第四十九話
「おいおい、どうなってるんだ!?」
ここは宇宙船の機内、様々なざわめきが沸き上がる中、とうとうこんな怒号が飛び始めた。
「ですから、落ち着いてください。
当機は…」
「だから、それは何度となく聞いた。
今、どういう状況なのかと、聞いてるんだ!!」
『そうだ、そうだ』と、他の歓声に後押しされ、係員を困らせているのが、なんだか悲惨だったが、ハヤタはため息をついていた。
「なんで、こうなるんだ?」
事の発端は生徒会の活動での、ミスティのいるトァール学院の惑星圏に行くところまでさかのぼる。
……。
「ええと、後はゲートを潜れば…」
手続きを終え、指定されたゲートを向かい宇宙船に乗り込もうとしていた。
今回の違いは、一人であるという事。
理由はこちらの用事で、30分ほど遅れるという事を、ナタル達に連絡をして、一人でミスティのいる惑星に行く事となった。
惑星間を移動する手段を、30分毎にやってくるのは別におかしい事ではない。
地球とは単純に技術レベルが違いすぎるだけの話。
ハヤタにしても、そんな『おかしさ』など、もう気にもならなくなっており。
ナタルとの生徒会の活動、クオウとの付き合いで何度か、様々な惑星に行き来すると、感覚がマヒしてくるのだろう、ホントに。
「慣れって、すごいな…」
まったくである。
「本日は、当機をご利用くださり、まことにありがとうございます」
ちょうどハヤタが席に着こうとしたあたりで、女性のアナウンスが流れた。
真新しさもないハヤタは、周囲を眺めていると家族ずれの団体が、にこやかに談笑もしている。
「それでは、まもなく出発をします。
安全のため、重力が安定するまでの間、席を立たないでください」
自然と外を眺める。
感覚のない重力変化を味わいながら、昼から夜へ星空へ。
『キャッ、キャッ』と子供もテンションを上げるが、ハヤタはテンションを上がるほどではなくなっていた。
ハヤタが気になる事と言えば、
「おっ」
その宇宙船の翼部分に、拳ほどの隕石が当たったくらいだった。
しかし、次の瞬間。
ウィーン、ウィーン。
不気味な警報と共に、こんなアナウンスが流れた。
「ただいま右翼部分に、鉱石の接触が確認されました。
担当の職員がチェックにいたしますので、当機はエンジンを切り。
慣性で航行いたします。
なお、照明を非常灯に切り替えますので、安全のため席をお立ちになる際は、お近くの乗務員に訪ねください」
最後に『ご迷惑をおかけいたします』という、ハヤタは、
「ふー」
冷や汗が凄い事になっていた。
「……」
明らかに動揺しているので、言葉がない。
なので、彼の心境を文面に表してみよう。
…何、え、止まったの?
…え、慣性って、あれだよな。
…モノを投げた時の後のって、ええ、止まった。
…え、放送、止まった?
…え、それだけ?
冷や汗だらだら、動揺が凄い事になっていた。
「お客様、どうなさいましたか?」
さすがに乗務員が声を掛けてくれたので、ハヤタは取り繕うように聞いてみた。
「い、いやあ、久しぶりに船が止まるっていうのを経験したんで、ちょっと戸惑ってさ…」
「あ、そうなのですか?
どうもレアメタルが、フィールドを突き破って当たったようなので…」
「お母さーん、今、お船止まったの~?」
「そうね、まあ、暇だからお母さんと外を眺めていましょうか?」
「……」
「お、お客様?」
話の途中で子供が『キャ、キャ』と、笑い合う家族を見て、さらにハヤタは顔を青くしていた。
しかし、そんな動揺をよそに、通常通り、運航が再開されたので事なき事を得たので一安心して、
「今日、こういう事があってさ…」
合流後にそういう事を話すのだから、
「ハヤタ、大げさ…」
「へっ、ビビッてやんのっ‼」
当然、生徒会の別室にて、ハヤタは笑われていた。




