第三十八話
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という事ではあったが、ハヤタの日常は、戻ってくることはなかった。
「なんだかな、ミミミ、騒がしいんだ」
「アンタのせいでしょうに?」
ミミミの呆れは言うまでもなくハヤタに向けてである。
登校時から騒ぎになって、一通り、落ち着きを取り戻したのは昼休憩になっていた。
「あと先生たちの呼び出しくらいか?」
「いい加減、生徒会役員らしい事を言ってほしいわね。
それはないわよ」
「マジで?」
ミミミは頷く。
「今回の一件…。
制御装置を使って、呼び出すの。
あれ、この学校でも結構あったそうなのよ」
ハヤタは『やっぱり』と思ったが、それは態度には出さない事にした。
「その手の連絡が、生徒会側にも先生側にも入ったのよ。
それも想像以上にね」
「…それで先生達は、どう対処するって?」
「一応の連絡だけど、あくまで穏便に、波風を立たせないようにしてほしいそうよ」
「それって、内輪で処理して、なかった事にするって事かよ?」
「苛立たないで、学校側だって、あれほど大々的に公開されたんだから、内輪に対処するなんて不可能よ。
それに連絡をした人たちは、みんな、アンタに感謝してるそうよ」
ナタル、パンチ、リッカ達も食堂で合流して、席に着くとミミミは言った。
「あの時のアンタの姿が、自分がやった事と被ったそうよ。
『反省してる。申し訳なかったとね』
在校生やらOBまで連絡が入って、まだ対応に追われているほどなのよ」
「だから、穏便に済ませたいと?」
「当然、何とも思ってない人もいるわけだし。
逆に穏便に済まさなければ、生徒たちにも影響を及ぼすだろうというのが学校側の判断よ」
「だから『これからのみなさんの判断に委ねる』という事か」
ハヤタはどこかで聞いたことのあるフレーズを耳にしていたが、これが大体の妥協点なのだろう。
「まあ、ミスティが俺にも、ベリルにも、謝ったってだけで良いか…」
そう言って、事をしめようとするが…。
「それよ…。
それが一番の問題じゃない?」
ミミミはそれを許さなかった。
ミシッ!!
ハヤタのいる席は壁際であり、その壁が何やら変な音がしたが、それがハヤタの心境とマッチしていたのだろう。
「もう、そんなに話題になってるんだな?」
「途中から来たから、私も聞いただけだけど…」
ミミミはナタルに視線を送ると、
「ハヤタ様は格上げなさらないのですか?」
ナタルは今回のこの騒動の原因を聞いてきた。
「まさか、ミスティがそういう話をしてくるとは思わなかったんだよ」
ミシッ!!
またもや壁から音がした。
話は、さらに時はさかのぼる事になるのだが…。
登校時、ハヤタは、ミスティと顔を合わせていた。
まあ、理由は簡単な話だった。
「申し訳ありませんでしたわ…」
ミスティは謝って来ただけの話だった。
当然、ハヤタはその謝罪を受け、ベリルにもしろという話で事は終わるのかと思ったのだが…。
ミスティは緊張をした様子で聞いてきた。
「そ、そこで貴方さえよければ、格上げに興味はありません?」
そう言って来た彼女に、ハヤタは断りを入れたのだった。
「普通、こんなうまい話を断るか?」
同級生のパンチに後で聞いたが『一般的』にはその通りなのだろう。
「…おい、あの話聞いたか?」
「ああ、聞いた聞いた」
何やら、周囲が騒がしい。
「確かに二級劣等種から、優良種になるってのはナタルと同じ立ち位置になるって事だろうがな。
それって、結婚しなければいけないって事だろ?」
「そうね、あなたは彼女のプロポーズを断ったって事よ?」
はっきりと結論を言うので、ハヤタは噴き出してしまう。
「プ、プロポーズって、お前な!?
いや、その通りだろうけど、
そんな先の話…」
ハヤタは学生身分に合わない会話に、慌ててミミミを制しようとするが、ミミミの反応は意外だった。
「あら、あなた、卒業して独身でいるつもりなの?」
凄くあっさりと言うので、ハヤタは思わず。
「え、お前、結婚するの?」
と、聞き返してしまう。
「相手は?」
「そんなのいないわよ。
でも、成人したら相談所なり行って、探すわよ」
「そうか、コレがか…」
「どうしたのよ?」
入院中にみっちりと教え込まれた事を思い出す。
「惑星が違えば考え方も違うんだったな…」
ハヤタは地球の換算で18歳である、でも、同じ感覚換算の18歳のミミミの考え方が違うのは、惑星が違ってくると色濃く出るというのは、入院中で学んだ事だった。
軽く頭が痛くなってきたが、ミミミにはわからない事だろう。
そして、周囲にもわからない事なのだから、
「…どうりで視線を集めるわけだ」
ハヤタは周囲の視線が何やら眩しい。
「まあ、優良種からのお誘いよりも、自分の意思を貫いた劣等種ってな。
どんな物語だよ?」
リッカの返答に周囲はうなづいていると、
ミシッ…。
またもや、壁から音がする。
ハヤタにとっては、その壁は壁にしか見えないのだろうが、この壁、一種のマジックミラーになっており。
食度内にて、優良種、一級劣等種と二級、三級劣等種の敷居となっていた。
そうハヤタの反対側には、
「でもよ、意見は変える気はないぞ?」
そんな反対意見に納得のいかない。
ミシッ
どれだけ気取ってるのだと思われている、優良種たちが張り付いていた。
そんな中、ハヤタはこうも言うので、
「そういう状態で結婚なんて、絶対しない方が良いと思うぞ?」
余計にマジックミラーを軋ませた。
ミシミシ。
「…?」
当然、ミスティもそこにいたが、ハヤタは気づいていなかった。




