第五十六話
「今の声は、ハヤタ様ですわ?」
ミミミは兄の不快の理由を知った上で、呆れ気味に答えた。
「そうね、私たちの学園の選択科目の『歴史文化』が、この学園での今や人気授業になっているのよ」
「ハヤタ、相変わらず」
ミスティとベリルは頷きあうのを、面白くなく見ていたミミミツは言った。
「ミスティさん、騒がしいだけの授業ですよ。
このように騒がしく、隣の教室からクレームがあったりもして。
それでとうとう実験などに使われる特別教室を、使う羽目になったのですよ?」
そういう会話をしながら、教室のドアを開けるとハヤタは、話している途中だった。
「…まあ、だからって、言うことはわからんでもないんだよな。
さっき嫌がったのも『野蛮だ』じゃなくて、『はしたない』って意味合いで言ってると思うんだよ?」
「まあ、大体、見る限り、そんな印象はあるよね?」
「俺の惑星でもあったけど、海外の…」
ここでハヤタはミミミ達に気付いて、会話を止めると仕草で『構うな』とわかったので続けた。
「海外の…。
まあ、例えば他の惑星の人が、同じ事を言って来たのを例えるが、どんな生き物にも微生物が付着してるってのを聞いた事があるだろう?」
「うん、そうだね…」
ミスティとベリルがハヤタが教員に対してらしくない話すのが気になったらしいので、ミミミに聞くと、小声で答えた。
「あの女性教員はアポニーと言って、警察関係者で彼と面識があるのよ」
「け、警察関係者でございますか?」
「じ、事件の匂い、香ばしい」
「詳しい話は後で話すわ。
本来の教員が産休で、休みなのよ。
それで私たちの学園は、様々な方面から教員を応募する方針なのよ。
そこでやって来たのは、彼女というワケなのよ」
そう説明していると、ハヤタは話は続いていた。
「…というわけで、普通やるとヤバい事なる。
今でこそ、ナノマシンで腹痛程度で済むらしいが、最悪の場合は…」
「どうなるんだい?」
「死んだりする」
この回答に優良種、劣等種の面々は動揺したのがわかったので、ハヤタは頷いて続けた。
「だから、さっきの言った、アンタらの馬鹿にされ方も当たり前なんだよ。
当然、パンチ、お前が言ったような事も、俺にこんな変換が施して言ってるようなもんなんだ。
『下手すりゃ、死ぬぞ。
お前、何やってんだ』ってな。
まあ、さぞ、チキンレースをやってる様に見えてるんだろう」
そういう結論の付け方に一同は頷き、アポニーはまとめる。
「ふうむ、文化、歴史とは先入観と実体験が積み上げてきたというのが、よく分かる話だね。
先ほど言ったように、歴史上の認識には、偏見も常識でもある。
そして、常識だって、偏見の原因になるという事もしっかり吟味しないと…。
こんな笑い話になる」
「笑い話かよ?」
また笑い声がしたので、ミミミツが呆れていたが…
「凄いですわ…」
ミスティもベリルも、感心して頷いて見せた。
「私たちの学校でも、合同授業はありますが、ここまで一体感のある授業は見た事はありません」
「ただ騒がしいだけですよ。
実際、集中しているとは思えません。
これでは、成績が…」
「上がってるわよ?」
意外な反応だったのか黙った兄を見て、ミミミは言った。
「この前の中間テストの平均点が上がったのを受けて、この前、小テストをしたのよ。
その結果、両サイドの平均点の向上が確認出来たそうよ」
「だが、それでも、雑談が多いのは問題だ」
「それが悪い事じゃなくて、むしろ良い事なのよね」
「なっ⁉」
「考古学系の部活動を行ってる生徒が、この授業を受けているのよ。
その生徒の部活動のスピーチが、同い年とは思えないほどの柔軟性を持った知識を有しているって、学者に評価されてるのよ」
「だ、だがな…」
「当然、コバヤシ・ハヤタ。
彼に対しての批判も無しよ。
彼は文化レベルの関係で数学はからっきしだけど、この授業の歴史では高得点を維持してるのよ」
「そうなのですの⁉」
その言葉を聞いて、目を輝かせるのはミスティである。
「数学はダメだけど、せっかく学園生活をしてるのだから、覚えるだけの歴史文化なら頑張るという事で、教師陣は追試有りきで納得してるのよ」




