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新たな大地に花束を  作者: 高速左フック
第五章 ハヤタ、誰が笑えますかい?
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第五十三話

 そして、この詰め寄っている乗客が、さらに攻勢を増す『その時』は、やって来た。


 それは、この救命胴衣を配っていた、客室乗務員が悪いのか?


 「ふ、ふふ、ハ、ハヤタ、キミだって、ビビッてるではないか?」


 「声も裏返って、今まで『お前』呼ばわりなのが『キミ』扱いしてくる。


 お前に言われたくねえ」


 ミミミツに茶化され、


 「ただな…」


 ハヤタが苛立った拍子に言ってしまった。



 「こういうのを渡されたら、やっぱり事故なんだって、実感しただけだ」



 この言葉が船内に、妙に響いからか?


 「こんなモノを渡すという事は、危ないという事だな!?」


 船内がさらに騒がしくなる。


 「ちょっと、アンタが余計な事を言うから、大変な事になったじゃない!?」


 「お、オレの所為か!?」


 「ほら、あの乗務員、こっちを見てるわよ?」


 女性乗務員の『よけいな事をして』という視線から逃げるように、ハヤタは渡された救命胴衣をマジマジと見ていると、ナタルはVRで解析していた。


 「ハヤタ様、これは水の濃度に反応して、膨らむ仕組みのようです」


 「水の濃度?」


 「水に反応すると言いましても、コップ一杯の水が掛かったくらいでは、膨らまないという事です」


 ハヤタも文章なり、絵面なりに救命胴衣の仕組みを理解した上で答えた。


 「なるほど、膨らむって事自体はオレが知ってる救命胴衣と、たいして変わらないんだな」


 「そうなのでございますか?」


 「オレも知ってる範囲だけどさ、緊急時には、この胴衣のどこかにあるヒモを引っ張って、膨らむってヤツだったよ。


 あと笛も付いてるんだっけか?」


 「笛でございますか?」


 「ああ、海面に投げ出された場合、声より高い音が発した方が良いからな」


 「音だって?


 何で、緊急時に、そんな体力を消耗する方法をとるんだ?


 救命胴衣に備わってる、生体反応を探ってもらえるまで体力を消耗を抑えてないといけねえだろ?」


 それを聞いたリッカは、何故か救命胴衣を反対側に着ていた。


 「そんな技術自体がねえんだよ。


 てか、リッカ、一応、緊急時なんだから着るんなら、ちゃんと着とけよ」


 「アンタらと違って、私はガタイが倍以上デカいからな。


 こういう胴衣が膨らんでも、身体のデカい私にとっては致命的な事があるんだよ。


 私の場合は、ちゃんとしてコレなんだよ」


 「反対に着る事で、どう違いがあるのでございますの?」


 救命胴衣に身を通し終えたミスティは、リッカの反対に着た救命胴衣を見ながら聞いてきた。


 「こういう救命胴衣ってのは、普通に膨らんだ場合、アタシみたいに体がでっかい場合、サイズが違いすぎて危ない事もあるんだよ」


 するとベリルが、試しに自分が前に着た場合を、軽くデモンストレーションしてみせたので、ハヤタたちを納得させた。


 「なるほど、こうやって捕まる事で、生存率を上げる。


 私には出来ない、リッカ、悪くない、ふざけてない。


 ん?」


 ベリルは少し離れたトコロで、何かに気づいた。


 「どうした、ベリル?」


 「子供、こっち、見てる」


 「ホントだ」


 「こうして騒いでいるからでしょう。


 気をつけなさいよ」


 ミミミに制されていると、その前に先ほどの乗務員がやって来ていた。


 「あのお客様、大変申し訳ありませんが…」


 「はい、何ですか?」


 「救命胴衣の着用の際の見本をやっていただけないでしょうか?」


 いまいち状況がつかめない事を言って来たので、思わず聞き直そうとするが、


 「あの、今、この状況を収めるために、何とか協力いただけないでしょうか?」


 どうやらハヤタのあの一言は、相当の騒ぎの原因となったらしく。


 「うおっ‼」


 船内が揺れ、さらに一同を騒がせた。


 「な、なんだ、この揺れは⁉」


 「やっぱり、大変な事になってるんじゃないのか‼」


 さすがに乗務員も異常を感じたのか、連絡をすぐさまとる、


 「えっ、ええ⁉」


 そして驚きを隠せないでいるので、聞かずにいれなかった。


 「何があったんだ?」


 「このシャトルの別棟でも、こんな騒ぎが起きていたらしく、そこにいた人たちが緊急艇を動かしたそうなんです」


 「はあ!?


 これこそ乗務員の指示に、従わないといけない事だろ!?」


 「そ、そうなんですけど、そんなモノを勝手に起動するのですから。


 誤って作動した救命艇は普通に海面に落ちて、その際に船体に当たって揺れたそうです」


 こうなって来ると、先ほどの事をやらないと事態の収集もつかないと感じたのだろうか、この乗務員の視線が痛く。


 「で、ですから、お願いできませんか?」


 しかし、ハヤタはこう答えた。


 「そんな事をやらなくても、大丈夫だと思うぞ?」


 そして、この女性乗務員の表情が曇る。


 「ねえ、アンタたち、打ち合わせでもしてるの?」


 コレにはミミミは呆れて見せた。



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