった。
って、言ってたわ。
まあ、まさか『その人が』転校してくるなんて思いもしなかったでしょうけど」
「そうですわね」
笑い合いながら、ハヤタがそんな評価をされるのが、ミミミツは気に入らないで。
「ミスティさん…。
が、学業というのは、それだけの成績が良いだけでは務まりません。
その教科だけを徹底してるのは、苦手科目から目を背けてるのに、変わりないのですからね」
悪態交じりに言う。
すると教壇に立つアポニーは、この会話を聞いたように言った。
「そういえば、ハヤタ君、キミ、明日の放課後、数学の補修があるからね」
「おい、アポニー、そういう事を、こんなトコで言うなよ!!
恥ずかしいだろうが?」
さらに笑い声が教室を包んだので、アポニーは言った。
「別に構わない事じゃないか。
この補習だって、キミが望んだ事だっていうし。
そういう事では、授業に追いつこうと頑張っているのだから良い事だと思うよ?」
「そりゃ、そうなんだけど…」
「そうそう、次章で、取り調べ室で事情聴取されるくらい、構わないことだよ?」
「うん、何か、不吉な事が聞こえたな?」
不安になっている、ハヤタを尻目に、アポニーは聞いてきた。
「そもそも、この学校の数学のテスト、拝見させてもらったけど、そんなに難しいかな?」
その疑問が示すように、周囲はハヤタに視線が集まるが、その視線に答えるようにハヤタは答えた。
「うん、わからないというより。
ややこしいというのが、一番問題だな」
「どういう事かな?」
「うーん、例えないとわかりづらいから、簡単な問題を出すな?」
そう言って、ハヤタは問題を考えているのか、少し黙って、アポニーに言った。
「ここに二十四人の子供がいる。
今から、二人一組でボールを遊ぶとする。
それだと、そのボールは何個必要ですか?」
アポニーは、
「うーん」
問題文を吟味した上で答えた。
「ええと、割り算とかで良いのかな?」
「別に引っ掛ける問題を仕掛けてるワケじゃないし。
どんな解き方をするのかが、単純に問題なんだ」
「じゃあ、24を2で割る。
よってボールは、12個必要…」
ハヤタは黙る。
「……」
「12個、だよね…?」
アポニーは不安に聞いてきたのも無理もなく、ハヤタは静かに答えた。
「正解」
「なんで、少し溜めたかな?」
まだ、周囲に笑い声があったが、
「じゃあ、俺はどう解いているのか?
というと…」
ハヤタは指で、二人づつ、まとめて指して言った。
「10、11、12と、よって12個のボールが必要というのが俺の答え方なんだ」
この行為に、先に感づいたアポニーの呟きに。
「数式すら挙げてないね?」
『どういう事か?』という空気になったが、あまりの原始的な答えの出し方がハヤタの現状なのを理解した頃には、周囲は笑いが消えてたので、ハヤタは呆れもある調子で言う。
「おーい、ドン引くなー。
俺も割り算くらい、出来るからなー。
でも極端な話、そんな原始的な解き方をしてるのが現状なんだよ。
顧問にも『そんな古い計算式を使って問題を解くな』ってな。
だから、答えは合ってるけど数式がなってないんだから、○(キュッ)をではなくて、△(ション)なんだ」
「なるほど、だからキミは、補習を受けるワケなんだね」
うんうんと、頷くアポニーにハヤタは納得しながら言う。
「納得してくれましたか、アポニー先生?」
「まあ、それ抜きでも数学の成績は悪いと、解析できるけどね?」
「それを言うなよ?」
再度、笑いに囲まれ、妹もミスティも笑いあうような状況に、ミミミツはさらに気に食わないでいると、
そこで彼の携帯が鳴った。
「し、失礼…」
そう言って、ミミミツは対応に追われていたが…。
「はい、よろしくお願いしたしますぅ…」
何やらを企んでいたがゆえに、ハヤタに不敵な笑みを浮かべているのであった。




