第四十七話
「必須受講科目…。
ええと、資料によれば。
入院中に絶対、学んでおいてねっていう講義かな?」
「イメージはそういうモンだな。
他の惑星に住む上で、学んでおくべき常識を学べって話だ」
「いまいち、僕らにはイメージがわからない事だね」
「そりゃ、わからないだろうな。
でも俺らには必要な教養なんだ。
この手元にある、端末、その手の機械の使い方から始まって、政治形態、生活、福利厚生、オオカミ男にクマの医者がいるなんて事も知らない。
はっきり言って、無知なワケだからな。
入院中に学んでおけよって話だ」
するとワトニーが聞いてきた。
「でも、ナタルさんは言ってみれば、一級劣等種です。
そんな勉学は必要ないはずでは?」
「そこがキッカケなんだが…」
アポニーはハヤタの良いにくそうな態度に、どうやら何かしら気づいたらしく『ニヨニヨ』しながら聞いてきた。
「そんなにきっかけになる勉学ってあるのかい?」
それはとても嫌な笑みだった。
当然、ハヤタも痛いところを突かれていたので、言葉を濁してしまう。
「…教育」
「うむ?」
そして、聞こえないので、繰り返す羽目になる。
「だから、性教育だ。
どうすれば赤ちゃんは出来るかってヤツだよ」
「ハヤタ君、一応、ボク、警察関係者だから言わせてもらうけどさ。
セクハラ?」
「うん、自分でも思った」
「子供の作り方を知らないなんて事は、僕は、そこまでキミが無知だとは思えないよ?」
「そりゃ、俺だって、子供は鳥が運んでくるなんてほど、無知じゃないぞ?
まあ…」
そこでハヤタは目配せをして、相手を頷かせるのは、相手が一応警察関係者でもあるが、女性からこそだろう。
「やること、やれば出来る事くらいは知ってる。
だけど真面目な話。
…その教材通りに言うけどな。
異なる惑星人の間で出来る出来ないというのは、こっちは知らないからな」
それを聞いたワトニーは、なるほどと頷いて言った。
「確かに遺伝子配列による。
異星人間のこう配、と言えばいいのでしょうか?
それは子をなす事は出来ないと、聞いた事があります」
「ああ、そういう事か。
そこでナノマシンが遺伝子の調整して、問題の解決をするヤツだっけ。
つまりハヤタ君、キミはその講義を、同室にいたナタルさんと、一緒に聞いていたというのかね?」
アポニーの視線、いや、ワトニーの視線もハヤタには痛かった。
「セクハラだね?」
はたから見ればそうだろうから。
「どうしましょう、別件で…」
警察関係者はヒソヒソと好き勝手に言い始めるので、話さざるを得ない。
「だから、言うの戸惑ったんだよ。
言っておくけどな
当時、日中に、その講義は終了させないと駄目だったんだ。
調べても良い。
反対側のベッドにいた、ナタルに気をつかって、音量を1メモリで聞いていたんだぞ。
でもな、聞こえてるとは思わなかったんだよ」
ワトニー達が自然とナタルの資料を見ていたので、ハヤタはその画面の説明がてら言った。
「ヒルデが言うには、ナタルは目が見えなくなって。
感覚が鋭敏になってるってのは、聞いてたけど、それほどとは思わなかったんだ。
ナタルにもセクハラ注意されて、めちゃくちゃ恥ずかしかったんだからな。
そこでヒルデに、イヤホンを頼んだワケなんだよ」
「あっ、そこでイヤホンが出てくるワケですね」
「うん、これ以上、音量を下げる事は出来なかったからな」




