第五十二話
「あのよ、ミミミツよ」
「ななな、なんだ。
ハヤタ?」
「お前も人の事、言えないじゃないか?」
「そ、そんな事は、な、ないぞ?」
ミミミツが明らかな動揺を見せるのが、ハヤタは仕返しとばかりに嫌味を言う気にはなれないのは、周囲が動揺して騒がしいからだった。
「どうなってるんだ!?」
「こんな事になるなんて、聞いてないぞ!?」
「お客様、みなさま、落ち着いてください…」
ミミミツのように落ち着きをなくした乗客が、客室乗務員に詰め寄っているのだから。
こうなると、
「おかしいのは…」
自然と目が向かうのは女性陣であるのだが、
「今、船が海に浮かんでる状態、らしい」
「宇宙船が、ただの船になりやがった」
リッカが豪快に笑い飛ばしているのを、ミミミは呆れていた。
「どこが面白いのよ?」
だが、女子同士の独特な明るい雰囲気で談笑していたので。
「おかしいの…俺でもないよな」
と認識しながら、こんな騒ぎの中、別々でいるのも何なので、ミミミツを半ば引っ張りながら向かうことにした。
「あっ、ハヤタ様」
先に気づいたのはナタルだが、ミスティが詰め寄った。
「ハヤタ様、落ち着いてくださいね‼
こういう時は、落ち着くのが一番なんです‼」
ハヤタの肩を揺さぶらんとばかりと、迫りよって来るがベリルが制した。
「ミスティ、落ち着いて、ハヤタ、落ち着いてる」
そう言われて、ようやく気が付いた。
「そういえば、そうですわね?」
それを聞いた女性陣は、改めて気が付いたのかミミミは言った
「随分と落ち着いてるのね?」
「まあ、大丈夫っぽいからな。
お前の兄さんは、駄目っぽいけど?」
「そ、そんな、こ、事ないぞ!?
ハ、ハヤタ君は、お、お、おかしな事を!!
言うなぁ?」
「急に『君』付けすんな!!
お前のこの状況が、逆に怖ええよ!!
なんでお前は、こんなに困惑してんだよ!?」
おそらくミミミツの状態が、この状況を生み出しているのがわかってはいるので、ハヤタはこれ以上の責めをする事はなかったので、ミミミツが説明を始めた。
「ふ、普通に飛んでないだろう」
「おいおい、そんなの俺が、前にあったのと大して変わらないぞ?」
「そ、そそそ、そうではない。
お前の場合は、宇宙船が宇宙を浮いた時点で、事故が起きたから大した事はない。
だが、今回の、ば、場合にはだな。
宇宙船が、宇宙にじゃなくて、海面に浮いてるのだ。
これは、落ち着いてだな…いられん」
「何度も『宇宙』言い続けて、ワケわからん事を言ってるぞ?」
ハヤタは余計に理解しがたかったが、ミミミツが話し始めた。
「だ、大体だ、な。
事故が起きたというのは、大して変わらないだろう。
どうして、お前は落ち着いてるのだ?」
「宇宙空間で漂流する方が、怖いと思うからだ。
空気のある場所で、しかも、動力も失ってない。
それにミミミツよ、窓の外を見てみろ?」
ハヤタはそう言って、ミミミツを促すと説明をする。
「救助艇なんだろうな。
まあ、小型の船の数隻が、この船を取り囲んで先導し始めているだろ?
前に馬鹿にされたけど、安全面が段違いってのは、こういう事なんだろうな」
「そうよ、兄さん、騒いでるのは、一部の人たちでしょう。
兄さんも、その中に入りたいの?」
妹に諭されたのが効いたのか、
「そ、そそ、そうだな…」
冷静さを取り戻そうとした時、アナウンスが流れた。
『現在、当機のトラブルの対処として、安定を促すため、救助艇のとのドッキング作業を行い。
付近のステーションに向かう予定です。
少々の揺れも発生しますので、ご了承ください』
その作業中だったのか、アナウンスの終わった途端だった。
「おっ」
ドッキングの影響か、船体が揺れた。
それは、ほんの軽い揺れだった。
それが…。
「ホントに、大丈夫か!!」
先ほどから騒いでいる乗客がさらにヒートアップさせていた。
そして、責められている乗務員は、マニュアル通りに対応したのだろう。
「落ち着いてください、念のため、救命胴衣の着用をお願いします」
その一言が、さらに彼らを油を注ぎ、周囲を騒がせ。
「救命胴衣か…」
「今度は、アンタが青ざめてるわよ?」
ハヤタが青ざめていた。




