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新たな大地に花束を  作者: 高速左フック
第四章 ハヤタの眉間が寄る時
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第四十八話


 「個人的に、それがキッカケとなったと思ってる。


 これから触る機械、これからの一般常識、そこでの政治、経済、税金とか。


 実際、学んでみれば、ナタルも知らなかった事もあったしな」


 ハヤタは当時を思い出す様をみて、ワトニーも頷いて見せる。


 「確かにキッカケとしてはつじつまが合いますね」


 ワトニーとは対照的に、アポニーは静かに言った。


 「でも、その中でキミは、あまりにも無知すぎたのだろうね」


 「アポニーさん?」


 「仲は良くなった。


 だけど、してはいけない事もある。


 いや、ハヤタ君、キミがそれをしてしまうのは、若いからなのかな?」


 アポニーの指摘にハヤタは感心すらあったが、それは反省しなければならない指摘でもあった。


 「そうだな。


 それを思い知ったのは、事が起きてからだったな」


 「二人とも、それはどういう事でしょうか?」


 「ワトニー、忘れたのかい、ナタル君が、この後、何をしたのか?」


 アポニーは調書のある部分を示しながら、ワトニーに言った。


 「病院を脱走…」


 「よく考えてモノを言えなんて言うけど、気にならないワケがないだろう、俺達は。


 『一級劣等種は、惑星を調べる事が出来るのですよ』


 確か一級劣等種と、二級劣等種の違いを話していた頃かな。


 ナタルのそんな会話をすれば、聞いてしまったんだよ。


 言ってしまったんだ。


 『両親の事は、気にならないのか?』てな」


 周囲は、もともと静かだったが、さらに静かになった気がした。


 それはハヤタの言葉を待っていたのだろう。


 「さっき、利用されたのじゃないのか?


 なんて聞いて来たけどさ。


 あいつの立場になってみてよ。


 住んでた惑星もなくして、視力も失って、入院だ。


 俺の時も言われたけど。


 身内、家族、今まで出会った友達は亡くなったモノと考えた方が良い


 なんて言われて、納得出来るわけがない」


 「それが結果的に、悲しむ結果になってもかい?」


 「二級劣等種の俺は調べる事は出来ないからな。


 だが、自分の惑星を調べる事が出来るのなら、俺でもやる」


 聞いていたアポニーは、ため息をついて静かに見て言う。


 「それは私たちには、想像出来ない事なのだろうね」


 「だろうな。


 脱走、当時のアイツの感情はわからない。


 でも、自暴自棄にも、なったのはわかる。


 だから、アイツを責める気はない。


 訴える気もないんだよ」


 そして、ハヤタは端末から、掲示されていた調書を見直しながら言った。


 「あとは調書通りじゃないのか?」


 ハヤタがそう言うと、二人は各々、調書を見直していた。


 「なんてことだ…」


 そして、アポニーはため息をつきながら言った。


 「事件が解決してしまったじゃないか!?」


 「はあ、何、言ってるんだ!?」


 頭を抱えたアポニーは、恨めしくハヤタを見て言う。


 「おのれ、これが忍者のやり方か…。


 まさか、外堀を埋めに掛かると思ったが…。


 まさか、事件を解決させて、追及を逃れに利用するとは…」


 「お、おい…?」


 「忍者、さすが忍者、汚い…」


 どこぞかで聞いた文面を、この惑星で聞く羽目になるとは、ハヤタは思いもしなかったが、アポニーはも取り付く島もないので、ワトニーと記録係に言った。


 「もう帰って良い?」


 「あ、はい。


 出口まで送ります」


 そうして、ハヤタはワトニーに見送られる形で、帰ることとなった。


 「本日はどうも、お疲れさまでした」


 「あっ、聞き忘れてたけど、もう来なくていいのかな?」


 するとワトニーは、


 「ああ…。


 まだ、あるかも知れないから、申し訳ないけど、連絡待ちという事にしてくれないかな?」


 「ええ…」


 ハヤタは嫌そうに頭を掻くが、納得した雰囲気で話す。


 「まあ、仕方ないよな。


 特殊な事例だからな?」


 「そう思ってくれるとありがたいよ」


 そう苦笑いと共に、ハヤタと別れを告げたワトニーは踵を返すと、


 「どうだった、ハヤタ君は?」


 アポニーが物陰から現れ、聞いてきた。


 「興味深いですね」


 「だろう?」


 ハヤタは、アポニーの事を『性格に問題がある』と言っていた。


 「何なんですか、イヤホントリック!?」


 しかし、ハヤタは知らなかった。


 「私の推理小説に、新たな刺激になりますよ!!」


 彼女も、そうとう問題があった。


 「新作の良い刺激に、なったんじゃないのかな?」


 アポニーは趣味で『考古学』を学んでいるが、ワトニーは『推理小説』を書く同人作家でもあった。


 「当然です。


 こんな良い素材を、逃がすわけにはいきません!!」


 鼻息荒く、早口で話すワトニーを、ハヤタは見る事はなかったが…。


 「そういえば、ハヤタ君って、そこの病院の女医さんと同棲してるんだよね」


 「何ですか、その筆の進む内容は、よだれが出るじゃないですか!?」


 …思い出してほしい。


 あの取り調べ室には、ハヤタ、ワトニー、アポニーの他にもう一人、記録係がいる事に。


 「じゃあ、次に呼び出す理由は、コレにして…」


 「そういう関係があったって、でっち上げて…」


 その名もなき記録係は、陰でつぶやく。


 「腐ってやがる…」


 そして、次に呼び出される理由に、同情の念を禁じ得ないでいた。

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