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新たな大地に花束を  作者: 高速左フック
第三章 ハヤタ、ソラを行く…
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第三十七話

 「…いやな、ヒルデよ。


 こういう事があるから、服くらい用意しておけって言ったんだよ」


 ハヤタの呆れが幸いにも、ミミミが状況を理解させたのに一役買ったのだろう。


 「そういえば同棲してるって、言ってたわね」


 「ああ、普段はこんな感じでカーテンで仕切られて部屋の半分を占

拠されてんだよ」


 一応の対応か、バスローブを羽織ったヒルデは、こう反論した。


 「何、言ってるの。


 人間、普段のまま、それをさらけ出して同棲でしょう?


 同棲も出来ないカップルは、比較的、上手くいかないモンなのよ?」


 はっきり言って、屁理屈にしか聞こえないハヤタは『カップルじゃねえし…』と始まって、反論した。


 「あのな、それ全然、理由になってない。


 そんな下着姿で、一日中いるおかげで。


 玄関先の対応、届け物、それ全部、オレ、全て、オレ。


 そんで、その届け物のほとんどはアンタのモンだろ?


 付き合ってたら、別れてる案件だろ?」


 「そうかしら?


 私の下着なんだから、眼福でしょ。


 ほら…」


 そして、ヒルデは下着を見せ、この堂々巡りにハヤタはミミミに意見を求める。


 「なによ?」


 「ミミミよ。


 優良種って、どこか認識おかしいと思うんだけど、俺がおかしいのか?」


 「ちょっと、私も、その中に入ってるの?」


 「いやな、ミスティの件だってそうなんだ。


 いくら競技用の服装といえ、水泳じゃないんだから、あそこまでくっきりとしたボディラインの出るような。


 全身タイツ…。


 いや、ユニフォームも、どうかと思うんだ」


 「それはアンタが性的な目で見なければ、いいだけでしょう?」


 「まあ、実際、試合中はそれどころじゃなかったから、そうなんだけどな。


 でもな、さっきの疑問だけど、残念ながら、お前の予測は外れると思うんだ」


 ハヤタは、自室のある一室を見つめる。


 「なに、その気持ちが悪い言い方?」


 「今、ナタルがシャワーを浴びてるわけだ」


 「そうね、視力が無いからって、ハプニングとか期待してるの?」


 ミミミの指摘に、ハヤタは首を振っていった。


 「お前な、ナタルがどうして、オレより、退院が早かったのか知らないのか?」


 「それは貴方より、惑星の常識があったからでしょう?」


 「確かに常識は大事だけど。


 健康なオレより、視力を失ったナタルは、かなりのハンデがあると思うぞ?」


 「そういえば、そうね」


 「そういう事もあるから、心配になって、それもヒルデに聞いたんだけどな。


 あの子は空間認識能力ってのか、それが良いらしくてな。


 例えば今、浴室にいるとして。


 ここにシャンプーがあるとか、ボディソープとかあるってのを教えておいて、ナタル自身も機械越しに観るだけで、正確に等しい距離感をつかんでしまうらしいんだ」


 「そういえば、ナタルが家にいる時、リモコン操作をする時に、その機械を落としたりするトコロなんて、見た事がないわね」


 「さらに常識ってのがあるから、オレより、早く退院する事になったんだが…。


 それを踏まえて、見たまえミミミ君…」


 そんなミミミは促されるまま、浴室に目を送ると、ちょうどナタルが出てくるトコロだった。


 「ハヤタ様、いいお湯でした」


 何も纏わない全裸で…。


 湯上がり独特の良い火照り具合に、ハヤタは静かに答えた。


 「優良種って、どこか認識おかしいと思うんだ」


 「ごめん、これに関しては私も謝るわ。


 て、いうか、何、見てんのよ!!」


 ……。


 「ナタルちゃん、コレ、着てなさい」


 ナタルの衣類の全ては、洗濯機の中に全部、放り込んだという事なので、ヒルデは自分の持っている、バスローブを手にして、シャワールームに一緒に入って行くのを見て、ミミミは言った。


 「アンタ、じっと見てたわね?」


 「そりゃ、男の子ですからな。


 銀髪なんだって、実感したよ」


 「…最低」


 「何だよ、言っておくがな。


 ナタルとは何もないからな。


 それで言わせてもらうと、ヒルデとの同棲に関しては、正直、助かってはいるんだぞ?」


 「そりゃ、そうでしょうね。


 あんな美人と一緒に生活できるのですもの」


 「色々、誤解ある言い方だな。


 でも、機械の操作とかだ。


 今でも戸惑うことがある」


 「そういえば、そんな事を言っていたわね。


 別に普通の事でしょう?」


 「俺には、その『普通』が出来ないんだ」


 ハヤタはそういうと同時か、洗濯機独特の音がした。


 「ここにある洗濯機ってな。


 最低限の生活が出来るようにと、政府や機関のモンなの知ってるか?


 それが劣等種のオレにとっては、オーバーテクノロジーなんだ」


 ハヤタにしても、洗濯機くらいは使った事がある。


 色落ち、繊維モノの区別、様々な用途を吟味しなけれならない程度は、頭にあったのだが…。


 「同棲当時さ、ヒルデがそんなのお構いなく、全部、放り込んでびっくりした事があったりしたんだぞ?」


 「別におかしい事じゃないでしょう?」


 「この辺りが『違い』なんだ。


 少なくとも、オレの惑星の洗濯機は、洗濯物を、しわもとって、きれいに整頓されて出されない。


 まあ、そういう些細な質問とか、真面目な話、ホントに助かってるんだよ」


 『そういうものかしら?』とミミミは合点がいかない様子だったので、ハヤタも質問してみた。


 「ところでそんなお前は、勢いよくドアを叩いてたけど、何しに来たんだよ?」


 しかし、ハヤタのこの質問は、ミミミの癪に障った。


 「白々しい…」


 それだけ言って、言葉を濁すよう言った。


 「既成事実よ…」


 「既成事実?」


 「…仮にも二人の男女が一つ屋根の下で寝泊まりしてるのだから、そういう事だって、起こりえるでしょう。


 出来るか、出来ないかも、ナノマシンで制御できるワケであって、ナタルは望んでる事くらいわかるでしょ?」


 あまりに曖昧なミミミの会話内容に、


 「出来る、出来ない?」


 ハヤタは少し理解に戸惑うが、察するまで、


 「馬っ鹿か、お前!!」


 ハヤタは幼くなかった。


 「馬鹿って、言わないでよ。


 私だって、男がどれくらい、性欲を持て余しているのか知らないと思ってるの?」


 「それは昨日、オレがどんな状態か、わかってて言ってるのか?


 確かに男はオオカミですよ、気を付けて何の問題はない。


 だけど、あんな状態で性欲沸いたら、そんな変態だとお思いですか?」


 「どうかしら、年頃になったら、キバをむくというのは、そういう事でしょう?」


 「お前ら、優良種はどこまで必死なんだよ?」


 ハヤタの態度に『何もない』というのがわかったのか、ミミミはそれ以上、何も言ってこなかった。


 見ると時計もいい時間であり、今日が学校であることを思い出した。


 「やべ、オレも着替えないとな」


 「ナタルも一旦、帰ってから登校するから、今日は遅れるって、兄さんに言っておいて」


 そういう会話の中、ハヤタは衣類を脱いで、パンツ一丁になると、


 「……」


 まあ、ミミミがいるので…。


 「なぁに、見てんのよ!!」


 それにはさすがにハヤタは怒って見せた。



 「何でよ!!」



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