第五話
「どんな手段で滅んだのかというのが、大体、二級、三級の違いだよ」
そう言って、リッカが周囲を眺めながら言うので、おそらくこの周りは同じ階級の劣等種がなのがわかった。
「低い文明レベルだろうと、惑星が滅ぶ理由なんて、どこの惑星でもあるわけだ」
「確か火山の力を利用して、滅んだとか聞いた事があったな?」
「あれはアンタのおとなりだ。
まあ、人の手で惑星が滅ぶか、自然の力で世界が滅ぶのか、そのラインが大体、区別して言ってんだよ」
「じゃあ、人の手で滅んだ事が…」
「その二級ってワケだ」
「じゃあ、一級はどういう事なんだ?」
「外の惑星の存在を認識しているか、いないかだ。
その認識があるかないかってヤツは、戦争にしても、それを止めようとする度合いも違って来るだろ?」
「なるほどな…」
「随分と簡単に納得するんだな?」
「入院中、ナタルと色々、もめたからな。
でも、それが何でオレが、格上げするチャンスなんだ?」
「お前が、ナタルと結婚すれば二級劣等種から、一級劣等種に格上げ出来るってワケだよ」
「けっ、結婚!?
そんなの、まだ、考えてねえよ」
リッカの発言に、戸惑ってしまうがパンチは間に入るように答えた。
「いやさ、あそこまでお近づきになれたんだからさ。
ある意味、絶好のチャンスだよな」
『結婚』に対する価値観の考え方も違うのも、惑星の違いなのであるというのは、ハヤタもようやく納得出来て来た。
だが一旦、間を置いて言った。
「いや、やめておく…」
その発言が、逆にリッカを驚かせた。
「はっ?」
「実際、ああいう目に合うとな…」
ハヤタは入院時を思い出して、それを飲み込むように飲み物を飲んだ。
それを見た、リッカはトレイを片しながら答えた。
「へっ、相変わらず変なヤツだな」
ハヤタとリッカのやりとりに独特の雰囲気を察した、パンチは、
「何か、妙な雰囲気だな。
リッカ、お前ら、二人はどういう関係なんだよ?」
卑しい笑顔で聞いて来たが、リッカは呆れて答えた。
「ああ、コイツ、ウチの上司の『喧嘩仲間』なんだよ」
リッカの『知ってるだろ?』は、パンチは心当たりがあるのだろう。
「あのクオウか!?」
パンチの驚きに、リッカは笑いを堪えていた。
「うわあ、ハヤタ、お気の毒…」
そんな事を言われると、ハヤタはさすがに気になってパンチに聞いた。
「その、クオウさんって、そんなに有名なのか?」
「あのオオカミ男だろ、毛むくじゃらで見かけ通り危ねえヤツだったろ?」
「そうか?
オレには、そう見えないけどな…」
確かにハヤタの隣人はオオカミ男だった。
これは比喩では無い。
文字通り、顔も狼、身体も狼、口数は少ないのは性格なのだろうが、
「さすがに言い過ぎじゃね?」
「そう思えるのは、お前だけだ」
と、リッカに制されていると、パンチは引きながら言った。
「オレ、今日、お前ん家に行こうと思ったけど、やめとくわ…」
「ちょっと、それ、失礼じゃないか?」
こんな笑顔の中、学校生活、初日は幕を閉じた。
そのため、さっさと帰る事にしたのだが…。
そうはいかなかった。
「そこ貴方、待ちなさい」
聞き慣れない声に振り返ると、やはり見慣れない女生徒が立っていたので、
「ええと、何だ?」
辛うじて分かるのは、
「私はミエ・ミカ・ミラ、貴方、お名前は?」
明らかな性格のキツさだった。
女性ではあるが、引き連れた取り巻きに囲まれ始めると、さすがに気が引けていると、ミエ・ミカ・ミラと名乗る、女性は聞き返していた。
「いくら劣等種でも、名前くらいあるでしょう?」
「あ、コバヤシ・ハヤタです」
戸惑いながら、名乗るが彼女は半ば苛つきながら聞いて来た。
「ハヤタ、貴方、ナタルとどんな関係なのかしら?」
ここでようやく聞き慣れた名前があったので、ハヤタは軽く平静を取り戻す。
「ああ、ナタルと知り合いなのか?」
ようやく彼女を見る事が出来た。
身長はナタルと同じくらい。
そして、その顔立ちはナタルと負けないほどの綺麗な顔付きをしていたのだが…。
「劣等種の分際で、よく気安く、その名前を言えたモノね」
先ほどの予想通りの、キツい言葉が返ってきた。
だが、ハヤタにしても癪に障ったので、苛立ちながら強めに答えた。
「一応、許可はもらってる」
「許可?
劣等種が誰の許可をもらえたのかしら?」
「ナタル本人だよ。
後で確認すれば?」
周囲もハヤタをさげずむ視線を送るので、イライラするが、ミラは構うこと無く言った。
「貴方が、何を企んでいるのなんて、見え透いてるの。
良いかしら、今後、どんな目的であろうと、ナタルに近づくのはやめなさい」
先のリッカの話があった手前、ハヤタは『格上げ』という言葉が思い浮かんだが、その時、一台の車が止まった。
「そこで何をやってるのかしら?」