第五十四話
「でも、そういう適当な事を言うもんじゃないわよ?」
「この前、事故があった時に、こういう騒ぎがあったから、根拠はあるんだよ。
その救命胴衣を着る役は、俺らだったら、事態は絶対、収集しないと思うぞ?」
「随分と確信を持った言い方をするのね?
じゃあ、どうするつもりなのよ?」
こうしている間にも、まだ大騒ぎは続いているのをハヤタは見ながら、乗務員に指示を出した。
「一体、何をするつもりなのでしょう?」
ナタルも疑問に思っていたが、指示を受けた乗務員は目立つ場所にやって来て言った、
「これより、救命胴衣を装着の説明をいたします。
みなさま、こちらを注目ください」
そうは言うが、この状況で注目するのは数名程度だったので、乗務員が後からやって来た人物に視線を向ける。
「あいつ、何、やってんだ?」
それはハヤタなのにリッカは気づいた。
いつの間にか着替えおり、乗務員っぽく見えていた。
「構わないから、はじめよう」
そして、ハヤタは数名の子供を連れてきていた。
「は、はい…。
ええと、まず…」
女性の乗務員は、子供に救命胴衣を着せて、先ほどのナタルが解析したような救命胴衣の開設を始める。
当然、騒ぎは収まるわけがなく。
「一体、何が違うって言うのよ?」
ハヤタには、そんなミミミの呟きが聞こえてきたが、その前に一人の子供が聞いてきた。
「お兄ちゃん、コレでいいの?」
「ああ、あっ、ほれ、襟が曲がってるぞ?」
「うん、ありがと。
ねえ、お兄ちゃん、この船沈むの?」
子供の純粋な質問に答えたのは、他の子供だった。
「馬鹿だなあ、外を見てみろよ」
子供の容赦のない切り返しである。
だが、ハヤタは言われた様に、外の様子を映している映像を見た。
「あれは救命補助の船なんだ。
あの四機が船体を支えてて、もう船が沈むことはないんだよ」
おそらくこの子は、どこにでもいる『詳しい知識』を有した子供なのだろう。
「…それで、今、ライトが点滅してるトコロに今、向かってるんだ」
ハヤタは感心しながら聞いた。
「詳しいな、確か、海面ドックってヤツだよな?」
「そうだよ。
あそこに一旦、収容されるんだ。
というかさ、兄ちゃん、乗務員なのに知らないの?」
「乗務員じゃないからな。
連れてくるように言われただけだよ」
事態が収拾してないので、乗務員が思わずハヤタを見たが、ハヤタは実に…。
「まあ、それを聞いて安心したな~。
勉強になったし~。
沈まないってのが、確かなんだからな~」
白々しく言った。
「そうだよ。
心配する方が、おかしいんだよ」
そして、次の瞬間、この子供たちの純粋な会話が、
「でも、じゃあ、何で、こんなに大騒ぎしてるの?」
「わかんないよ。
救命艇の数だって十分なのにさ。
兄ちゃん、なんかわかる?」
周囲の大人たちを凍り付かせたのを見て、ハヤタは静かに言った。
「いや~、わからないな~」
…ドックに着くまでの間、恐ろしく静かになったのは言うまでもない。
「…ねえ、アンタ、計算してたの?」
「いや、体験談だな」
「体験談、でございますか?」
「事故があって、動揺して顔を真っ青にしてる時に、子供がやって来て。
『お兄ちゃん、大丈夫?』
心配された事があってな。
その子には悪いとは思うけど、ああいう、純粋無垢な態度が一番、キツイんだよ」
「じゃあ、つまりアンタは、その子の前で恥を晒したくないから、じっと耐えたってワケ?」
「まあ、正確には耐えられたってのが正解だな。
誰だって、そうだろ?
子供の前では、しっかりしないといけないのは、結構、共通な認識だと思うぞ?」
この妙な認識はどこにでもあるらしく、みんな納得していた。
すると、先ほどの女性乗務員がお礼を言いに来たのだが、
「礼などいりませんよ。
私たちは学生として、責務を果たしただけです」
ミミミツが調子を取り戻して、乗務員に対応していたので、リッカはミミミに呆れながら聞いた。
「まあ、これで、次の船が来るのを待つだけだな?」
「そうね、これでようやく帰れるワケなんだけど…」
「どうしたんだよ?」
「ちょっと思ったんだけど、一日の間で二度も宇宙船が事故を起こすって、確率的にないと思うのよ?」
「まさか、その原因って…」
そんな疑問を浮かべるモンだから、ある人物に自然と女性陣の視線が集まって行くのも無理もない。
「おいおい、ちょっと待て待て…」
さすがにハヤタは反論しようとするが、その前に女性陣が後ずさりしていく。
ちなみ三度目はありませんでした。




