第四十一話
「毎回、苦労を掛けるね?」
「いえ、まあ、仕方ないと思うよ。
それがアンタらの仕事だろ?」
ハヤタは大して、気にはしてない様子を見せるが、今回の事情聴取、記録係のはいつもの警察官だったが、正面で聴取をしている担当とは違っていたので、少し緊張をしていると、
「仕方ないといっても、キミは納得していないようだけど?」
ワトニーという中性的な雰囲気の女性警官が、勘違いして笑顔で聞いてきた。
しかし、嘲笑的な笑みじゃないのはハヤタには見て取れたので、悪態なく言った。
「いや、自分の惑星にも、ええと『未成年を深夜に連れまわしてはいけない』って言う、似たような法律はあったから、こういう聴取には納得はしてるんだよ?」
「まあ、この事例は変わってるのもあるからね。
調書によると、体細胞、血液検査も、ナタルさんとほぼ同じ年齢の判定が下っている。
だけど君は、母星の滅亡した結果。
二級劣等種になった。
その際、一級劣等種と違い、年齢を消滅したんだよね?」
「他の惑星の存在を認識していたか、どうか?
これが、それが二級劣等種と一級劣等種の違いだって、入院中、よく教育されたから覚えてる」
ハヤタはワトニー断りを入れて、スマホを操作して、身分証明する画面を表示する。
名前の横に年齢を表示するのであろう項目に、()に線が引かれていた。
17歳だったのを思うと、さっき言った事は嘘だと思い知らされてしまう。
「正直、慣れてないけど…。
だか年齢が、無くなったから、俺がナタルを連れまわし、その『未成年を深夜に連れまわしてはいけない』が成立してるとは思いもしなかったよ」
それに頷いて、ワトニーは端末を操作して、現れた画面を手でなぞり。
調書をもとに、当時を語る。
「当時、ナタルさんは錯乱状態にあった、病院を脱走。
視力を失った事もあり、自動運転の車椅子の操作を誤り、病院の外にて転倒して動けないでいるのを、協力を申し出た同室のハヤタ君が、彼女を発見した。
本来は助け、戻ってくる。
と思われたが、君は脱走をほう助した。
間違ってはないね?」
「うん、間違ってない」
「どうして?」
「うん…」
実際、この事情聴取は初めてではなかった。
このワトニーの問いは、何回目になるであろう問いだった。
ハヤタは少し思い出すように言った。
「しばらく時間がたつから、思うようになったけど、あの姿が、自分にも言えた事だからなんだろうな」
ワトニーの画面を触る手が止まった。
「どういう事かな?」
「そりゃ、ナタルと俺は違うよ。
一級、二級の以前にな?
目も見えてるよ。
生きた世界も価値も違うと思うんだよ。
でも、その当時、抵抗してるアイツに言った事がな。
俺にも言えた事なんだよ」
「何を言ったんだい?」
「『どうしようもないだろ』とか、
『わかんないけど、やらないといけないだと』とかも言ったっけな。
見てられないからそんな事言ってたけど、考えてみれば、俺にも言えた事でさ。
自分の姿と被ってたんだ」
「それが連れ回した理由?」
「そうなんだろうな」
「それが連れ回して良い理由になると思う?」
ハヤタはワトニーの言い方が、警察らしさを感じたのでうなづいた。
「そんなナタルの姿を見て、イライラしたんだ。
現実を教えるつもりで、連れ回したんだ。
当時は、ああするしかないと思ったんだ」
ワトニーは静かにいった。
「ここに来て、新しい証言だね」
「連れ回した、事実は変わんないだろ。
こういう証言を、書き換えてどうするんだ?」




